13-4 邪魔をするのは巨躯の魔物
「あの方の邪魔はさせヌァァァァァァァァァ!!」
と、平原から何かが叫ぶ声が聞こえた。
シーリアの視界の中で、一部が突然膨れ上がる。
「あ?」
平原のゾンビの中から、サイクロプスがシーリアに向けて飛び出してきた。
部下か何かだろうか。シーリアがそう思うながら迎撃の準備をしていると、サイクロプスの姿が何か大きくなってくる。
「お?」
目の錯覚か何かだろうかと思って目を擦るが、その間にも目の中のサイクロプスは大きくなっていく。
「え?」
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!!」
男が残した巨大化の魔法で巨大化したサイクロプスがシーリアの眼前へと現れた。
その咆哮はシーリアの全身にべちゃべちゃと臭い唾を飛ばし、髪の毛を後ろに流した。
「………………くっさ」
ポツリとシーリアが言う。催眠のような精神に危害を加える攻撃すら無効化するスキル:無敵を有する彼女だが、直接的な攻撃以外は受ける場合がある。唾等はその典型である。彼女にボロクソに負けた相手が捨て台詞と共に吐き捨てた唾が彼女を襲う事はちょくちょくあった。なおそういう相手は更にボロクソに叩きのめされた。
「ぶっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ殺してやるわ!!」
激昂した彼女がその盾で殴り掛かる。
「やってみろォァァァァァ!!」
サイクロプスがハンマーを振り上げ、シーリアに向けて叩き下ろす。
カコン。
ハンマーが彼女の頭を強かに打つが、響く音は軽い。シーリアのスキルの前には如何に巨大な槌であろうと無駄であった。
『パーシヴァル』『フレイムアップ』
炎を帯びた盾が槌を持ったサイクロプスの手を穿つ。
「グギャ」
悲鳴を上げるが、サイクロプスはハンマーから手を離さない。ダメージ自体があまり無いようであった。巨体故に体力は増強され、一撃のダメージが幾ら大きかろうと、総量自体が増えている分、受けるダメージを割合で見ると少なくなる。水に砂糖を混ぜるのと、海に砂糖を混ぜるのとの違いのようなものである。
「くそっ」
シーリアは舌打ちをしながらサイクロプスの足元を見る。ゾンビが蹴散らされ、中には海潰されている。このまま行けばゾンビ達は全滅するかもしれないが、それは元ナクールの人々を見殺しにするようなものである。それに、これだけの巨体――数十メートルを越えるだろうか――である、仮にホスの村や火山麓の村に到達すればどんな被害が出るだろうか。サチやクレスに任せる?出来ない。ゾンビ達を食い止めるという時点で彼女らには結構な無理を強いているのは分かっている。こんな化物を任せれば彼女らの命も危うい。
「仕方ない、遊んでやるわよ」
「ガアアアアアアアアアアア!!」
ここで足止めをするしか無い。シーリアはそう判断した。




