7-1 再会
「ここが魔界の入り口ね」
転送魔法を経由して魔界の入り口、大穴の縁に立ったシーリアが言った。
西の空を見ると、黒い何かがウヨウヨと蠢いている。フィナ共和国の方だ。あれはきっとナクールから解き放たれた魔物達であろうということは、彼女ですら想像が付いた。
「急がないと」
そのまま放っておくわけにはいかない。正義感と、自らの身に降りかかった災いは自らの手で取り除いてやろうという使命感が彼女の中で渦巻いていた。
と、縁から穴を覗く。
奥は暗闇に包まれ何も見えない。真の黒、黒以外の何も存在しない。
ゴクリ、とシーリアは息を呑む。普通に降りれば死にそうである。ナクールの城の上から下までが幾つ入るだろうかと考えて答えが出ないほどの高さであった。
だがここで手をこまねいていて何が出来ようか。シーリアは自分に言い聞かせる。このままここでウジウジ考えていたところで何の結果も得られない。まず行動すべきだ。何はともあれとにかく行動する、それが彼女のポリシーでもあった。
「うおおおおおお行くわよおおおおおおおっ!!」
『円卓出陣!!』
『勇気抽出!!』
エクストラクターを起動し、
『ナイツッ!!オブ!!ラウンドテェェェェブルゥゥゥゥゥ!!!!!!デパーチャー・ワン!!』
ナイツオブラウンドアーマー・デパーチャーワンを装備すると、勢い良く穴に向かって飛び出した。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいこれはこれで怖いいいいいいいいい!!」
如何に無敵とはいえ、落下することに対する精神的・原始的な恐怖というものは存在する。
そして飛び降りた後、彼女は気づいた。
「あれ、この鎧、空飛べない?」
そう、鎧は騎士を模したものであるが故に、ドラゴンフォースアーマー、アクトが身につけるそれとは異なり翼は付いていない。
「あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
飛んでから気づいてしまったということと、このまま真っ逆さまに落ちるしかないという二重の絶望に苛まれながら、シーリアは暗闇の中へと潜航していった。
やがて彼女の姿は見えなくなり、大穴は再び真黒の様相を取り戻した。
「ああああもうもうもうもう!!!どーすればいいんだぁぁぁぁぁぁあ!!」
アクトは結界の前で嘆く。
結界が張られてから数時間。向こう側から破ってくれないかなと期待しては結界の前に立ち絶望し、山の研究所に戻って少し休憩。サチとクレスのイチャイチャかコントか彼の目からは判断に困るやり取りを見せられた後、また結界の前に戻って、ということを繰り返していたが、5回程このループを実行したところで絶望の二文字が彼の頭を支配した。
「もうどうにもならないのか……」
魔界に未鑑定品は生じ辛いということは以前誰かから、否、憎むべき相手から聞いていた。それ故に現状を打開するようなアイテムが見つかる可能性は少ないように思えた。
「はぁ」
嘆いて、疲れる。アクトは結界に手を置いた。結界といっても壁のようなもの。触れても電撃が走ったりはしない。だがだからこそ諦めきれない。この壁を、人限界への出口を塞ぐ障壁を、壊すことは出来ないのか。
「……ぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ」
と、アクトは何かの音が上からするのに気付いた。
まさか?
ここは魔界の上空だぞ?
そう心の中では思っていたが、それでも気になったら見上げずにはいられない。彼はそういう性格であった。
そして見上げた先、そこでは、何か重そうな白銀の甲冑が凄まじい速度で落下していた。
「ななななななななななな!?」
驚愕のあまり顔が凍りつき、顎が外れん勢いであんぐりと開く。見覚えのカケラも無いし、そもそも大空に浮くには不自然な事極まりない物がこちら目掛けて落下したとあればそうもなるというものである。
そして、その落下する鎧がアクト目掛けて近付けば近くなるほど、それが何であるかをよく理解出来るようになった。
同時に、鎧の方からも、下の結界の近くにに何かがいるということを理解した。
「シーリア!?」「アクト!?」
その叫びが上がったのは、ほぼ同時刻であった。




