2-4 鑑定スキルの活用方法
「ではまずこちらを鑑定致します」
アクトはそう言うと、薬と同時にこっそり持ってきた鑑定用のナイフを取り出して言った。
カリカリと音を立てながらその殻を切り裂き、アイテムとの癒着部分を丁寧に切り離す。そして、内部のまだ柔らかい部分を凍らせ固めていくと、アイテムの輪郭がしっかりと現れていく。
細長く、先が鋭く尖った槍である。
「ふむ……まぁまぁの品。トライデント。能力なし。ノーマルのカスですね」
「それで何が分かる?」
「これが生み出される原因となった魔物は、そこまで高位の物ではない、という事です」
「ほう」
「こういう未鑑定品は、その材料となった魔力を生み出した魔物の格で変動します。このくらいの武器は近場のダンジョンなどでも拾えますので、つまりここにいるとしても雑魚ということです」
「ふむ……門外漢なので果たして正しいかはわからないが、魔物というのは低位の場合知能を有していないケースが殆どではないか?そんな低位の魔物が、人間に化けて紛れ込む等という事が出来るのか?」
「命令を聞くくらいでしたら出来ると思います。僕達の村を襲ったレヴェルも、魔物化した元村人達を指揮していましたし、元村人達は皆指示に従っていました」
「口を開かない者が怪しい、と?」
「そうですね。心当たりはございますか?」
アクトの問いに、ニールは首を横に振った。
「生憎、あの会議室は大体の人間が黙っているものでな。我輩が一方的に話して終わりになる事が多い」
「ふむ……であれば紛れ込むのは容易ですが……他にも可能性はあります。現地に行っても良いでしょうか?」
今度はニールも首を縦に振った。
シーリアは二人の会話を聴きながら、腕を組んでうんうんと誰が魔物かを予想し、そして口を開いた。
「全然わからん」
「行きましょうニール皇帝」
「うむ」
二人は無視した。
「なるほど屋根裏か」
アクトがシーリアに支えられながら天井の蓋を開け始めて、ニールは得心がいった。
「ええ。或いは床下か。そういう所に魔物が入り込んでいるという可能性もありますので。……おお、おっと」
アクトは光の魔法で天井裏を覗くと、そこに足跡を見つけた。
「おやおやおや。これかな?」
アクトはスキルを発動させ、足跡を『鑑定』する。
鑑定スキルには実は他にも利用方法がある。それは前世で言う所の鑑識的な役割を担う時に用いるという方法である。足跡の照合、指紋の分析、血液検査、そうした用途にもーー使用者の知識さえあればーー活用する事が出来る。
今まで鑑定スキルがハズレスキルと言われていたのは、その「使用者の知識」による所が大きいからである。この世界にはまだ犯罪捜査などの概念が無い。故にこうした用途でスキルを使おうという発想自体がなかったのである。
「これはゴブリンの物だな。一般的なそれと一致している」
「むう、我が城の屋根裏にゴブリンが……?」
「そういう事になりますが、問題はその目的です。そして、誰の差金か。ーーゴブリンがわざわざこんな所に潜り込むなど、自分の意志とは考え難いですからね」
「もーいい?肩が痛いんだけれど」
アクトがしたり顔で解説しているのを遮り、シーリアが言った。
「ああ、ありがとう」
彼がそう言うと、彼女はゆっくりと彼の体を床に下ろした。
「足跡はどこに向かっていた?」
「城の奥の方に。後を追いたいところですが……閉所で小鬼に絡まれるのは危険なので、一旦準備致します。時に皇帝陛下。この城に錬金術の研究室のようなものはございますか?」
「あるが、何のために?」
「大切な戦力の増強のために」
そう言って彼は、腰にぶら下げた空の薬瓶をカラカラと鳴らした。




