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10-3 ホスの村

「私はスローウですー。村長の娘として色々やってますー」


「アクトと言います」


「シーリアよ」


「よろしくお願いしますねー」


 と、スローウはアクトが何か恐れている様子に気がついた。うんうんと唸ってスローウと距離を置いている。

「村の方が怖いですかー?怖がることはないですよー。いい人ばかりですー。昔は色々魔界や人間界とも揉めたりしたらしいですがー、今は誰も気にしてませんよー」


「そ、そうですか」


 アクトは少し安心した。


「向こうがどう思っているかはわかりませんけどねー。でも我々が生きていることー、誰も覚えてないと思うんですよねー」


「ま、まぁ」


「本かなんかでしか見たことなかったわね」


「ですよねー。だから別に今となってはわだかまりも何もないと思いますしー。村の人達も暖かく迎えてくれると思いますよー」


「あ、ははは。そうですか。安心しました」


 実際アクトの内心はほっとしていた。魔界とのわだかまりが無いという事は、土地を分けたりする事も出来るかもーー


「でもまあこの辺は我々の土地でしてー。みんな土地には厳しいのでー。もし移住目的で来てたら色々大変だったかもしれませんよーハハハー」


「ーーーーーーは、ハハハ」


 出来ないかもしれない。アクトは改めて今は考えない事に決めた。考えるだけで胃がイカれそうな気がしていた。




「ここがホスの村ですー」


「うおー……」


 シーリアが感嘆の声を上げた。村の中、畜産用と思われる牛や豚はいるが、あとは全員がケンタウロスであった。パカラッパカラッという音を立てて四足歩行の魔物と人の間の子が平然と歩き回っている。伝説上の存在と思われていたものが実在し、それがこれほどの数とは。伝説には疎いシーリアでもそれが驚嘆すべき事である事は容易に理解出来た。


 アクトにはそれに加えて変なものが目についた。美形のケンタウロスの絵がいくつも貼ってある。そこには魔物の言葉で『清き一票を』と書いてある。選挙でもやっているのだろうか。


「そうなんですよー。そろそろ任期が終わるのでー」


「世襲制ではないのですね」


 アクトが尋ねる。


「そうなんですよー。人が居なければそういう場合もあるみたいですけどー、普段は投票で決めてますねー」


 スローウは肯定した。


「で、あそこが私の家でー、村長やってる父もいますー。挨拶をーーー……?」


 スローウはそう言いながら家の方を指差したが、よくよくそれを見ると動きが止まった。アクト達にも理由は分かった。村の周りにケンタウロス達が多数たむろしている。


「何かあったのかな」


 アクトが言うと、スローウは「失礼しますー」と言って地面を蹴って駆け出した。彼女の全速力だろうか、人間視点から見て恐怖を覚える程の速度で駆けていった。


「はっや」


「流石と言えるね。……言ってる場合ではないか。行こう」


 シーリアは頷くと、歩き出したアクトの後をついて、村長の、スローウの家を目指した。

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