12-6 絶望
少しだけ、予想はしていた。そう返されるのではないかと。
それでも此処に来たのは、そうだとしても希望が彼女しか無いからだ。
「そこは……それはその、何とかならないの」
アタシは言った。多分縋るような目をしていたと思う。視界が揺れていた。
「何とかしたい、それは私も全くその通りではあるのですが、どうにも、倫理的に許されていない事に加えて、事実上出来ないというのもあるのです」
「どういう事?」
「死んだ人間の魂というのは確かに我々の元に届きます。まず倫理的に、それを死んだ人間の肉体に入れる、という事は管理者の規定上許されておらず、新たな命として扱う事のみが許されています。出来るとしても転生です。即ち、生まれ変わりです。我々に許されている事はそれが限界です」
クレアは溜息を吐いた。
「加えて事実上出来ないという件について。億が一……貴方が考えているような蘇生をしたとしましょう。しかし、魂が抜けた肉体は、――貴方も悟っていると思います――腐っていくものです。魂が、脳が働かせていた肉体の機能が全て停止しているためです」
「……」
「仮に、その肉体に戻したとして、出来上がるのはゾンビです。元のアクトさんには戻す事が出来ません」
聞きたくない、聞きたくなかった言葉の羅列がアタシの耳を通り、そして抜けていく。
「……は、へ」
抜けていくのは言葉だけではない。アタシの体の力もふいと抜けていく。間の抜けた声を上げて、アタシはよろけて、そして尻餅をついた。尻が熱い。灼熱の大地の熱がじわじわと伝わってくるが、なんかもう、どうでもいい。
「……方法があるとすれば」
クレアはぐっと考えを巡らせるように唸りながら言葉を紡いだ。
「アクトさんの肉体の時間を少し、死ぬ前まで遡らせつつ、魂をそこに誘導して上手く噛み合わせる事が出来れば、或いは、という感じです。ですが、魂の管理者に時間を操作する権限はありません。世界全体の操作なら辛うじて出来ますが、個別対応となりますと上位の――世界の管理者にしか出来ません。ですがその管理者たる先輩は別の世界のバグ取りで飛び回っていて捕まえる事が出来なくて……」
「じゃあ……彼は……」
自分でも笑ってしまう程弱々しい声がアタシの口から飛び出す。それを聞いたクレアは、じっと目を閉じて、首を横に振った。
「あ、ああ……」
思わず手が緩んだ。
抱えていたアクトの、冷却した肉体が、アタシの手から飛び出した。
止めて。
せめて貴方の体だけは。私の手で弔わせて。
そう心の中で叫びながら手を伸ばす。
でも、届かない。
何とかしようとしてくれているサチとクレスの手や足をも擦り抜けて、コロコロと坂道を転げ落ちた。
小さくしなきゃよかったずっと手を握っていないと駄目だったそんな事分かってたはずなのになんでアタシは手を手をてててててててててててててててててててててててててて
伸ばす手は空だけ掴み、そして彼の肉体は、チャポンという音を立てて、川に落ちた小石のように、溶岩の中へと落ちていった。
目から何かが溢れた。目がその何かで霞む。何かは地面に落ちてジュッという音を立てた。




