6-2 スラン公国へ行こう
古い文字。読み辛いが、近年の文字体系に近いものがあったので、それをベースになんとか読み取ることが出来た。
『抽出統合腕輪と呼ばれるそれは、伝説の防具として数えられる。魔物専用の防具であるそれは、装着した物を人間へと変化させる。魔物としての能力、力を凝縮することで実現されるが、それが可能なのはその肉体に膨大な魔力と強い意志を持つ物だけであるため、そういうものだ、ということは現時点でおおよそ明らかになっているが、ではそれを実際に使おうとすると、極めて難しいというのが実情である。加えて、防具としての発生確率は極めて低いようであり、現在ここスラン公国で確認されている以外には、この世界に二つとして存在しないだろうと考えられている』
ーー読み取ることが出来ることと、理解出来ることの間には、大きな大きな隔たりがある。
アタシの頭は知恵熱で沸騰した。
うん、うーん、うん?
よくわかったような、わからないような。
ようするにこのほんをかいたひともなにもわからないってことかしら。
あたしののうはだいぶきゅーきゅーいっている。たぶんけむりとかはいてる。
ふか……しん?こきゅうしよ。
すー、はー、すー、はー。
……漸く頭が冷えた。元々寒いこのジャンベール帝国、その図書室ではあるが、今ついさっきまでは物凄く暑くなってた。多分知恵熱とかそういうのだと思う。
とりあえず、エクストラクターについて書かれたのは間違いない。その名前が堂々と書かれてるし。
問題は、結局使いづらいし、よく分からない存在だってことしか書かれていないことだろう。……本なんてなーんの役にも立たないものね。
と、アタシは本を閉じようとして、ふと気づいた。最後の一文。
『現在ここスラン公国で確認されている以外には、この世界に二つとして存在しないだろうと考えられている』
これはつまり、一個はあるってことを言ってると考えてよろしくて?
そしてそれはスラン公国ってところにある、と。
いきなりいい手掛かりを見つけたことに、アタシの胸の鼓動は高まっていた。
ーーイケる。
このまま調べて、スラン公国ってところにいけば、エクストラクターが手に入るかもしれない。それが使えれば、もしかすると、結界を壊せるかもしれない。
今のところ結界魔法に関する本は見つかっていない。結構探したーーだいたい二時間くらいは。それでも見つからないのだから、無いと考えた方がいいのかもしれない。とすると、今のところの手掛かりはこの本くらいだ。この本、そしてエクストラクター。アクトが使っていた変なブレスレット。だけど今頼れるのは、今わかっている範囲では、それくらいしかない。
では問題は次に移る。そのスラン公国というのはどこか、という点だ。
アタシは聞いたことがない。こーいうのは知ってそうな人に聞くのが一番だ。
アタシはその本の貸し出しを受けると、ニール皇帝の元へと急いだ。
「ーーなるほど。結界に関しては無いか」
「はい。でもエクストラクターについての情報はありました。これを探し出せば結界の破壊につながるかもしれません」
ニール皇帝はその本をパラパラと読んだ。特にアタシが指差して示した、エクストラクターの在処に関する記述にはじっくりと目を通している。
「……一考の価値はある。手が無い現状を踏まえれば、この本に頼ることも必要かもしれない」
ニール皇帝はそこで溜息を吐いた。重く重く、大変重い一息を。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「どうされました」
「いや、凄く助かる情報だし、すぐに君に行って欲しいという思いはあるのだが。……問題はこのスラン公国だ」
「どこなんです?勉強不足で大変恐縮ですが、アタシも聞いたことがないものでして」
「聞いたことないのも当然だ。……確か、確かだけれども、数百年前に滅んだからな」
「は?」
アタシは思わず口をあんぐりと開けて言ってしまった。




