6-13 魔界へ行こう
ナクール王国から魔界までは、東に真っ直ぐ進めば到達する。
その間には大きく、フィナ共和国という平和主義の国と、そしてルフト共和国が存在する。
魔法などを使わず進軍すれば、まずフィナ共和国までは数日で到達する。
『敵の全戦力は不明だが、通信兵からの連絡では、街全体を覆い尽くすレベルの魔物達が進軍し始めたらしい』
暗い声が通信機越し、通信魔法越しに聞こえてくる。ニール皇帝の絶望感がこちらにも伝わってくる。
実際、ナクールの人口は100万人は下らない。魔物が存在するこの殺伐とした社会ではどうしても人口というのは少ないし、人の去就を把握することすら難しい。少なくとも100万人は居るであろう街の人間全員が魔物化したのだろうか。絶望的な話だと思う。普通なら。
「アイツを魔界から救えば何とかなるかもしれません」
アイツとアタシは今、多分この世界の最高戦力だろうし、一人で何千匹という魔物だろうと倒せるくらいの力を持っているはずだ。それだけの数の魔物に殺されていくはずだった人々を守る力を。そして、魔物達を元の人間に戻すことも、もしかしたら出来るかもしれない。分からないけれど。
『可能性は高い。というか、もうそれしか方法が無い。君達に全てを託す形になったこと申し訳なく思うが、我々に出来る範囲を超えているというのが実情だ。頼む。君達が最後の希望だ』
ニールの声は先程よりもまして重々しく、そして切実だった。
『転送魔法を使えば何とか間に合うはずだ。すぐに向かってくれ』
「OK、行ってきます」
「わたくし達は此処に残って遺跡の調査をするでございます」
「何かわかるかもしれませんし」
『わかった。その遺跡自体の危険は少し減っただろうし、護衛の兵士を送る。だが、フィナと協議した上でではあるが、防衛のための人員も必要になるだろう。少数であることは理解してくれ』
「勿論でございます。大丈夫、神が、クレア様が見守っていてくださいますでございます!!」
どうだか。この状況下であのナクールが放置されている以上、神が居たとして、介入出来る余地は少ないように思える。
「んじゃ、まぁ、一応気をつけて」
「シーリア様こそお気をつけくださいでございます。信心が足りないのでございますから」
「ああそーですね」
「どうか、どうかあのレヴェルの奴の野望を止めてください。もうウンザリです」
「それは勿論!!」
アーチェとアンペールにそう応えると、アタシは開いた穴から壁を蹴って飛び出し、転送広場へと向かった。
「……やっぱりあの人化け物では?」
「そんな気はするでございます。あれもまたクレア神の思し召しでございます」
「クレア神ってすごいんですねぇ……」
そんな会話が聞こえた気がするが、無視した。クレア教の信徒が増えるだけなら別にアタシにゃ得も損も無いし。
ただこのままレヴェルの奴のやりたい放題にさせるのは、アタシにとって明確に損だし、そもそもやっている事万事全て一切が許せない。何としても、絶対に、止める。そういう決意がアタシの中で渦巻いていた。
それと。
……アイツの顔が浮かんだり消えたりもしていた。




