2-7 油断
「グルォオオオオオオッ!!」
「な、ナニ!?」
眼前にドラゴンが現れた事で、悪魔の精神が乱れ、魔法が不発に終わった。
「ど、どらごん!?」
慌てふためくゴブリンをむんずと捕まえ、壁に投げつける。
「グブ」
ゴブリンは気絶した。
「お前達、何を企んでいる!!」
「ナンダ貴様ハ!!皇帝ノ手先カ!?」
悪魔の叫びにアクトは答えない。そのまま悪魔に噛みつきダメージを与える。
「グガァッ!!」
悪魔の肩に、ドラゴンの鋭い牙が突き刺さる。緑色の血がだらだらとその抉れた傷口から溢れ出す。
「オノレェ!!」
叫ぶと悪魔は手から光弾を発射した。閃光波と呼ばれる雷属性の魔法である。それはアクトの鱗に当たり爆発、アクトの体を後方へと吹き飛ばした。
「ぐっ……」
普通なら耐えられるであろう一撃だが、巨体が故に有していたドラゴンの種族としての強靭さが、小型化する事により若干ではあるものの落ちていた。それ故に直撃し後退を余儀なくされた。アクトには想定外の事態である。
想定外の事態は更に続く。
アクトの背中の翼が何かにぶつかった。
「ん?」
すると頭の上に何かが降り注いだ。
「いでっ、いでっ」
アクトの目が細まる。一瞬その視界に降り注いだ物が映った。
「本!?」
背中にあったのは本棚であった。
そして本棚に尻尾がぶつかり、
バタン。
アクトの体に本棚が覆い被さった。
「げっ」
幾ら縮小化されているとは言え、ドラゴンはドラゴン。当然本棚如きではびくともしない。だが問題は、パコン、という音と共に本棚の背面部分が破け、本棚が横になった状態でアクトの体の周りを囲み、彼の体を拘束した事である。
突然の出来事に、アクトはーー本来であれば翼を一回羽撃かせるだけで十分だろうにーーどうすれば良いか戸惑ってしまった。
「ばかメ、隙ダラケだ!!」
それを見て悪魔はせせら笑うと、
「死ネ!!」
叫びと共に先程よりも強力な魔法、冷徹なる剣を放った。氷の刃を複数飛ばし相手を貫く魔法である。いくら硬いドラゴンの皮膚、鱗と言えど貫くであろうその鋭い鋒が、アクトの眼前へと飛来する。
「しまっーー」
ドラゴンの力を過信し過ぎた。自らの戦闘能力が低い事を勘案出来ていなかった。そういう後悔がアクトの脳裏を過ぎる。
「だからさ、もー少しアタシを頼りなさいよ」
その思考が、聞き覚えのある声で遮られる。
冷徹なる剣の鋒とアクトの間に何かが割り込み、魔法の氷を撃ち落とした。
「シーリア!!」
撃ち落とし、悪魔とアクトの間に割り込んだのは、ナクール王国元騎士団長、シーリアであった。




