14-1 炎の中から
アクトがマグマの中で自らの化身の手を掴んだ瞬間、光と共に魂が肉体へと戻った。
と同時に、肉体にも大きな変化が生じていた。
――遡行する川により遡った時間は相当なもので、それは数年分に値した。レヴェルの魔法により魔物の肉体へと変化していたより長い期間の遡行が発生した結果、彼の肉体は若返り、そして魔物では無く純然たる人間の肉体へと戻っていた。
「わわわわわわわわやったー!!」
マグマの中から飛び出してきた彼の姿を見たクレアは思わず年甲斐もない喜びの声を上げた。上手くいってほしい、その願いが天に届いたのだ。届く先の天そのものである彼女ではあるが、そんな彼女が何も出来ない状況、それが好転した事は、魂の管理者として様々な事象を経験してきた彼女にとっても初めての事であり、同時に近年で最も喜ばしい事であった。
「上手くいった!!ああ姉さん、今回ばかりは感謝しますよ!!」
「暑い。暑いけど助かった。ありがとうクレア。見守ってくれていて」
「いえ、私にはもう何も出来なかったので。感謝すべきは――」
「勿論、分かっているさ。感謝しつつ、何とかしないと。……する必要もないかもしれないけれど、割り込んでやらないと」
そう言ってアクトは彼女の居るであろう平原の方を見た。熱気でもやもやとする視界の中、巨大なサイクロプスと対峙する輝く何かが見えた。アレだ。
「それは?」
クレアは彼の手に何か見覚えの無い物がある事に気づき、問うた。
「……新しい力、かな」
それは巨大な、今まで使用していたドラゴンのリリーフカードよりも巨大な、人の姿が描かれたリリーフカードであった。
アクトはそのリリーフカードを見ながら思い出す。
マグマの中で輝き出した竜は、かつての自分の魔物としての姿であった。その竜が差し出した手を掴むと、若返った肉体と魂との再結合が始まった。バグで生み出されたエクストラクターが、本来困難であるそれを実現させていた。
そして魂と肉体が完全に結びついた瞬間、再びエクストラクターへの適合反応が生じ、彼の手元には新たなリリーフカードが出現していた。
それがヒューマンのリリーフカード。彼自身の、本来の力であった。
「じゃあ、行ってくる」
彼はクレアにそう告げると、そのリリーフカードをエクストラクターへ装着した。
『ヒューマン!!』『リリーフ!!』
まるで形状を変えるようにエクストラクター全体を包み込むようにセットされたヒューマンのリリーフカードがそう叫ぶと、彼の肉体は再び光に包まれた。




