6-5 今度こそスラン公国へ行こう
「クレア様はこう仰られたのでございます。このままでは世の摂理が乱れると!!そしてわたくしにこう告げられたのです!!シーリア・ガードナーを探せ、今のところ彼女がキーを握っているのだと!!そしてそのためにもお前の研究するものを持っていけと仰られたのでございます!!」
突然乱入してきた女性、アーチェ・ロージアは高いテンションでそう言った。
「ふ、ふむ」
ニール皇帝は気圧されつつも、その言葉を受け止め、考え出した。
「神?」
アタシは率直な感想を述べた。アタシはあまり宗教に興味は無い。そのせいでクレアという名前も全く聞いた覚えがなかったのだ。
「その通り!!まさかご存知ありませんでございますか!?クレア様の名を!?」
「知らない」
「存じ上げんな、申し訳ないが」
アタシとニールがそう言うと、アーチェはオーバーに頭を抱えながら蹲った。
「嗚呼何たること、何たること!!我らが神たるクレア様、そしてそれを讃え崇めるべく組織されたクレア教についてご存知ないと申すでございますか!!」
「はい」
「あー、どっかの宗教国家の国教だっけか。そういえば聞いた気もする」
「然り然りでございます。わたくしはクレア様を崇めるアレク教国の出身でございます」
「別に一般化はしてないんだから知らなくたってしょうがないじゃない」
少し厳しいかもしれないけれど率直な感想を述べさせてもらった。実際、少なくともこのジャンベールや、元々住んでいたナクールでは宗教という概念が無い。漠然とした"神"というのはいる"らしい"ので、それに祈るということはたまにするくらいである。神が居たらあんな魔物だの魔界だの作らないだろう、というのが大体の人間の感想であり、宗教が流行らない理由でもある、と聞いたことがある気がする。
「嗚呼嘆かわしや、我らの、我らの信ずる神が未だ一般的でないことが嘆かわしい。神はいつでも我らを見てくださっております。そしてーー」
この話し振り。こいつを放っておくと話が長くなりそうなのが容易に推測できた。
「いいから、そういうのいいから。で?神がなに、エクストラクターでも持ってきてくれたの?」
「エクストラクター!!おお信心に乏しく生きることに迷っていそうな貴方のような存在でもその神の偉業の名はご存知でしたのでございますか!!」
嫌味か?
「その通りでございます!!わたくし神より依頼され、持って参りましたのでございます!!」
そう言って何かを取り出した。
「こちら、古代スラン公国が遺跡の場所を示す地図!!エクストラクターが眠るとされている場所を示す地図でございます!!」
…………。
「あー、その、なんだ。……実物は無いのかね」
ニールが尋ねると、
「ございません!!」
彼女は即答した。
「わたくしの専門は神の偉業を知るべく古文書を解読することでございます!!その過程でこのようなものを見つけこそ致しましたが、それを掘り出すことはわたくしの管轄外でございます!!」
期待しすぎたのかもしれない。アタシもニールも、同時に肩を落とした。その顔色からは、彼もアタシと同様に、相当落胆したのが伺える。
その二人の顔をキョロキョロと見ながら、アーチェはキョトンとして言った。
「え?どうされたのでございます?わたくし何かしてしまいました?」
「いや、いい。全然、いい。ありがとう。何もないよりはマシだ」
「どういう意味でございますか?!」
アーチェを無視してニールが言った。
「シーリア。後は任せても良いだろうか。我はレヴェル一派への対策をせねばならん」
「無論です」
アタシはそういうと、アーチェから丁重にその地図を受け取り、その中身を覗き込んだ。場所はーー
「ーー偶然?それともそれを狙って?」
思わずそんな声が自然とアタシの口から溢れた。
「どうした?」
問いかけるニールに、
「場所が」
そう言いながらアタシはその地図をニールに見せた。
地図には現在でいうナクールの西方に×で場所が示されていた。




