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7-16 封印

「待てーっ!!」


 フィナとルフトの間の森。その上空で、アクトは《レヴェル》に追いついた。


「くひひひひひひひひ!!」


 邪魔な蚊か何かを撃ち落とさんと、《レヴェル》は爪を振りかぶり、アクトに向けて振り下ろす。


 ガァン!!


 大振りなその攻撃はアクトの剣により阻まれるが、威力を完全に殺すには至らない。衝撃がアクトの腕に響く。


「ぐぐぐぐぐぐ」


 このまま攻められれば厳しい。それに、このままではーー。


 と、地面を見ると、危惧していた事態に直面しつつあった。


 フィナと魔界の軍勢が何やら揉めているのが見えた。見えてしまった、とアクトは思った。


「くひひひひはははははははははははは」


 やはり《レヴェル》はその軍勢の方へと向かう。レヴェルの元の願い、魔王を殺すという意思が残っているからこそ魔界に向けて飛び立ったのだろうと思ったのだが、その予想は合っていたらしい。



「せやから我らはあくまであんさんらの保護のためにやな」


 魔王ヴェルムが剣を向けて近づくなとするフィナの民間人警護兵達に説得を試みる。彼らは野生の魔物と遭遇したと思って臨戦態勢である。他方魔界軍の方も手を出すというならと気が立っている。ヴェルムとしてはこの双方の爆発をどうにか抑えんと焦っていた。ここで人間を敵に回すつもりはない。ここで敵に回せばあのアクトやシーリアに面目が立たないし、下手すれば敵に回すことになる。他の人間はともかく、あの二人を敵に回せばどうなるか考えたくはなかった。


「ナンダアレハ」


 と、側近の悪魔が空を指差した。


「あぁん?」


 ヴェルムは「今忙しいとこなんやで」と思いながらもそちらに目を向ける。


 そこには真っ黒で刺々しく、禍々しい翼と鎧を身に纏った化け物がいた。


「……なんや……あれは……」


 一瞬でそれが理外の怪物であることを察知し、焦りの表情を浮かべる。その禍々しさたるや、見るだけで恐怖を感じている者や魔物も多数存在していた。


「ええから急いで我らの後ろに下がりや!!」


 そう叫ぶと魔界の軍勢を民間人の前に立たせる。


 だが《レヴェル》には魔王の顔しか見えていなかった。


「ゔぇ、る、む……ひひひひひひひひひひひひははははははははははははは!!!!!!!!」


 再び奇声を上げると、ヴェルムに向けて急降下する。


 


 アクトはブットバスターを改めて『鑑定』する。何かギミックはないのか。


「……これだ!!」


 活路を見出したアクトは一歩退き、その間にエクストラクターからリリーフカードを取り出す。


「へへへへへへへへへへへひひひひひひひひひ」


 ヴェルムに向けて触手を伸ばす《レヴェル》。それを先回りしてブットバスターで切り落としながら、ブットバスターをブッパモードへと切り替えてリリーフカードをセットする。


『ドラゴン!!』『シャーク!!』


 リリーフカードが読み上げ、


『ペナルティチャージ!!』


 その後にブットバスターが音声を鳴らす。


 ブゥイン、ブゥインという音と共に魔力がブットバスターに溜まっていく。


「その力を封印する!!」


 アクトは宣言と同時にブットバスターのトリガーを引いた。


『サスペンション・ブッパナストライク!!』


 ブットバスターの銃口からドラゴンとサメの形を取った魔力の奔流がレヴェルを、インジェクターに襲いかかる。


「ひひひひひひ、ひぎ?」


 初めてそこで《レヴェル》の笑い声が止まった。


 ドラゴンとサメの魔力が《レヴェル》の上空で合体しリヴァイアサンの形を取ると、レヴェルに向けて真っ逆さまに襲いかかる。《レヴェル》は爪を伸ばして抵抗しようとするが魔力の奔流であるリヴァイアサンには全くのダメージを与える事ができない。


「シギャァァァァァァァァッ!!」


 そのままリヴァイアサンは直進し、そして口を開き、《レヴェル》の肉体を鎧ごと飲み込んだ。


 だが《レヴェル》の鎧に傷はない。


「いひ?」


 《レヴェル》が疑問の声をあげる。


 すると、鎧が水に包まれ、そしてカチカチと固まっていく。


「ブッパモードのペナルティチャージは封印の力。リリーフカードの魔力を発動して対象を封印する。特にインジェクターには良く効くみたいだ。2枚なら数ヶ月かな」


 アクトは聞こえているか分からない《レヴェル》に説明する。




《まずい》

《まずい》

《まずい》


《神器の光》

《我らの天敵》

《我らの数が足りない》


《我ら……戻る……》

《我ら…………スリンジャークの中に…………》

《ねむ…………る………………》


 《レヴェル》の中で何かが呻き声と共にそんな言葉を発し、そしてレヴェルの周りを取り巻く暗闇が徐々に晴れていく。




 同時に、レヴェルのスリンジャークの黒い液体が収まり、鎧の禍々しさ刺々しさが元に戻っていく。


「あ、え、よ、よかったーー」


 と、レヴェルは気づく。自らの体が固まっていっている事に。そして、先程のアクトの言葉の意味に。


「あああああああ!?待て、待って、そんな!?」


「その力は凄まじい。だが、どうやらコントロールもまともに出来ていないらしいね」


 図星であった。レヴェルはアクトを睨みつけた。


「当たりか」


「そんな事は無い!!もっと、もっと力があればーー」


 制御出来なかった自分に歯噛みするが、今はそれどころではない。この封印を何とかしなければならない。


「ぐ、ぐぐぐ……!!結界をーー」


 結界発生装置ーーナクールや魔界との出入り口を塞いだそれを発動することで、封印を無理矢理破ろうとした。だが、その腕まで封印が届いてしまった。指も手首も動かせない。


「うがあああああああ!!!!」


「敗因はその知性を失った事だね」


 レヴェルがインジェクターの力を更に注入(インジェクション)した時、あそこから完全に理性や知性を失っていた。


「多分君の良い所ーーというのも汚らわしいがーーはつまるところ臨機応変の対応力だ。鑑定スキルなどを使ってあれこれアイテムを持ち出すところが大変に厄介だった。だが力に感けてそれを失った事が最大の敗因だ。……おっと、まだ負けてないか」


 アクトは油断なくレヴェルにブットバスターを向けながら言った。


「煩い!!」


 アクトの一言一句がレヴェルには不快極まりなかった。説明されなくともそんな事は重々承知していた。自分が下手を打ったことを。


「ともかく、少し頭を冷やしたまえ」


 アクトがそう言った瞬間、レヴェルの口を、目を、全身を封印が包み込んだ。

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