6-12 魔物が行く
ガタッ。
「ん?」
何か変な音がした。そちらの方を見ると、
「何ィ!?」
先程のブレングだったものの腕。砕けていなかった方の腕が蠢いていた。
「さっき消し飛んだはずなのに!!」
と、先程最期の時にブレングがしていたことを思い出す。
腕組みしていたのは片方の腕を吹き飛ばすため?
「腕がなんか開けてますでございますよ!?」
床の石板を壊している。
「させるか!!」
『アーサー!!』『バンカーストライク!!』
腕に向けてエクスカリバンカーを撃ち込む。
ブシュッ、という音と共に今度こそ腕は吹き飛んだ。が、床板は既に壊され穴が開いていた。
と、そこから黒い何かが吹き出した。
「まさか……!!」
アタシは咄嗟にエクスカリバンカーを翳して防御体制を取る。
「アタシの後ろに!!」
アーチェとアンペールはそれに従い後ろについた。
トリガーを一度長く引いて防御モードを発動、アーチェとアンペールを守る。
黒い何かは吹き出した後、遺跡の天井から外まで届く巨大な人の形を取った。
インジェクターだ。
先程ブレングを襲ったそれよりも遥かに巨大なそれが、遺跡をぶち抜いてアタシの眼前に立っている。
「ひいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!これが、遺跡の悪魔!?」
「さっきのはこれを解き放つために居たのでございますか!?」
「或いは封印とやらが緩んでてさっきのだけ外に出ていたとか?」
何れにせよこんなもんそのまんまにしとくわけには行かない。
「とっとと倒すわよ!!」
アタシがエクスカリバンカーを翳すと、その黒い影は反応した。ビクンと恐怖するような動きを見せると、巨大な一つの影が幾つもの影に分割された。
「は!?」
そしてその複数の影が空を飛び何処かへと飛んでいった。何とか一体でも仕留めたいが、どうやらこのエクスカリバンカー、近接攻撃オンリーらしい。遠距離で何とかすることは難しそうであった。
で、影が何処かへ飛んでいった、というのは不正確だろう。実際は全て東に向かった。
東。
「まさか……」
ブーブーブー。
アタシの思考を邪魔するように何かの音が鳴り響いた。
「何の音でございます!?」
アタシの懐の通信機ーーニール皇帝とのホットダイアルである。
「アタシだ。ちょっと待って」
アタシは鎧を解除すると、懐から通信機を取り出して通信を受けた。
「もしもし」
『シーリアか!?どうなった!?何が起きた!?通信兵から連絡があった。いくつもの黒い影が!!結界の方に向かっているそうだ!!その黒い影は西から出てきたと言う。そっちで何かが起きたのか!?』
慌てた口調でニールが捲し立てた。仕方ない。意味がわからないだろうから。……アタシもわかっていない部分があるけれど。
アタシはとりあえず説明をした。エクストラクターは見つけた、アタシが適合した、遺跡からインジェクターという化け物が出てきた、黒い影はそのインジェクターである、という話を。
『……何と言うことだ。レヴェルはこれを狙っていたのか?』
「アレが何を考えているか、詳しくは分からないです。でも悪魔、インジェクターを狙っていたことから、あの巨大な影が出てくることが計画通りという可能性はあります」
アンペールが言う。
下手すると完全に向こうのペースってこと?
なんか腹立たしくなってくる。
「でもこっちはエクストラクターも手に入れた。とっととあのインジェクターだっけ?ぶっ飛ばして、結界もぶち壊しましょ」
『うむ。魔界との入り口を何とかすれば、戦力は一気に増える。君達は魔界に……待て、なんだって?』
横から通信兵が割り込んできたようで、そちらに耳を傾けている。
『は!?』
嫌な声が聞こえた。ニールは重苦しい口調で口を開いた。見えないけど多分開いてる。
『……結界が解かれ、そこから一気に魔物達が東に進攻を開始している』
聞きたくない言葉が通信機の向こうから聞こえてきた。




