7-10 注入
「なぜここに!!」
シーリアの叫びにレヴェルは笑みを零しながら答える。
「私が攻め込むよう指示したからに決まっているじゃあないの。このインジェクターが来てくれたお陰で勝利が確信出来たから。いやあブレングは随分良くやってくれたわ」
レヴェルはニタニタと気味の悪い笑みを浮かべた。嫌味な笑い方だ、とシーリアは見ていて思った。
「しかしまあ!!私の神が本当にこんなところに眠っているとは!!これで確信が持てた!!魔王を倒し!!この世界も魔界も全て!!私の物に出来ると!!」
「やはり人間の世界もアンタが支配するつもりなのね」
「当然!!私のように優れた人間を蔑ろにする魔王は死ぬべきであり、そして私のように優れた人間に平伏すのが!!世界の人々の正しい有り様なのです!!」
到底正気とは思えないような事を口走りながら、手を翳した。
シーリアはそれを見て驚愕した。
「なっ……なんでアンタがそれを……!?」
シーリアの目線の先、レヴェルの腕には黒いブレスレットがあった。
濁った宝玉。ツノの生えた何かの生物ーーインジェクターのような姿ーーを象ったレリーフ。
それはまるで、黒いエクストラクターのような形状であった。だが少し違うところがある。アクトであれば理解出来たであろうが、それはまるで注射器のように細長くなっていた。
「エクストラクターが鑑定で見つかるのだから、似たようなアイテムを私が持っていても不思議ではないでしょう?」
『スリンジャーク!!』
その咆哮に呼応するかのようにインジェクター達がレヴェルのその注射器へと入り込んでいく。レヴェルはそれを押し込む。
『注入!!』
筒状の何かーー注射器から黒い影、インジェクター達がレヴェルの中へと入っていく。
『♪インブリード!!』
『交配し』
『♪モアグリード!!』
『渇望する』
『♪スチューピッド?』
『愚者たるは』
『♪レニゲイド!!』
『即ち背教者』
レヴェルの周りに黒いモヤがかかり、その中の彼女の肉体が変化していく。爪が伸び、腕や脚には刺々しい意匠が付いていく。背中からは翼が生え、そして胸元には彼女の大きな胸の谷間に入り込むようにクリスタルが装着される。そして頭。インジェクターの頭部のような、ツノとキバを宿した姿へと変貌していく。
最後に、額から六本のツノがピンと伸びたところでモヤは消え、禍々しき漆黒の鎧に身を纏ったレヴェルの姿が露わになった。
『♪キャプチャージェイルド・インジェクター!!』『注入し捕捉する、全てを』
黒いエクストラクター、即ちスリンジャークが叫び、その姿の名称を明らかにした。




