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3-3 ツヴァイ・ツーリアン

 ルフトの各区画はほぼほぼ同じような構造をしていた。


 真ん中に塔、その周りに街々、そして区画全体を取り囲む壁。ワンダラーの区画は勿論、ツーレインの区画も同様の構造であった。


 違いは家々の並び方であろうか。ワンダラーの区画はかなり乱雑で、大通り以外は適当に家々が配置されているように見えた。だがこちらの、ツーレインの区画は、小から大へ、通りの周りにしっかりと設計して配置されているように見えた。これは統治者やその家系の性格が現れているように見えた。


 だが他方。一致する箇所もある。大通りに設置されている魔導兵器などがそれに当たる。そして、それが向けられている方向もまた、アクトには思い当たる節があった。


 ワンダラーの区画である。


「内戦かぁ」


 塔からその様子を眺めて、アクトは思わず呟いた。


「え?何?」


「なんでもない」


 今あまり騒ぐのは良く無い。他者の視線もある。鈍いシーリアには後で言おうと決めて、アクトは案内されるままに応接室へと向かった。



「ようこそ、いらっしゃいましたなのです」


 しっかりとした、だが微妙に幼い口調で挨拶したのは、ツヴァイ・ツーレイン。この区画の代表である。小柄でツインテールという風体は若干子供のように見えてしまうが、それでも豪華な服を身に纏う事である程度の威厳を保っている。


「遠くからようこそ、そしてお疲れ様なのです。あの脳筋と話してきたのですよね?」


 脳筋とは恐らくアインの事なのだろうとアクトは考えた。だが同時に不思議にも思った。特にアインのところから訪問したという話はしていないはず、というより、ツヴァイとはこれが初対面で最初の会話なのである。


「ああ失礼しましたなのです。言い当てた事に驚かれましたです?」


「率直に申し上げるとその通りです」


「わたしのところに来る人は、みんなアインに会ってから来るのです。仕方ないです。アレはそうしないとすーーーぐ不機嫌になりますです」


 ツヴァイはニコニコしながらも、怒りを隠していない。だがアクトには、その怒りは眼前の自分たちよりも別のところに向けられているように思た。


「すみませんです、お客様の前でアレの愚痴なんて、失礼でした」


「いえ、お気になさらず。苦労されている事は、先日の面会でーー当然全てではありませんがーー察する事が出来ましたので」


 その言葉を聞いて、彼女の顔が一気に晴れた。


「ですよね!!あなた方でもわかりますですよね!!アレと来たら、全くもって愚かなのです!!そう思いませんです?」


「全くですね」


「ふふふふふ、いやあ気に入りましたです。……ところでどのようなご用件です?」


 ひとしきり笑みを浮かべた後に、ツヴァイはふと我に返ったかのように言った。どうやら本心のようであった。二人の間の仲が悪いという事前評判から予想された関係性をはるかに超えているようにアクトには思えた。それが街中に転がる魔導兵器に繋がっているのだろうか。


「友好国として、貴国の魔界との戦闘の状況について伺いたく。と言いますのも、必要とあらば我が国としても支援をと思いまして」


「有難い話なのです。ですが今のところは問題ないと思いますです。なにせ我が国の方針は徹底防戦です。防戦においてこの国が遅れを取る事はありませんです」


「防戦、ですか」


「あの壁、この塔から放たれるバリア、何れも未だ破られた事はないのです。わざわざ攻勢に出る必要はないのです。この街に立て篭もっていれば問題ないのです。それに、危ないのです。命あっての物種というやつです。命を落とすのはワンダラーの奴らだけで十分です」


「なる、ほど」


 なるほどこれはアインと意見が合わないのも当然と考えた。ワンダラーの人間が攻勢に出て、ツーレインの人間が守勢を訴える。国としての方針が一致していない。上手くやれば役割分担という形で良い方向に向かう事も出来そうだが、アインとツヴァイ、或いは彼女らを含めた国民同士の対立でそれも成り立たないだろうし、実際そうなのだろうという事が、口調の節々から読み取れた。


「仰る通りですね」


 アクトはそれをおくびにも出さないようにゴマを擦った。


「確かにこの街の、この国の防備は堅牢。いやいや、ニール皇帝も杞憂ばかり。ここに来て確信致しました。この国が陥ちる事はないと。安心致しました」


「ふふん、それは嬉しいのです。ですが戦力を送っていただければ、更に安心は出来るのです。出来れば考えて頂けると嬉しいのです。最近は魔物側の攻勢も強まっているのです」


「承知致しました。皇帝陛下に伝える事をお約束致します。ただ戦力の確約については申し訳ありませんがご理解ください」


「いいのです。貴国の有り様はわたしも理解しているのです」


 皇帝の噂は何処にも広まっているようであった。


「で?ドライにも会うのです?」


 ツヴァイが話を変える。


「ええ。会わないのも失礼ですので」


「ふふん。まぁわたしと会話出来ればルフトの未来は見えるというものです。会ったところで何かわかるか疑問なのですが、まぁ止めはしないのです。あなたの事は気に入ったのです。また何かあれば来るといいのです」


 それで会合は終わった。




「なんというか、みんな癖があるね」


 広場に戻ってからアクトが口を開いた。


「だからこの国は面倒なのよ」


「よーくわかった。……しかし気になる」


「何が?」


「……この国に来た理由忘れた?」


 アクトは若干呆れた様子で言った。シーリアはまだ分かっていない。


「ま、三つ目言ったら教えるよ」


 そう言ってアクトはスリーブ家の領域を見る。


「行こう」


「とっとと教えてくれてもいいのに。……まぁいいわ」


 若干煮え切らない物を感じながらも、シーリアが頷くと、二人は最後の区画の門を潜った。

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