斉藤くん
また来たのですか?
"探しもの"とは人生において何度もやってくる面倒くさいイベントである。
「どうしたの斉藤くん?」
授業中、隣の席の斉藤くんがソワソワし始めた。
その様子に心配になった俺は、話しかけずにはいられなかった。
「メガネがね……、どっかいっちゃって」
それは大変だ。
字が見えなくて授業がまともに受けられないのは可哀想だ。
斉藤くんはカバンの中を探し始めた。
俺はキョロキョロしながら、メガネが落ちていないか探す。
「さっきまではあったのに……」
斉藤くんのテンションがどん底に落ちる。
諦めるな斉藤くん。
きっと、メガネはひょんなところから「やぁ!」とか言いながら出てくるさ。
しかし、メガネは見つからない。
狭い教室で授業中という状況で、どうやってメガネは消失したのだろうか。
「あのさ……。メガネ、あった」
やがて、斉藤くんから朗報が届いた。
申し訳なさそうに言っているが、気にする必要はないさ。
よかったよかった。
斉藤くんは続ける。
「俺……、メガネ掛けてたわ」
ほんとだ!
メガネをかけてる斉藤くんがデフォルトだから、メガネが無いって言われても気がつかなかった!
これぞ、灯台下暗し……。
黒板には"大正デモクラシー"について先生が板書している。
俺はノートの隅に"灯台モトクラシー"と書き記した。
大正デモクラシーの件、マジでどうでもいい。




