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6-3 スラン公国へは行けない

 ニールの話はこんな感じであった。


 この世ーー魔物達の言うところの所謂人限界は現在群雄割拠、様々な国が存在しているが、数百年前はほぼ一つの国が支配していたらしい。いくつもの大陸、いくつもの海。それ全てを支配下に置いた超大国、それがスラン公国……だったらしい。


 だった。


 その一言、一文言が問題である。


 すでにスラン公国は過去の事。内部分裂か外部との戦争かはたまた天変地異か、何があったかは分からないが、今では無くなり現在のような諸国へと分かれている。


 では、エクストラクターはどこにあるのか。


「知らない」


 ニール皇帝陛下のありがたいお言葉である。


「いやだって、ほぼ全土を支配していたんだぞ。そう簡単には見つからない、というか知っていたら我とて早々に言うわ」


 ごもっともである。


 要するにこの世界には存在するが、具体的にどこかはわかりません、ということである。


「ふえー」


 思わずアタシはへたり込んでしまった。期待が見事にぶち壊された感がある。少し先が見えたと思ったらこれなので、ダメージも大きい。


「まぁ……そう嘆くな。この世界にーー数百年前の話だがーーエクストラクターがあったということは一つの希望ではあろう。結界を破る方法が見つかれば一番楽だが」


「図書室にはそういうのはありませんでした。何か心当たりは……ありませんよね」


「あったら言ってる」


「ですよねー」


「だが考古学に詳しい者は知っている。もしかするとエクストラクターについて知っているやもしれん」


 それは嬉しい。今のところ何にも手掛かりがない以上、どのような形でも情報が欲しい。


「是非お会いしたいです」


「うむ、そうだろうと思った。場所は確かあの雪山の上だ。アーチェ・ロジーアという女性で、修道士でもある」


 手元の紙を見ながらニールはそう言った。


「……なんかそういう調査する人って山の上に住まないといけない決まりでもあるんでしょうか?」


 アクトが行った魔界の研究所とやらも山の上だと聞いた気がする。


「神の声を聞くため、とか何とか言っていたらしい。我も直接は会ったことがなく、そういう人間もいるという報告を受けただけなので、それ以上の詳しいことはわからない。行ってみるか?」


 アタシは二の句も告げず頷いた。


「勿論です」


 二の句も告げた。


「うむ。現状ナクールの動きはない。有り次第以前渡した通信機で連絡する。君の方で何か情報が手に入ることを祈っている」


 アタシは手元の通信機(魔界では届かないためアタシが預かっていた)を握りしめて、改めて頷いて外に出ようとドアを開けた。


「神のお告げでございます!!シーリア様はこちらにいらっしゃいますか!?いらっしゃいますね!?」


 ドアを開けた瞬間、そこに居た女性が叫び声を上げた。若くちゃんとすれば美しいと言われそうな容貌であるが、ぼうぼうに伸びた金髪、ぼさぼさ頭で目が隠れている、見るだけでずぼらなのが分かる。服も皺々で適当に洗われている。


「こら勝手に入るな!!」

「押さえつけろ!!」


 兵士たちが女性の手足に纏わり付いているが、無視するかのように平然と前進を続けている。


「ちょ、ちょちょ、なにアンタ!!」


「わたくしはアーチェ・ロージア!!神の代弁者にして古きを知りて未来を導かんとする者!!ニール皇帝陛下に御託宣のご連絡でごさいます!!我らが神、クレア・スピリット様からの御託宣なのでございます!!」


 向かおうとした矢先、向こうからきてくれた。言葉の意味は、全く分からないけれど。

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