10-5 ゴーシュの証言
「どこからお話しましょうか。まず、この亡くなられている方は、我らホスの村の長にして、こちらのスローウ様のお父上でもあります、ターケン様です。私が見た限りでは、背中から何か刺されたようで、それで吐血しているようです。……はい、まあ、今ご覧になっている通りですが、その、あまりターケン様の御遺体には触れないようにお願い致します。我々ケンタウロス族、死者の遺体は土に返すのが決まりですので、あまりその、はい。
傷の感覚的には何か鋭利な物で刺されたのは間違いありませんが、如何せんその凶器については見つかっておりません。
――警備ですか。私だけです。はい、このような事件は今までございませんで、私が警備しているのも村人の襲撃など全く考慮しておりません。他の魔物、知性のないただ暴れるだけの魔物が襲撃してくることがございますので、その対応で私が警備をやっています。とはいえ、警備はしっかりしているつもりです。本日いらしたのは2名。何れも村長候補の方です。
――え?あ、はい。そうです、村長候補。ああ、ご説明しておりませんでした。ただいまこの村では次期村長を決めるための選挙をしようとしているところでして、ポスターも貼ってあったかと思います。この村では民主制を敷いていまして、候補が出てその中から投票で決定することになっているのです。それで、いらしたのは村長候補の2名の方です。
一人目はエース様。10時頃にいらっしゃいました。今は13時ですので、3時間前ですね。黒髪で凛々しく筋骨隆々ですが、知性豊かな好青年で、恐らく次期……失礼、それは私の私見です。私は部屋の前で立っているだけなので話の内容は詳しくわかりませんが、入られたときも出られたときも堂々としておりました。特に変わった様子はございません。
二人目はセカン様。11時頃にいらっしゃいました。金髪で……その、率直に申し上げますと、少々くだけた、いや、くだけすぎた方です。いらした際もかなり無礼な……物言いで入られました。「爺に用があんだよ、通せ」でしたか。多分そんなことを言っておりました。なにか口論をされているようでしたが、最終的には慌ただしく出ていきました。大丈夫ですかと扉を開けてターケン様に問いましたが、「大丈夫だ」とのことでした。ああ、これがあの方との最後の会話になってしまいました。――え?あ、はい。勿論血などはありませんでした。ちょうど背にした本棚を漁っているところでしたので、背中に傷がないこともしっかり覚えています。
その後は特に変わったことはありませんでした。それでちょうじ13時頃でしょうか。ふと何かバタリと音がしまして。それでまた扉を開けて「大丈夫ですか」と問いましたところ、このような状況になっておりました。我らが創造主にして愛と勇気の神、イシュー様に誓って」




