7-13 過剰
「まあいいか。はははははははーーーっ!!」
レヴェルがガンガンと剣を振り下ろす。鎧で見えなくなっているが、シーリアには伝わってくる。彼女の顔は狂気に満ちていた。
シーリアはチラと後方を見る。兵士達は既に怪我が増えている。人間に戻った人々は後方に退避出来つつあるが取りこぼしがある。魔物に捕らえられている者達も多い。殺さないのはまた魔法をかける予定だからだろう。
「くそっ……」
何か手が無いのか。
そう思っていると、何かが煌めくのが見えた。
「おりゃあっ!!」
空から光の筋がレヴェルに向けて飛んでくる。
「う、うわお!?」
思わず飛び退くレヴェルのいた場所に光と共に何かが舞い降りる。
「アクト!!」
リヴァイアサンフォースに身を包んだアクトであった。手には何か金属の剣のようなものを持っている。
「なにそれ」
「わからないけど飛んできた。エクストラクターと連動したから多分僕の武器だ。でこいつは?」
「レヴェル。インジェクターを装備したみたい」
「エクストラクターと同じようなものを使ったのか。厄介だな」
そんな会話をしているとレヴェルが立ち上がった。
「厄介ですとも!!君達を殺す事だって出来るのだから!!」
そう言いながら剣を振りかざす。それをアクトが受け止める。
「むぐぐぐ、邪魔が増えたのは痛い……」
「今のうちに!!」
アクトの叫びに呼応してシーリアは人々の元へと向かう。
「逃がすか!!」
それを追おうとするレヴェルに、
「そうはさせない!!」
アクトがフットバスターを当てる。
ゴォンという音で鎧が凹み、更に光の刃が傷をつける。
「ぐがっ……邪魔をするな!!」
レヴェルのスキル無効化の剣が舞うが、アクトはフットバスターでそれを受け止める。
「君は……本当に厄介だね!!あの時もこの時も!!私の邪魔ばかりするじゃあないか!!君はなんでそんな、邪魔ばかりする!!」
レヴェルが歯噛みしながら怒気を込めて叫んだ。
「僕だってやりたくてやってるわけじゃない」
アクトは少し悲しげに言った。
「僕はただ平穏な生活が出来ればいいだけだったんだ。だが!!」
アクトのフットバスターを押し込む力が増していく。
「お前と来たらどうだ!!僕の村を壊滅させ!!魔物化してきて!!挙句漸く少しはマシになりそうになってきたナクールの生活も台無しにしやがる!!」
言葉の節々に怒りが込められていた。
それは紛れもない彼の本心であった。
彼は元々転生者、一度死んだ身である。驚きに満ちた冒険もしたいとは思うが、それでも一番優先するのは、不意に失われたかつての生活を取り戻す事。
冒険は多少のスパイス程度で良かったのだ。
今はどうだ。アクトは自問する。
「お前のせいで冒険が主になってるじゃないかあああああああ!!!!!!!!」
思わず声が出た。と同時にレヴェルの剣が弾かれ、後退を余儀なくされる。
「何のことかわからないぞ!?」
「わからないなら結構!!所詮はクズ、人の心、僕の心なぞわかるものか!!そのままとっととくたばってくれ!!」
「う、煩い!!人間風情が!!」
彼女には理解出来ない理由で激昂されたことで困惑する中、レヴェルは剣に魔力を込めた。
「時間稼ぎする余裕はもう無い。君にはとっとと消えてもらう!!」
「そうはいかない!!」
振りかぶるレヴェルにフットバスターを向けて、アクトはグリップ底面のボタンを押して変形させる。
『ブッパモード!!』
「なっ!?」
銃のような形状になったフットバスターを見てレヴェルは焦りの声をあげる。何が起きようとしているのか、察しがついてしまった。
「くらえそしてくたばれ!!僕の平穏な日々のために!!」
トリガーを引く。
『フットバスター!!ブッパナストライク!!』
フットバスターの音声と共に光の帯がその先端から発射され、レヴェルの体を包み込む。
「ぐうううううううううううう!?」
黒い鎧が傷ついていく。光に包まれ、白い傷が刻まれていく。
レヴェルは後退しながら歯噛みする。
「ぐぐぐぐぐぐぐ!!こうなれば……もっと、もっと力を……」
彼女はブレスレットの、スリンジャークのボタンを押す。
『過剰注入!!』
するとスリンジャークから更に黒いものが、インジェクターがレヴェルの肉体へと注入されていく。
『♪グリード!!』
『もっと』
『♪グリード!!』
『もっと』
『♪グリード!!』
『もっと』
『♪グリード!!!!!!!!』
『もっと欲しい……』
全身の鎧が更に禍々しく、刺々しく変わっていく。籠手の爪も伸び、武器のように変化していく。
「ああ、力、力、力、ちちちちちちかかかかかかかかかかか」
レヴェルの声がノイズがかっていき、狂ったように一つの言葉を繰り返していく。
肉体も全体的に引き伸ばされ、まるで強い光で伸びた影のようになっていく。
変化が止まった瞬間、スリンジャークが宣言する。
『♪ジェイルコントロールド・インジェクター!!』『支配されているのは、誰』
「ひ、ひひひ、ひひひひひはははははははははははははははは!!!!!!」
音声と同時に《レヴェル》の笑い声が轟いた。




