2-10 そしてまた旅立つ
「やっぱり、程よく厄介払いされた気がするんだけど」
厚手の服を着て山道を歩く中、シーリアがポツリ呟いた。
「そう言わない。厄介払いならこんなもんくれないだろう」
そう言ってアクトがプランプランと偽名の身分証を見せた。
「それに大分たらふく食べさせてもらったじゃないか」
「まぁ、美味しかったけれど」
先程ジャンベールを後にする前に振舞われた食事のことである。
ナクール追放から丸一日。ほぼ飲まず食わずの二人に、スパイの魔物を捉え、倒した褒美として出された食事は、それは豪華で暖かいものであった。シーリルはさらりとぺろりとそれらを平らげた。お陰で鎧の下の腹がぱんぱんに膨れていた。
「本当に厄介払いならあそこで毒でも仕込まれててもおかしくないだろう」
「まぁ、ね」
「それに、薬もたんまり作らせてもらったし」
アクトは腰の薬ビンをカラカラと鳴らした。
「文句を言っても始まらない。それに、僕としてもルフト共和国がどうなってるのか知りたい。魔王やレヴェルが何を企んでいるのか、もね」
「そうね。ま、アタシとしても放っておくわけにはいかないからね」
「そういうわけだ。僕達は結局、行動するしかないんだ」
そう言うとアクトは、腰の薬ビンの内、青い液体が詰まったものを一本手に取り、自分に振りかけた。
巨大なドラゴンへと姿を変えた彼は、腰を下ろして尻尾をシーリアに向ける。
「さ、乗って」
シーリアはそれに従い彼の背中に乗る。
「次はちゃんとアタシを頼んなさいよ?」
シーリアが微笑を浮かべて言った。
「勿論。頼りにしてるよ、無敵のシーリアさん」
アクトが苦笑を浮かべて言った。
「ただその前にちゃんと捕まっておいてくれ」
「はいはい」
シーリアは背中にぎゅっと捕まる。それを確認したアクトは、ゆっくりと翼を羽ばたかせ、吹雪く空の中へと飛び上がっていった。
目指すはルフト共和国。三つの派閥が支配する合議制の国。
果たしてそこで待ち受けるのは魔物か、人間か。二人はまだ知らない。




