10-10 夜は明けて謎は解ける
「犯人が分かった!?」
コンコンというノックの音で目を覚ましたシーリアは、そのノックの主であるアクトの言葉に目をひん剥いた。昨日までの優柔不断な態度は何処へ行ったのか。自信満々のその態度は不思議にも思えた。
「あの後色々ありまして。確信を得るに至りました」
「かくしん、ねぇ」
「まぁその点は説明しますので。どうぞこちらへ」
そう言ってアクトが案内したのは、村長の部屋であった。そこにはスローウとゴーシュが居た。
「エースさんとセカンさんは基本的に無関係ですので。さっさと終わらせたいのでお二人だけにしました」
「え?」
言葉の意味がよく分からなかった。この二人だけで何がわかるというのか。――そう考えた時、シーリアの脳裏にキラリ閃くものがあった。
「まさかこの二人のどちらかが!?」
「えー!?違いますー!!」
スローウは相変わらず間延びした喋り口調ではあったが、どこか困惑と怒りの色が滲んでいた。
「流石にそれは無礼にも程があります」
ゴーシュに至っては全く怒りを隠してはいなかった。槍を構えて今にもアクトに向けて突き出さんとすらしている。
「……ほら、否定しなさいよ、そういう意味じゃないって」
シーリアが静かにアクトに囁いた。
「君が勝手に言い出したんだろう。まあいいや……」
言うとアクトは渋々口を開いた。
「二人だけを呼んだことにはもちろん理由がある。が、まずは話を聞いて欲しい。そうすればその辺りの理由も分かると思う」
アクトがそう言うと、ゴーシュはスローウに目配せをした。スローウが頷くと、彼は渋々槍を下ろした。
「では説明を願う、人間よ」
「はい。まずエースさんとセカンさんについて。二人には動機がありません。セカンさんはターケンさんに感謝こそすれ殺す理由は全く無いようです。エースさんは村長になるという目的はあれど、今の所の最有力候補。わざわざ村長を殺して自分が村長になる?普通であれば考えられません」
「まあそれはアタシも理解は出来たわ。でもそれだけで犯人じゃないと言えるの?」
「勿論それだけではないよ。というかここからが本題なのだけれど、それ以上に怪しい者がいるからこそ二人は違うと思ったわけさ」
「怪しい者?」
「その前に一つ。ゴーシュさん」
「なんだろうか」
「昨日の夜確認しましたが――村長が死ぬまでの間、変わった事は無かったと仰っていました。では村長の部屋を訪ねた方は、エースさんとセカンさんの他にいらっしゃいましたか?」
「ああ」
ゴーシュは事も無げに言った。
「え?」
シーリアはキョトンとした表情を浮かべた。
「そそそそ、それなんで言わなかったのよ!!」
「変わった事は無かったと言っただろう。確かに村長の部屋を訪れた方はいらっしゃったが、怪しい者はいなかった。だから別に良いと思ったのだ」
「昨夜その「変わった事は無かった」という言葉の意味に気づいたんです。つまり、「いつも通りの事は起きた」という意味だとね。で、訪れたのは誰です?」
「そこの男には昨夜も言ったが、スローウお嬢様です」
「え!?」
シーリアの視線がスローウに注がれた。
「えー、そのー、私は確かに部屋に入りましたけれどー、悪い事でしたか……?」
「スローウお嬢様は食事を運ぶために毎日三回部屋に入っている。昨日も12時頃、食事を作って部屋へ向かわれた。特段おかしな事ではあるまい?」
「それでも死者が出たという大切なタイミングではちゃんと教えて欲しかったですね。そうすれば多分昨日で片付いていた」
「どういう事?」
「つまりだね。犯人はスローウさんだという事だよ」
事も無げに言ったアクトにゴーシュはその槍を振り下ろした。
「貴様ッ!?」
だがそれはシーリアが防いだ。
「待った待った待った!!ちょっとアクト!!そういうのはちゃんと順序立てて説明しなさいよ!!」
「わ、わたーしー……が……?」
「ほらスローウさん唖然としてる!!」
アクトは頭を掻きながらやれやれという様子で口を開いた。
「あーもう。そうだね。ちょっと順序が良くなかった。ちゃんと説明するから鉾を下ろしてほしい」
「先程も聞いた台詞だな」
「説明する前に槍を振るってくるのが悪い」
アクトのふてぶてしい態度にゴーシュは苛立ちを覚えたが、それでも辛うじて怒りを抑えて槍を下ろした。
「……村長様にも、スローウ様にも、私は大変な御恩がある。そんな恩人を疑おう等、余程の事が無い限り、再びこの槍を振るう事になる。それだけは覚えておけ、人間」
「分かっていますとも」
アクトは飄々した態度を取りながらも真面目なトーンで答えた。どちらが本心かゴーシュには判断しかね、舌打ちをして腕を組んだ。




