第2話 お風呂で
お風呂の温かいお湯に浸かりながら、私は今後の作戦を練り直していた。
朝の『ノーブラ・ブラウス全開作戦』は、まさかの「パン屑落ちたぞ」という物理的処理によって完全に打ち砕かれてしまった。
(くそぅ、あの無表情お兄ちゃんめ……!)
そんな考え事に夢中になっていたからだろう。
シャワーの音も立てず、お湯に静かに潜っていたせいで――。
ガラッ。
「おっ」
脱衣所の扉が開き、お兄ちゃんが浴室に入ってきた。どうやら誰もいないと思ったらしい。
「あ、わりぃ」
湯船にいる私を見て、すぐさま踵を返して出て行こうとするお兄ちゃん。
(……ここで逃がす手はないわね!)
「待って、たまには一緒に入ろうよ」
私はあえて身体を隠そうとせず、お湯から少し身を乗り出し、小首を傾げて可愛く誘ってみた。
さあ、どうする? 年頃の妹の艶やかな裸体を前にして、顔を真っ赤にして慌てふためくがいいわ!
「そっか。じゃあ遠慮なく」
「えっ!?」
お兄ちゃんは全く躊躇することなく、ごく普通に入ってきて洗い場の椅子に座り、ゴシゴシと頭を洗い始めた。
(え? え? ちょっと待って、そこは少し照れたり戸惑ったりしないの!?)
あまりにも自然すぎる振る舞いに、仕掛けたはずの私の方が逆にドキドキしてきた。
やばい、またやりすぎちゃったかも……!
シャワーを浴び終えたお兄ちゃんが、ザバーッと湯船に入ってくる。
私のすぐ隣で「ふぅーっ」と深く息を吐き、完全にまったりモードだ。
至近距離にいるお兄ちゃん。
私は緊張と変な期待で心臓がバクバクと鳴り、自分の顔がカッと熱くなっていくのがわかった。
ふと、お兄ちゃんがじっと私の方を見つめてきた。
(な、なに……? まさか、ようやく私の色気に気づいて、意識してくれた……?)
お兄ちゃんが、静かに口を開く。
「顔、赤いぞ。のぼせる前に早く上がった方がいいんじゃないか?」
「…………っ(怒)」
「ん? どうした?」
その顔は、ただ純粋に妹の体調を気遣うだけの、微塵の邪念もない曇りなき無表情だった。
「……そうね。先に上がらせてもらうわ!」
私は勢いよく立ち上がると、タオルでどこを隠すでもなく、堂々と見せつけるように脱衣所へと歩き出した。
どうだ、このプロポーション! せめて目に焼き付けなさい!
悔しまぎれに、チラッと後ろを振り返る。
「ふぅー、極楽極楽」
そこには、私の裸になんて一切構うことなく、一人で広々とお風呂を満喫しているお兄ちゃんの姿があった。
「あー、もう! 何なの何なのーーっ!!」
私の絶叫は浴室のタイルに虚しく響き、またしても私の完全敗北で第二回戦は幕を閉じるのだった。
続く!




