10-9 夜の検討会
その晩、二人は村の空き家に泊まる事になった。その家の空き部屋は2つ。スローウは自分の家では眠れないということで、シーリアと一緒に泊まる事になった。
「どーすんの」
その空き家の居間で、二人の家から回収したゴミをまじまじと見つめるアクトに、シーリアが少しの苛立ちを覚えながら言った。スローウは昼間の衝撃で疲れたのか、早々に眠りについている。
「……」
「全くわからないじゃないの」
「……」
シーリアはアクトに詰問めいた口調で尋ねるが、アクトはシーリアに意識を割く暇も無いとばかりに目線を合わせず天井をじっと見ている。
ドガン。
アクトの顔面にシーリアの拳がめりこんだ。
「聞きなさいよ」
「聞ひてふよ。|殴ふこたぁないひゃないか《殴ることはないじゃないか》」
「反応が無いからよ。で?色々調べてたけれど、結局犯人分かったの?下手に首突っ込んどいてわかりませんでしたは失礼にも程があるわよ?」
「そりゃあそうだけれど。まあ……二人じゃないとは思っているとは言える。ただそうした場合、じゃあ誰なのか、という点については全く分からなくてね」
「二人じゃないってのはどうして言えるの」
「動機が無いから。片方は村長になるのが凡そ確定している。片や村長になるのは諦めつつもそれでも出馬している。わざわざ村長を殺して選挙を台無しにする必要はないんだよ、二人とも」
「それはそう、ね」
「だから村長が殺された事には別の理由があるのかなとは思うんだ。でもカネ目当てにしては何か漁られた形跡は無いし」
「恨みでも買ってたとか?」
「今考えられるのはそれくらいなんだけど。だからこそゴーシュさんにさっき聞いたわけさ」
アクト達はセカンとの面会後、村長の家に戻ってゴーシュに改めて尋ねてみた。
「『そういう噂は全く聞いた事が無い』だったわね」
「やー困ったねえ……。恨みの線は薄いとするとやっぱり村長になりたいとかそういう話かねぇ」
「でも村長って選挙で決まるんだから、村長を殺したところでどうにもならないじゃない」
「そうなんだけどね。……ん?」
『村長は選挙で決まる』。その言葉を聞いて、ふとアクトの脳裏にある言葉が蘇った。
「世襲制ではないのですね」
アクトが尋ねる。
「そうなんですよー。人が居なければそういう場合もあるみたいですけどー、普段は投票で決めてますねー」
「……まさか?」
アクトは突然部屋の出入り口へ急ぐと、ドアノブに手をかけた。
「どこ行くのよ」
「ちょっと……調べ物。君はスローウさんと一緒に居てあげてくれ。僕だけで大丈夫だ」
そう言うとアクトはドアから外へと駆け出して行った。
「ちょっ、え」
アクトの勢いは相当なもので、シーリアに文句の一つも言う時間も与えなかった。シーリアは彼が何処に行ったのか、何を調べようとしているのか、全く分からないまま唖然とするばかりであった。
「もう……」
勝手な行動を取る彼に呆れつつも、とりあえず今自分に出来る事は無さそうだと判断すると、スローウの居る自室へと向かった。
スローウはゆっくり、静かに寝息を立てていた。
「お父さん……なんで……」
そんな寝言と共に、彼女の目から雫が溢れた。
絶対に犯人を捕まえてやる。シーリアは心の中で決意すると、自らも寝息を立てて就寝した。




