束縛
もっちゃんと付き合い3ヶ月がたった頃あたりから、束縛が始まった。
ピコン
【今何してる?】
ピコン
【おーい】
ピコン
【家だよね?】
ブーブーブーブー
「もしもし!」
『なにしてたの。なんでスマホ見てないの、家じゃないっしょ』
「あ、ごめん お風呂入ってただけだよ。」
『あのさ、お風呂入るならお風呂入るってメッセージ入れといてくんない?信用ないんだし』
もっちゃんはこの頃から私のことを信用ないと言い始めた。
理由を聞くと、barは辞めてくれたけど
『barで働いてた女は信用ない。不安にさせないでくれ』
と言われた。
そんな言い方されたので私も、
「じゃあなんで付き合いたいって言ったの?信用ないんでしょ?しんどくない?お互い。」
と言ったら、
『俺も送るじゃん。それに、誰だって信用ないと思うよそんな子。俺はまだマシだと思うけど』
と言われてしまった。
自己肯定感の低い私は、本当にそうかもしれないと思った。
barで働いて忙しくしている間に会わなくなった友達も多いし、今更出会いもないし、
bar上がりは信用ないよね。そりゃそうだよね。
『男ってさ、優しくする時点で下心あるから』
もっちゃんは、私が男女グループの話をすると必ずそう言った。
『その中の誰か絶対ゆずのこと狙ってる』
「いや、そんなことないよ。高校からのグループだし」
『女って気づかないよね。だから危ないんだよ』
最初は考えすぎだと思っていた。
でも、何回も言われるうちに、
グループの連絡が来るだけで少し怖くなる自分がいた。
飲みの誘いも、
断った方がいいのかな。
そう思うことが増えていった。
結局、渋々ながら今何してるかを定期的に送ることになり、結局私もこの時は何故か離れられなかった。
今何してる?とか、
連絡忘れてるじゃん。とか
それはダメだよ心配だから。とか言われるたびに、私ばっかりと思うのが嫌で張り合うように
もっちゃんもそれやめて あれやめて
と言うようになってしまった。
本当は全然気にしてない事も、
私だけ縛られるのが嫌だったから。
気づけば、
聞かれる前に写真を送るようになっていた。
コンビニに寄ればレシートを撮って、
友達といる時は先に写真を送る。
送っておけば、
後から色々聞かれなくて済む。
ただそれだけだった。
疑われることより、
説明する時間の方がしんどかった。
面倒な空気になるのが嫌で、
気づけば先回りする癖がついていた。
もっちゃんは平日の仕事終わりに毎日うちに来た。土日もほとんどは来ていた。
平日は、
私の料理を食べて一緒にお風呂に入って帰っていくのがルーティンだった。
今日は残業って言われたので、
私も友達とご飯に行くことにしよう。
【今から友達とご飯だいってくるね】
ピコン
【え、聞いてないんだけど。】
ピコン
【どこの店】
ピコン
【誰と】
【男でしょ】
【美波って子。昨日誕生日だったし、お祝いしたくて。私もお祝いしてもらってるから。
もっちゃんが残業って言ってたから、たまには友達とご飯に行こうかなと思って!駅前の焼き鳥だよ】
ピコン
【え、ダメだろ】
【なんで?】
化粧してる忙しい時になんなの。
埒が明かない。電話にしよう。
【かけるね】
プルプルプルプル
「もしもし?なんでダメなの?」
『なにが』
「ご飯の件だけど」
『焼き鳥は男が近くにいるから女2人はダメ。そもそも何で夜なの?ランチに行けばいいじゃん。俺仕事してるのにご飯ってわざわざ予定入れてさ、しかも焼き鳥とかナンパされたいんでしょ』
「焼き鳥は納得できない。何するにもダメダメって文句ばかり言われてさ」
『は?文句?じゃあ行けば?俺仕事なのに楽しみたいなら楽しんで。
その代わり俺も誰かナンパしに行くから。』
「いやいや、どういうこと?おかしいよねそれ」
ブチっ
本当にナンパ行っちゃうのかな。
もっちゃん営業マンでお話上手だし、
本当にナンパ行っちゃいそうだな……。
【美波断りました。ナンパ行くんですか】
ピコン
【ランチにしなよね。なんで毎回しんぱいさせたいの。 ナンパはゆず行かないなら行かないけど】
本当に行っちゃったらどうしようと思うと、
冷や汗と動悸が止まらず、気づけば美波に
残業になっちゃったと嘘をついてしまった。
申し訳ないけど、この時の私には
自分のことで精一杯だった。
喧嘩した日の夜、
もっちゃんはいつも少し優しかった。
『今日、ごめんね』
後ろから抱きしめられ、
首元に顔を埋められる。
『でも俺、本当に不安なんだよ』
『ゆずのこと好きすぎてさ』
そんなことを言われると、
自分が悪かった気がしてしまう。
心配させるようなこと、
しなければよかったのかなって。
断ったけどもしかしたらナンパに行ったかもしれないと思うと、また電話をしてしまっていた。
プルプルプルプル
出てくれない。
なんで出てくれないの。
ーーーそれから10分くらいたった。
ピコン
【なに?】
【電話する前にメッセージって言ったよね】
【ごめん。電話いい?】
ピコン
【無理。打ち合わせ】
【ナンパ行ってないよね?】
ピコン
【終わったらいう】
行ってないよね?打ち合わせだよね?
何故か不安が止まらず、
ケータイを握りしめソファーから動けないでいた。
それから2時間後、メッセージが来た。
ピコン
【終わった帰る】
【打ち合わせ長かったね】
ピコン
【うん。疲れたから帰ったらすぐ寝る】
いつもは今日どんなことがあったとか
夜は何を食べた?とか
きいてくるのにどうしたんだろう。
もしかしてナンパしてその人とご飯行って、
楽しくてメッセージしてる時間がないとか
なのかな。
どうしようどうしようどうしよう。
返信が少し遅いだけで、
胸がざわつくようになっていた。
スマホを何度も開いて、
閉じて。
その時ふと、
前の自分ならこんなこと気にしなかった
と思った。
でも、ここまで向き合ってきたんだからもう少し寄り添おうよ。と
自分を説得させてる自分もいた。
そして、ケータイを見つめ朝まで寝られなかった。




