6-9 円卓出陣《ラウンド・リリーフ》、デパーチャー・ワン
少し歩くと広場に出た。奥に祭壇のようなものがある。そして祭壇には何かが祀られている。
「あれかしら」
アタシが近づくと、その祀られている物がはっきりと分かった。古ぼけているが、見覚えがある。
「これだ!!」
間違いなくエクストラクター、アイツがつけていたブレスレットのようなものだった。
これを求めてはるばるやってきたのだ。アタシは喜び勇んでそれを手に取った。
「オーットそれヲ離セ」
手に取った瞬間、背後、入ってきた通路の方から響いてきた。
振り返るとそこには巨大な悪魔、角の生えた緑の肌の魔界の住人が、アーチェの頭を掴んで立っていた。
「ぐえー!!死ぬ!!潰されるであります!!」
「殺シハシナイゾ、今ハ」
「ひ、ひぃ。ぶ、ブレング……様」
アンペールにブレングと呼ばれたその緑の悪魔は、アンペールの方を見てニヤリと笑みを浮かべた。
「ヨクヤッタゾあんぺーる。道ニ迷ッテ困ッテ居タガ、オ前ノオカゲデ道ガ分カッタゾ」
アタシはアンペールの方を睨みつけた。騙してたってことかしら。
「ち、違いますよ!?僕じゃないです!!僕は捨てられたんです!!」
「ソウダナ。俺ハ後ヲツケテイタダケダ。マァ安心シロ。コノ後殺シテヤル」
そう言ってブレングとやらはアンペールの頭もむんずと掴んだ。この悪魔、騙す気は全く無いらしい。もう少し取り繕えばいいのに。殺意とかそういうものが垂れ流しになっている。
「離しなさい」
「ナラそれヲ寄越セ」
それ、というのは間違いなくエクストラクターだろう。
嫌よ、と突っぱねたいところなのだけれど、人質が取られている状況でそんな強気な事を言う気にはなれない。
「仕方ないわね。でも先に開放なさい」
「ダメダ、ソッチガ先ダ」
まぁ、どうしても順序的にはそうなるか。
アタシは已む無くエクストラクターを投げる。
フゥン、という音と共に小型の金属が宙を舞い、
ピタッ、という音と共にアタシとブレングのちょうど中間地点の空中で止まった。
「あ?」
そして次の瞬間、ものすごい勢いでアタシの方へとUターンし、ガチャリという音と共にアタシの腕に引っ付いた。
「え、なにこれ、ちょっと」
「オイオイオイオイ約束ガ違ウゾ!?」
「いやいやいやいやアタシだって約束は守るつもりが満点だったのに突然こいつがーー」
と、今度はエクストラクターが光り出した。
「眩シッ」
ブレングが怯み、腕の力が抜けたのか、二人が拘束から抜け出す。今度は捕まらないようにこちらへ逃げてくる。
が、アタシはその事に気を揉む余裕は無かった。何が起きているのか、それを理解しようとして、出来なくて。混乱のドツボにハマっていた。
「な、何がどうなってるの……?」
思わずつぶやいたアタシの手の中に、騎士の絵を描いたカードが現れた。アイツが持っていた物に似ている。何かを差し込む穴はないけれど。
……アタシが選ばれたってことなの?魔物でもなんでもないのに?……化け物だからとか巫山戯たこと抜かすつもりじゃあないでしょうね?この金属。
「さ、挿せってか?」
一瞬躊躇したが、ブレングがこっちを向いたのでもうヤケだ。やれることをやるしかない。
アタシは手元に現れた変なカードのボタンを押した。
『ナイツ!!』
そしてそれをブレスレットへと装填した。
『円卓出陣!!』
ブレスレットが開くと、騎士の姿をしたレリーフが現れた。
えーと、この後は……これ?この宝石かしら?
アタシはプレスレットの宝石を押した。
『アーサー!!』
レリーフの周りの12の穴のうち、中央の1つに光が灯った。
すると音楽が流れ出した。何か重々しい、重厚……というやつだろうか?そんな感じの音楽である。
そして、アタシの後ろに何かの気配がした。振り向くとなんか巨大な騎士が立っていた。魔力か何かだろうか、実体は無さそうである。
この後は……これ?
アタシはブレスレットに付いていた変な棒を引っ張った。すると、宝石部分がスライドして、カードを隠した。
『勇気抽出!!』
カードが完全に隠れたところでブレスレットが叫ぶ。
『♪雄々しき姿〜(すがたー)、勇気の鎧〜(よろいー)。今選別の剣が振り下ろされる〜!!』
変な歌とコーラスが流れ、そして後ろの騎士が剣を持ち上げた。
「え」
次に、その巨大な騎士が、
「あ、ちょっと、その」
剣をアタシに向けて振り下ろした。
「あああああああああああああっっっっっ!!!!!」
いや無敵でもそんなもんビックリするわよ!!
とか思っていると剣はアタシの真ん中を真っ直ぐに切り下ろした。
えええええええええ!?アタシの体に剣が通ってる!?
でも痛くはない!?
何が起きてる!?
とか思っていると、剣の周りから光がアタシを包み込んだ。そして、騎士の体が千切れ……というと語弊があるか、騎士の鎧が飛び散った。そして、アタシはなんか白い服に身を包み込まれると、その白い服に飛び散った騎士の鎧がガチャンガチャンとくっついていく。
やがて、アタシの全身を白亜の鎧が包むと、アタシの体を貫いている剣の切先が開き、胸の周りをガードする。
足元の盾の裏に何か杭のようなものがくっついて、アタシの手元へと飛んできた。アタシはそれをキャッチする。
アタシの目元へと兜のバイザーが降りると、エクストラクターが雄叫びのような声を上げた。
『ナイツッ!!オブ!!ラウンドテェェェェブルゥゥゥゥゥ!!!!!!デパーチャー・ワン!!』
すると鎧についている12の宝玉らしきもののうち、中央の1つに光が灯った。




