十八 強制イベントだったみてーだぜ
「なんでこのわたくしが、庶民なんかと一緒に放課後を過ごさないといけませんのよ!」
「それはこっちのセリフですよ、ローザリヤさん」
「様をつけなさい、様を!」
「本当だったら今頃はベリンダ様とデートだったのに……本当にお邪魔虫ですね」
「誰が虫ですの!」
「邪魔な方はいいんですか?」
アリソンとローザリヤがグチグチと小言を言い合いながら歩く後ろで、取り巻きのエレンがオロオロ困ったように冷や汗をかいていた。
そしてそんなかわいそうな取り巻きの、そのさらに後ろについていくかたちで歩いているのが、頭にインコを乗っけたベリンダである。
彼女は頭の上に意識を向けると、小さな声でインコにささやきかけた。
「悪いな。せっかくヤンスが教えてくれたのに、結局、魔法演武披露会とやらに行くことになっちまった」
「これはもう、仕方ないっす。ゲームでも強制イベントだったっすし、避けられないものとして諦めるしかないっすね。むしろ姉御が一緒に行こうと提案したことで、アリソンとローザリヤ、ふたりがすぐ近くにいることになったっすから、むしろ何か起こった時に、対処しやすくなったと思うっす」
「へっへっへ。そうだろ。さすがオレだぜ」
絶対にそこまで深く考えてなかっただろうに、ベリンダは偉そうに胸を張った。
「魔法演武披露会のイベントに参加すると決めた以上、ウチらから何らかのアクションを起こさないと、十中八九ゲームと同じ展開になると思うっす」
「放っておいたらやべーってことか」
「そうっす。アリソンが攻略対象と仲良くなって、ローザリヤが闇落ちする。それだけは避けないとダメっす。イベントの大まかなところは、授業中に教えたとおりっすから、うまいことイベントが起きる前に邪魔に入れればいいんすけど……」
「邪魔に入るねえ。まあ、考えてることがねーわけじゃーねーんだけどな……」
「? そうなんすか?」
と、ふたりがやりとりしていると、不意に前方から「ベリンダ!」と呼ぶ声がした。
見れば、ローザリヤが振り返って、こちらをキッと鋭い目つきで睨んでいる。
「あんだよ」
「貴女、いつまでわたくしのインコを頭に載せてるつもりですの? そろそろ返して頂戴!」
「ああ、悪い」
よく考えたら、インコはローザリヤのペットである。
いつまでもベリンダが連れているわけにはいかない。
と、そこでふとベリンダは気になり、頭上のインコに尋ねた。
「なあ、ヤンス」
「なんすか?」
「お前って、ローザリヤから『インコ』って呼ばれてんのか? 名前とかないわけ?」
「そーいや無いっすね」
「ええ……いいのかよそれで?」
「ポケモンのサトシも相棒のピカチュウのこと『ピカチュウ』って呼んでるっすし、別にいいんじゃないっすか?」
「そーいや、アレも名前とかつけてねーか」
と、ふたりが話していると、痺れを切らしたローザリヤが、再度「ベリンダ!」と叫んだ。
「へいへい。ほれインコちゃん、飼い主のところへお戻りよ」
「キュイキュイッ、クルゥゥゥァァアアアアアッ!」
インコは奇声を上げながら、ローザリヤの方へと飛んでいった。
しばらく人語で喋っていたせいで、インコの鳴き声を忘れかけているのかもしれない。
肩の定位置にインコをとまらせたローザリヤは、前方を向くと「見えてきたわね」と呟いた。
彼女たちがやって来たのは、校舎を出てしばらく歩いた先にあった。
どうやら広場のようなところであるらしい。
この世界の常識に疎いベリンダではあるが、なんとなくその雰囲気から、校庭のようなものかと認識する。
広場の奥まった位置には、ステージのようなものが組まれている。
そしてそのステージを囲むようなかたちで、同じブレザー姿の学生たちが集まってきているようだった。
「つーか今更だけどよ」
と、ベリンダが口を開くと、同行していた三人がそれぞれ顔を向けてきた。
「魔法演武披露会って、なんなんだ?」
「ホントに今更ですわね!?」
ローザリヤが呆れたようにツッコむ。
いやだって、知らないもんは知らないんだから、しょーがねーじゃん。
ヤンスからイベントの説明をされた時も、単に「魔法演武披露会」としか言われなかったし……。
「頼みますから、他所ではそんなとんちんかんなこと言うんじゃないですからね、ベリンダ。このわたくしの友人であるという自覚を持ちなさいな」
ローザリヤはコホン、と咳払いをしつつ、
「魔法演武披露会というものは……」
と、語り始めた。
どうやら説明はしてくれるらしい。
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