第4話 教室で
放課後の教室。
夕焼けが窓から差し込み、机の影を長く伸ばしている。
お兄ちゃんはクラス委員の仕事を押し付けられたらしく、一人で文化祭のアンケート集計をしていた。
「手伝おっか?」
「あー、助かる」
お兄ちゃんの隣に座り、一緒にアンケート用紙をめくる。
お化け屋敷、カフェ、模擬店……。
そんな中、一枚の用紙に目が釘付けになった。
『〇〇しないと出られない部屋』
(なっ……!? なにこれ、誰が書いたのよ! 高校の文化祭でこんなの……!)
動揺する私をよそに、お兄ちゃんが横から覗き込んできた。
「へー。〇〇しないと出られない部屋か。楽しそうじゃん」
「……本気で言ってるの?」
「ちょっと試しにやってみるか?」
(え……えええっ!? 今? ここで!?)
お兄ちゃんの顔は相変わらずの無表情。
冗談なのか本気なのか、全く読めない。
でも、ここで逃げたら私の負けだ。
逆に余裕の表情で、お兄ちゃんをメロメロにしてやれば実質私の勝ち……!
「……いいよ。じゃあ、する振りだけ、ね」
私は震える指先で、制服のリボンをスルスルと解いた。
「どうした? 暑いのか?」
「……だって、今から『それ』するんでしょ?」
「そっか、そうだな。じゃあ俺も気合を入れるか!」
(なになに、そんなにやる気満々なの!? やばい、逃げられる気がしない……!)
心臓の音がうるさい。
顔がカッと熱くなるのがわかる。
でも、夕日の赤が「保護色」になって、お兄ちゃんにはバレていないはずだ。
「じゃあ、まずは――」
お兄ちゃんが口を開いた瞬間、身体がビクッと跳ねた。
「この『〇〇』の部分を考えないとな。やっぱり王道なのは『謎解き』だよな」
「…………え?」
「それとも『勝負』とかの方が燃えるかな。相手を倒さないと出られない、みたいな。どう思う?」
お兄ちゃんは、この紙を書いた少年の淡い期待(?)を微塵も汲み取らず、無表情で淡々とアイディアを出していく。
確かに「〇〇」としか書いてないけど。空白だけど! そうじゃないでしょ、普通は!
「……し、知らないっ!!」
キスかそれ以上のことしか考えていなかった自分が急に恥ずかしくなり、私はリボンを握りしめたまま教室を飛び出した。
「おい、アンケートの集計は!?」
背後から聞こえるお兄ちゃんの声が、今はただただ恨めしい。 あーもう! 何なの何なのーーっ!!
続く!




