3-11 暴露
「……そういうわけでぇ、私としましてはぁ、領地拡大以上の目的は無かったわけで……」
「領地拡大、ねぇ」
「魔界の生物というのはぁ、土地に対する命数が多すぎるのが常でしてぇ」
命数というのが、所謂人口の事であるのをアクトは知っていた。転生前の世界では基本的に人間の数=国民の数であったが、こちらの世界では人間以外、ドラゴンに悪魔、吸血鬼にゴブリンまで、多種多様な生物が国民としてカウントされるので、このような単位を用いているのである。人間と同一視されたくない生物がいる、というのも理由の一つであった。彼はしみじみ思う、プライドというのは厄介なものだなぁ、と。
「ですがまぁ、そのぉ、魔界の領地にも限界がございましてぇ」
「それでこちらの世界ーーアンタらの言う所の人間界に進出しようとしてる、ってのが近年の魔界との戦争の原因なわけね」
「はぁ、まぁ、そうなのですぅ」
「それでアンタは魔王にこのルフト共和国を献上しようと。そういうわけね」
「そのためにドライに接触して成り代わったと」
「いやあ上手いアイデアでしょ。バレなかったでしょ?」
『まぁそっくりだったであります』
『わからなかったのです』
「でしょうでしょう」
「それで?ジャンベールへ使者を送ったのは?」
「あそこの軍事力は馬鹿に出来ないのは早々に理解出来ましてぇ。動向を伺ってぇ、最悪ぅ、皇帝暗殺という事も睨んでいたのですよぉ」
「なるほど、よく考えるもんで」
「でしょうでしょう。うぇははははハブゥッ」
リンガの顔面にシーリアの拳がめりこんだ。
「笑い事じゃないわよ」
「ずんまぜん」
「とりあえず二人共内戦は止める理由は出来ましたね?」
アクトが通信の繋がったままのアインとツヴァイに言った。
「ジャンベールとしましてもこの状況は大変良くありませんので、矛を収めて頂けると良いのですが」
その言葉にしばしアインとツヴァイは黙って、そして、
『……まぁ、私が悪いというわけではないのでありますし』
『民のためにも一度その、そちらが悪いと思っているのであれば?攻撃中止を指示する事も吝かではないのです』
『……あ゛?』
『……お゛?』
アインとツヴァイが通信越しににらみ合う。
ガゴン!!
そこに割り込むようになにかが壊れる音がした。
よく見ると、シーリアの拳が壁を破壊し、廊下まで突き抜けていた。
「なにか、ご不満でも、ございまして?」
シーリアがニコリ微笑むと、アインとツヴァイは首を横にブンブンブンブンと振った。
『何もありませんであります!!』
『すぐに攻撃停止なのです!!』
本来であればこの塔全体を焼き尽くす事も出来るであろう業火球を盾一つで止めるという実績。それは例え一国の主に近い二人であっても畏怖の念を抱かずにはいられなかった。
「いやーよかったよかった。魔物がジャンベールに乗り込んだ目的も分かったし。ルフトも安全になったし。これで一安心ね」
「そうだね。ではアイン様、ツヴァイ様。停戦の手続き、よろしくお願い致します」
『分かったのであります。お二人には感謝するであります』
『全くなのです。ジャンベールにも感謝なのです。で、そこのドライモドキについては後程二人で回収に伺うので、そこに拘束しておいてほしいのです』
『ドライ本人も探さねばならないのでありますな。そこは分担と行くであります。では後程』
『そうするのです。ではまた』
そう言うと、アインとツヴァイは通信を切った。
後には、アクトとシーリア、そしてリンガが残される。
「さて……本当の本題に移ろう」
アクトはそう言うと、リンガに向き直った。
「ナクールに侵攻中のレヴェルという魔人がいるんだが、ご存知かね」
リンガはじっと考え込んで、言った。
「……もう隠しても仕方ないので正直に言いますけどぉ……」




