6-4 魂の逝く場所にて
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
魂の管理者、クレア・スピリットは、近年でも特に大きな、大きな溜息を吐いた。
ここ最近ーー正確には彼女の姉がやらかしてからーー彼女の溜息は多く・大きくなっていたが、今回出たのは相当だな、と近くの他の魂の管理者は見て思っていた。
と同時に、触らぬ神に祟りなし、彼女とは距離を取った。彼女は魂の管理者の中でも優秀で温厚、人当たりも良いという聖人君子であったが、それだけにキレた時の大爆発振りは凄まじいことで有名であった。
最近で最も大爆発したのは、彼女の姉が勝手にシステムにマジックアイテムを組み込み、挙句魂の管理者の能力である「魂の操作」を一部なりとも実現するエクストラクターが存在するとわかった時である。それから始まる数百年に渡る姉妹喧嘩たるや、他の魂の管理者からするとその空気を吸っただけで泣いて逃げ出すと言われるほどであった。
その喧嘩は結局姉の方が自ら出て行って後始末をすると決め、彼女自身は姉とは半ば縁を切ったことで落ち着いた。が、今の溜息の原因はそう簡単には収拾がつかないであろうことは、クレアには嫌と言うほどわかっていた。
何せ今の溜息は、むしろ姉の危機によるものだからである。
「ああもう、なんでこんな時に、あんな場所にいるんですか!!」
クレアは、後始末をすべくエクストラクター破壊のために顕現した世界に閉じ込められ困惑する自らの姉の姿を映像魔法で見ながらボヤいた。
「今の貴方ではどうにも脱出できないでしょうに……もう」
なんだかんだ今の彼女の内心を支配していたのは"心配"の二文字であった。
無能な姉であることは分かっているが、それでも危険な状況にあって欲しくは無い。
だが直接的に現世に関わることはあまりしたくない。前別の世界でやったが、そういうのは最終手段である。それに今回は完全に私情。否、私情とまでは言わないーーあの結界は明らかに異常な硬度であり、管理者の能力も使われているのは間違いない。確認済みである。なので何かしら手を打たねばならないのは間違いない。
そこで考えたのは転生者への干渉である。
転生者、その中でも前世の記憶を保持する者であれば話が通じる。特にアクト・ヴァーディという名前で活動している若者は、エクストラクターの統合機能にも対応出来ているという点で、(エクストラクターが管理者の能力を使っているということに目を瞑れば)この事態を彼だけで解決出来る可能性がある。
問題は魔界の特異性である。
魔界には魂の管理者は干渉しづらい。あそこは世界の裏側。元々魂の管理者が干渉出来るのは天に近い場所だけなのだが、あそこは更に位相がズレているせいで干渉が余計にし辛くなっている。なので別の手を考えねばならない。(と彼女は述懐しているが、内心、姉を直接助ける形になるのが気に入らない、という思いもありはした。)
となると次点で考えられるのはーー。
クレアは干渉しやすい山の上に住んでいる者に語りかけることにした。ちょうど彼女はエクストラクターについても理解があるようである。利用しやすい。
そう、彼女に、シーリア・ガードナーに伝えてもらうのだ。
エクストラクターを、もう一つのそれを手に入れなければならないと。




