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6-7 遺跡の中へ行こう

 時間にして数秒。


 突進してくるデスホークを回避し、すれ違い様に手持ちの盾でガコンと殴ると、鷹の脳天が凹みバタリと地面に倒れ込んだ。


 あっけないものだ。


「ふん、雑魚ね」


 とりあえず勝ち誇ってみる。気分がいい。周りは誰もいない。どうやらコイツだけだったようだ。それなりの実力者だったのだろうか。知性があるかどうかを確認する間もなく倒してしまったのは彼?彼女?に対して少々失礼だったかもしれない。襲ってきたのは向こうなので罪悪感はないけれど。


「なんか強すぎるでございますね」


 何か恐ろしいものを見るような目でアーチェが見つめてくる。何よその目は。


「いいから行きましょう。静かに、他の連中にバレないように気をつけて」


 今度は素直に頷くと、口を塞いでタタタタタとアタシの後ろについてきた。



 スラン公国の遺跡までの道のりには魔物は居なかったし、旅人も街人も居ない。寂しいものである。平和だからいいけれど。


 そうして辿り着いたのは、断崖絶壁一歩手前、一歩でも間違えたら落ちてあの世に行くだろうと思えるほどの高さの崖の上にある洞窟である。地図が指し示しているのはここらしい。塩の香りが漂う。崖の上でも水の匂いは届くらしい。顔に吹き付ける強い風が運んでくるのだろうか。足を取られて落ちでもしたら、無敵なので落下そのものでは死にこそしないけれど、戻れなくてどのみち死にそうだ。怖いので気をつけよう。


 が、遺跡入り口は少し不審なものを見つけた。


「……足跡かしら」


 人とは思えないが、それでも足のようなものの跡が、地面につけられていた。


「足跡っぽいでございますね。ですがこの跡では……魔物ということしか分かりませんでございますね」


「うーん……アタシじゃいつ付いたかも分からない……」


 やはりナクールを選んだのは意図的なものなのだろうか。この時のために?


 色々考えてみたけれど、全然わからない。


 こういう時アイツが居てくれたらいいのに。


 そう思ったけれど口には出さない。口にすると……居ないことを改めて自覚してしまう。


「分からないものは仕方ない!!行くわよ!!」


 虚勢を張って突撃する。実際ここで行かないという選択肢は無いのだ。


 アタシは洞窟の中へと足を踏み入れ、


「……松明忘れた」


 真っ暗な目の前を見て立ち止まった。


 すると、後ろのアーチェが袋をごそごそと漁り出した。


「ほーら」


 そう言って手渡してきたのは松明である。炎が道を照らし、暗い遺跡に光を灯している。


「わたくしが来て良かったでございましょう?わたくし、考古学者なので、こういう準備は心得ておりますのでございます」


「助かったわ、本当に」


 本心からそう言うと、その松明を受け取り、アタシ達は闇の中へと潜っていった。


 

 誰かが入った形跡はある。


 だがそれ以上に古臭く、塩の香りは勿論、カビた匂いが酷く立ち込めている。


「幸いでございますね。仕掛けの殆どは解除されているようでございます」


 確かに罠らしきスイッチは幾つもあるが、そのどれもが反応しない。いや、反応した後らしい。岩やら何やらゴロゴロ転がっている。松明をそれに当てると、青い液体が付いているのが見えた。まだ新しい。


「来たのは最近らしいわね」


「アホな相手のようでございますね。罠にかかってばっかりのようでございますよ」


「遺跡に罠なんてあるのね。いや見たことなくて噂では聞いてたけど本当にあるとは思わなかった」


「あるのでございます。こういう、大切な物を隠した場所なら特にそうでございます。だからこそわたくしは神の存在を心から信じることになったのでございますから」


 アーチェの話では、罠にかかって死にそうになった時、神に祈ったら助けてもらったのだという。単に運が良かっただけなのでは?とも思うが、それは口に出さないでおいた。信じたい物があるならそれを無理に否定しても悪い。


「とりあえず罠に沿って進めば良さそうね。でも油断はしない方がいい」


「なぜでございます?」


「罠に掛かってしまったのか、あえて掛かったのかはまだ分からないからよ」


 自分の肉体に自信があれば、罠を解くよりも掛かって解除した方が楽なケースもある。アタシなんかは多分そうする。


「血を流してでもでございますか?」


「そんだけ知能は低いということかもしれないし。まぁ油断はしない方がいいってだけ」


 アーチェが頷いたのを確認して、アタシは再び歩き始めた。


 そう、油断はしない方がいい。何が起きるか分からないのだから。


 例えば、



 ガタン。



「は?」


 急に落とし穴を踏んでしまうことだってあるのだから。


 アタシ達は足場の感触が無くなったことに顔を青く染めながら、落とし穴の奈落へと真っ逆さまに落ちていった。

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