4-2 会合と邂逅
「レヴェルの名は聞いた事あるのう。が最近は全く聞かなくなったな。それがどないしたんや」
応接室。魔物と人間の間に緊張が走る中、アクトとシーリア、アイン、ツヴァイ、そして魔王とリンガというメンバーで会合が行われる運びとなった。アインとツヴァイには、既にレヴェルとナクール王国の惨事、そしてアクトとシーリアの立場については説明済である。その上でアクト達は、アインとツヴァイに協力を得て、魔王を誘き出すという作戦を実行したのである。
「そのレヴェルが、貴方方の言う所の人間界に来て、とある王国を実質的に乗っ取りました」
「……ほう」
その時、魔王の目が、今までは何時殺してやろうかという殺意に満ちていたが、初めてアクトを真っ直ぐ見た。興味が湧いたようであった。
「覚えとるで。我の命を狙っていた言うアレがか。なんでや?」
「分かりません。ですが、私は魔物化され、その国の国王や一部兵士もまた魔物と姿を変えました」
「……魔物化、やと?」
「はい。私の肉体が実際の所は魔物であるという事はご理解頂いていると思います。同様の、不可逆の変化を起こす魔法を持って、奴は何かを企んでいる。そういう事になります」
「……ほうほう。なかなか……面白い話やな」
「そして、ここからは私の推測ですが――私はこう考えるのです。レヴェルの目的は、戦力の拡充ではないかと。つまり、自らに完全に従う手駒を増やす。それが目的で人間界にやってきているのではないかと」
「何のために?」
「おそらく、貴方です」
「……我?」
「元々レヴェルは貴方の命を狙っていたと聞きました。今もそれが変わっていないとすれば、魔物化させ、自らの手駒を増やす目的として最も考えられるのはそれだと思います」
「確かにそりゃ、そうかもしれんの」
「そこでご提案がございます」
「聞こうやないか」
「我々、なんとか魔王様の目的である領地拡大に協力致します。ですので、共にレヴェルに対抗して頂けないでしょうか」
アクトが頭を下げると、魔王ヴェルムはしばし考え込んだ。
「……領地拡大の当てはあるんけ?」
「ルフトの北側にまだ未開の地があります」
ルフトの北には鬱蒼と生い茂る広大な森、「迷宮の森林」があり、その先には「人の住まぬ地」と呼ばれた荒野がある……とされている。そこには独自の進化を遂げた魔物が住んでいると言われているが、そもそも森を越えられる者が極めて限られているため、実情は不明である。
ここは現状、どの国でも手出しが出来ない不可侵領域と化している。ここを開拓出来れば、魔物の住む地としては適しているのではないか。アクトに魔王説得の材料として問われたときにアインとツヴァイはそう提案した。
「……ふむ。当てはある、と」
言うとヴェルムは顎に手を当てた。
「我とて積極的に人間狩りをしたいというわけではないねん。魔界の奴らにも被害出るわけやし、もう他に方法が無いからこそそーいう手を取っとるわけやね。うちらもぶっちゃけ疲弊しとる言うんが実情や。あんさんらを血祭りにするのも簡単やが、しないで済むのに越したこたぁ無い。」
「存じております」
だからこそ交渉の余地がある、アクトはそう考えていたし、ヴェルムもまた同様の考えを抱いていた。
「レヴェルが何かしたところで、部下はともかく我を殺す事が出来るとは思えん。が、だからこそ不気味や。……何か考えがあるのかもしれん。とすりゃ、早めに潰した方が安泰というもんやな。それに……あんさんならまぁ、信じてもよさそうやな」
ヴェルムはそう言って笑みを浮かべた。
「では……!!」
「一時停戦と行こうやないか。まずは共通の敵となりうるレヴェルを倒す」
そう言って魔王が手を差し出した。
「お話中失礼致します」
と、そこに警備兵が入ってきた。
「なんでありますか!!今は世紀の合意がなされようとしているところでありますよ!!」
「後にするのです!!後に!!」
「それが、アイン様とツヴァイ様へお客様でして」
「誰でありますか!?こんな忙しいときに!!」
警備兵の言った名前に、その場の”事情を知る”全員が目を見開いた。
「ナクール王国の王女、エレア・ナクール様です」




