7-9 騎士
「ちょ、ちょっと!!」
シーリアは急いで駆け寄ってアクトを抱き起こす。
「何があったの!?何をしたの!?」
「と、時の流れを戻す能力。それで、無理矢理、魔物に変えられた人たちを、戻した」
シーリアにも理解は出来た。物凄い力技で何とかしたという事を。
「む、無茶しすぎよ!!」
「まぁ……でも……これで……人殺さなくてす…………すー、すー」
魔力が枯渇すると睡眠を求める。アクトは魔力を使い果たし、完全な眠りについた。
「ああもう……。でもまあ、無茶した甲斐はあった、みたいよ」
魔物の軍勢は混乱に満ちていた。人間が魔物に変わっているということは知っていても、それが元に戻るなどということがありうるとは聞いていなかったのである。そんなことは通常起きないのだから当然とは言えた。
魔物だった人々は、何が起きたのか理解出来ずキョトンとする者、魔物が近くにいて怯える者、様々な状態に置かれていた。何れも、自分が魔物だった時の記憶は失っているらしく、パニックに陥っている。
「バターディア!!ゲイアサイル!!すぐに人々の救助を!!魔物の数は減ったからアタシに任せなさい!!」
「り、了解!!」
「承知致しました!!」
シーリアの号令で2国の軍が一斉に動き出す。そのうちの一人に、アクトを仮眠室で寝かせるように依頼すると、シーリアは自らのエクストラクターを起動する。
『円卓出陣!!』
「アンタの頑張り、無駄にはしない!!」
『アーサー!!』『勇気抽出!!』
『♪雄々しき姿〜(すがたー)、勇気の鎧〜(よろいー)。今いま選別の剣が振り下ろされる〜!!』
シーリアの全身を白亜の鎧が包む。そして兜のバイザーが降りると、エクストラクターが雄叫びのような声を上げ、宣言する。
『ナイツッ!!オブ!!ラウンドテェェェェブルゥゥゥゥゥ!!!!!!デパーチャー・ワン!!』
ここに騎士が現れたことを。
「おおおおおおっ!!」
思い切ってシーリアは城壁から飛び降りる。
「う、オマエラ、ナンデ!?」
指揮を取っていたリザードマンが、指揮する対象の魔物達が突然人間に戻ったことで慌てながら言う。
「ひい!!魔物!?」
「なんでここに魔物が!?」
「いや、オレ達なんでこんなところに!?ここどこ?!」
魔物だった人々が腰を抜かしている。
「ま、マァイイ!!ニンゲンハエサ二ス『エクスカリバンカー!!』
腕を振り上げて人々をその爪で切り裂こうとしたリザードマンだったが、その脳天に輝く盾が突き立てられた。
「ホゲ」
盾から打ち出された杭が、リザードマンの体を文字通り真っ二つに引き裂く。緑色の血が吹き出す中、その血を浴び、弾きながら、白亜の鎧に身を包んだ騎士が人々の前に現れた。
「逃げなさい!!」
「そ、その声、シーリア様?」
「なんでこんなところに!?」
「というかここどこです!?」
「ここはフィナ共和国近くの平原。兵士達がいるから保護して貰いなさい」
「ウガアアアアア!!」
ゴブリンの上位種、ハイゴブリンが叫び声と共に人々に襲いかかり、持っている斧を振り下ろす。
カァン。
それに割り込んだシーリアがエクスカリバンカーでそれを受け止める。斧は粉々に砕け散る。
「ここはアタシに任せなさい!!」
『バンカーショット!!』
トリガーを引くと、音声と共に杭が飛び出し、そこから発生した光が魔物達を貫いていく。
「グゲェ」
「ホガア」
「フヴェ」
杭の光に貫かれた魔物達は次々に絶命していく。
「さあ!!」
その声で人々は慌ててフィナの城壁の方へと走っていく。
と、前を向くと魔物の間を縫うように何かが蠢いている。
「あれは……」
黒い影。前に遺跡で見たものと同じように見える。
「インジェクター?!」
「そう、その通り!!」
そう言ってシーリアの前にインジェクターを伴って現れたのは、
「レヴェル……!!」
憎むべき相手、レヴェル・ジェイルメンドであった。




