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13-5 上位存在すらただ祈る

「結局どうなったんでしょうねえ」


 クレアは火山頂上から下――人住まぬ地(ノーマンズ・ランド)に広がるゾンビの大群と、それに抗う人々の抵抗具合、そして何より、未だ動きの見えないアクトの肉体が落ちた溶岩を見つめた。

前者二点に関しては善戦しているという表現が的確であろうか。平原を蠢く死霊族達の動きは若干止まり気味。あの姉が何とか踏ん張っているという事実には驚嘆する他ないが、それはサチというパートナーとの出会いによるものであろうか。


 問題は後者で、未だ溶岩には一向に変化が見られない。時たま泡がブクッ、ブクッと溶岩の中から浮き上がり、空気に触れてパチンと弾けるくらいで、大きな変化は見られない。


「はぁ」


 どうにかなって欲しい。この事件に関してはあまり介入したくないというのが彼女の本音であった。


 魔物への肉体変化に関しては元々はレヴェルの作り出した魔法によるものではある。それはまだ良い。生命・種族のバランスが強制的に変化させられるという点に関しては魂の管理者として思う所はある。が、それでも魔法というものが存在する以上は、それもまたよしとせざるを得ない。そこまでなら良かった。


 問題はインジェクター、エクストラクターという自らの姉が作り出した(バグ)により生じた物質が関わっているという点である。これのせいで話がややこしくなった。


 今はまだレヴェルがその考えに至っていないようであるから良いものの、もしインジェクターの力を悪用すれば、今のように規模を広げるだけに留まらず、恐らく今の生命としての在り方を変える事も出来る。魂を、肉体の形態を組み替えて、自らの完全な傀儡としたり、本来存在し得ない生物へと変化させたり、そういう事態が容易に想像出来る。


 そうなったら、魂の管理者としてどうすべきか。先程彼女が口にした通り、もはやこの世界全体のリセットもやむを得ないという判断に至るだろう。彼女がそう判断しなかったとしても、他の管理者がこの状況をよしとしないのは明らかである。既にチラリとそういった話が耳に届く事もあった。


 世界のリセット。そうなった場合、今ある生命が全て消え去る事になる。バグを含む可能性がある以上、転生すら許されない。命も含めた全てのモノがぐちゃぐちゃにかき混ぜられ、全ての物質の根源であるエーテルへと全てを還し、そして全てがやり直される。そこに住んでいた生物の営みや歴史、記憶が全て失われる。


 クレアはそういった行為が好きでは無かった。彼女は上位存在であったが、そうでない命が作り出す営みが愛おしく思えていた。鬱陶しい・煩わしい事も勿論あったが。それでも全てがゼロになる事は良い事では無いと思っていた。


 見る限り、ナイツエクストラクターだけでは、全てのインジェクターに対抗するという事は難しい。あれはあまりバグを有効活用出来ていない優等生、バグを有効――という表現が正しいかはともかく――活用エクストラクターと、それに適合した(アクト)が必要だとクレアは考えていた。


「お願い……」


 だからこそ彼女は期待していた。溶岩の中から、彼が復活する事を。


「神様……いるならどうにか、なんとか、こう……いい感じに……」


 自分がその立ち位置である事も忘れて、語彙も無くして、クレアはひたすらに祈った。



 ぶくっ。



 ひときわ大きなアブクが弾けた。


 そして続けて、溶岩の中が輝き始め――

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