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第11話 ありきたりな未成年者のよくある徘徊

 




 鳥型魔物に愛依さんの家付近が襲われた、夜。


「まあ。いつもの病院が近くて良かったというか」


 僕は例によって入院していた。あの後、魔物が追加で現れないか警戒していたんだけど、しばらくして警察が来てくれた。


 そこで僕が倒れたんだよ。


 警察が来てくれた、ということは、程なくして自衛隊も来てくれるということ。

 そして、その後には梅園家の人間も駆けつけてくれる、ということだから。


 安心して気が抜けたんだと思う。


 そして、愛依さんもこの病院に入院した。


 魔物に捕らわれたからね。心配だ。

 あんな風に腹ががばっと裂けて、中から触手が出てくるなんて初めてだし、それに触れた人間も初めてだ。

 身体に異常が無いかちゃんと検査するのと、魔物に対する情報集めと、ふたつの意味での入院らしい。



 ああ。


 僕の独断専行はプラマイゼロで不問となった。

 一応、魔物が出た時に、たまたま近くに居合わせたら交戦する取り決めはあったんだ。大人用だけど。


 今回は僕がまだ中学生なのと、率先して戦場へ移動したこと。自衛隊の到着を待つべきタイミングだったことが問題になったようだよ。


 ああ、魔物が初見の鳥型だったことも考慮された。移動速度が段違いで、しかも行動パターンも不明だったから。

 今までの対応マニュアルでは不十分だったから、僕が現場の状況次第で即応したのは評価された。無茶しすぎ、とも言われたけど。



 でもまあ、実質僕が魔物を葬ったことで被害ゼロだったから、国とか地域からは感謝されて。

 それで、「独断専行は今後もダメだけど、今回は結果オーライだから厳重注意にしとく」になったそう。


「この病院の一般病棟にいるんだよな。今何してんだろ?」


 今までは首から下が動かない状態での入院ばっかだったから、ベッドの上で身体が動くのは新鮮だ。‥‥‥‥いや、これが当たり前なんだけど、ね。


 そして肋骨のあたりをゆっくりさする。


 あの時彼女が、僕に必死に抱きついていた感覚を、思い出しちゃうんだ。



 同時に甘い香りも。


 彼女の熱と湿度も。



 あの時僕らは、確かにひとつの体と四つの足で立っていた。




 ***




「ふあっ」


 寝落ちしていた。変な声出して目が覚めた。

 午前2時。



 今回、不思議なことに、首から下もある程度動く。



 うす暗い「授乳室」の天井を見つめながら、気がついたら愛依さんのことを考えていた。脳内を整理するみたいに、時系列で起こったことを順に並べていた。


 僕の後遺症。愛依さんが担当。


 暗闇でニアミス。気まずくなる。


 若様と彼女の縁談。重婚の話。


 愛依さんの家。河原での会話。


 魔物。拉致未遂。後遺症。泣きつかれてから、抱きつかれた。



 ‥‥‥‥あれ?



 そういえば僕。鳥型と戦って後遺症、動けないハズだった。


 それで絶体絶命、大ピンチだった。


 それが、急に動けるようになって。


 普通に魔物を倒してた。7体も。




 いや。愛依さんが連れ去られそうだったから。



 それはそう。もう死に物狂いで何とかしようとしたんだけど。

 だからってそんな都合よく僕が復活する?


 しかもその後、もう一回後遺症で倒れて今に至る。しかもその症状は軽め。


 彼女は、このこと本家にどう報告したんだろう? 僕は特に訊かれてないなぁ。





 静かだ。



 病院だから、まあそうか。たまに救急車の音はするけど。


 そうだ。この病院、身体が回復したらリハビリで病室出てもOKだったんだ。24時間。

 看護師さんがそう言ってた。‥‥正確には「後遺症」の時、でのハナシだけど。


 そうだ。あれだ。


 いつも後遺症で動けないことが多くて、病院内を見て回ることなんてしてなかった。

 この際だから、ひと通り歩いて回ろうか? ヒマだし。

 松葉杖なら、行けるだろう。



 もしかして、愛依さんのいる病室近くも通るかもしれないし。


 なんてね。





「‥‥‥‥‥‥‥‥」



 深夜の、病院内での僕の探検は終わった。


 一応は歩き回った。

 でも、さすがに夜中の2時だし。この時間はみんな寝てるし。


 物音を立ててもマズイかと。

 それでナースステーションに面識のある看護師のお姉さんがいたんで、少し話をして帰ってきた。夜勤は大変。ご苦労様。


 この病院は4階建て。1Fは外来。一般診療室。あとこの授乳室。2Fはオペ室だとか。

 3Fからが一般病棟。特に4Fは女性の患者さんが多いから、むやみに行っちゃダメよ? って教えてもらった。


 だから行かなかったけどさ。エレベーターの横に4Fへと昇る階段を見つけた時には、けっこうドキドキした。この上に愛依さんもいるのかと思って。


 で、3Fの自販機コーナーで無料の水を飲んで帰ってきた。


 なんか心がざわざわする。愛依さんに抱きつかれた時と似た感じではある。



 しかしまあ、何だ。どうしたことだろ?



 この授乳室に来て、僕は彼女のことしか考えてないよな?



 これ思い出すと心がずしんと重くなるんだけど、彼女は本家の若様に嫁ぐのが濃厚なんだよ?

 ここで僕があれこれ考えても意味ないじゃんか?


 意味ないじゃんか?

 意味ないじゃんか?


「‥‥‥‥‥‥‥‥」


 いやあどうも、時間が経つのがどうしてこんな遅いんだ。夜明けはまだか?


 ゲーム機持ってくれば良かった。今回の戦闘で、しばらく学校休んでもOKって言われてるし。

 ‥‥‥‥あ、ダメだ。彼女の重婚の話を聞いて、気がついたら愛依さんの家まで走ってたんだ。ゲーム機なんて持って出るワケないか。


 重婚かあ。あの()は、若様のこと好きなのかなあ。


 好きなんだろうなあ。だって「すごい人」って言ってたし。

 爽やかだし。イケメンだし。退魔能力高いし。本家だし。コミュ力あるし。


 戦闘のたびにたんこぶ作って寝込む、分家退魔師じゃあ勝負にもならんか。はあ。




 ‥‥‥‥‥‥こんこん。


 あ、たんこぶ作ったのは一度きりか。でも関係ないや。色んなことで若様には敵わない、って意味では。




 ‥‥‥‥こんこん。


 生まれながらに主人公属性のヤツって、いるんだよな~~。




 ‥‥こんこん。


 そういうのに生まれたかったよな~。そしたら僕も‥‥ってなんだ? 廊下で何か鳴った?




 こんこん。

「‥‥暖斗くん起きてるかな? わたしです。逢初です」




 ‥‥‥‥‥‥‥‥は?





 午前4時だぞ?





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