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いずれ公爵の男爵 〜今度の人生は努力する〜  作者: 三者凡退
幼少期編

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魔道具開発

おくれました。

 「授業始めるぞ—。着席だー。」


 「昨日言ってた自己紹介だが、気が変わったから魔法で紹介しろ。俺はこんな魔法が撃てるって感じで。」


 ローデリックは机に軽く腰を預ける。


 「各自、簡単な魔法を一つ。威力じゃない。“構造”を見る」


 (構造、か)


 「順番は適当でいい。やりたい奴から来い」


 最初に前に出たのは、背筋の伸びた男子だった。


 「レオン・クラウゼル。火属性です」


 短い詠唱。


 掌に小さな炎。


 だが——揺らぎが少ない。


 (安定してるな。回路の繋ぎ方が綺麗だ)


 ローデリックが頷く。


 「悪くない。無駄が少ない」


 次に、眼鏡の少女。


 「ミレーユ・アルトリアと申します」


 水の球を生成。


 透明度が異様に高い。


 (密度……いや、圧縮か)


 「ほう。制御が上手いな」


 数人が続く。


 風。土。雷。


 どれも高水準。


 (さすがSクラス。全員、基礎は完成してる)


 「では、次は私が」


 エドヴァルドが前に出る。


 空気がわずかに張り詰める。


 「エドヴァルド・シグレイン。見ていただければ分かるかと」


 詠唱。


 ——短い。


 次の瞬間。


 鋭く圧縮された氷の槍が空中に形成される。


 しかも、三本。


 (同時生成……しかもこの精度)


 教室がざわつく。


 「ほう。同時処理か。いいな」


 ローデリックが笑う。


 エドヴァルドは一瞬だけこちらを見る。


 「……次は主席がやるべきでは?」


 (来たか)


 前に出る。


 (構造を見る、か)


 深呼吸。


 詠唱。


 掌に火を灯す。


 ——ただの初級魔法。


 だが。


 (ここだ)


 回路の“繋ぎ”を、ほんの僅かに変える。


 出力は抑えたまま。


 流れだけ最適化。


 炎が揺れない。


 静かに、安定して燃え続ける。


 「……ほう」


 ローデリックが目を細める。


 「出力は低いが、構造が綺麗すぎるな」


 (バレたか)


 周囲の反応は薄い。


 だが——


 「……変ね」


 小さく、エリシアの声。


 「魔力の流れ、ほとんどロスがない。それが妙で全く自然じゃない。」


 (やっぱり気づくか)


 「次、私ね」


 エリシアが前に出る。


 「エリシア・ヴァレンフォルド」


 詠唱なし。


 一歩踏み込む。


 その瞬間。


 足元から風が巻き上がる。


 最小動作。


 最短発動。


 (無駄がない……いや、“見えてる”のか)


 「ふむ。感覚型か。」


 数人が終わり、静寂。


 ローデリックが口を開く。


 「いいだろう。全員合格点だ」


 教室を見渡す。


 「だが覚えておけ」


 「お前らの魔法は——まだ“形だけ”だ」


 (形、だけ……?)


 「回路はな、繋げばいいってもんじゃない」


 黒板に簡単な図を描く。


 線と点。


 単純な回路。


 「同じ魔法でも、構造で性能は変わる」


 「そして——」


 一瞬、間を置く。


 「“意味”でも変わる」


 (意味……?)



---


 「さて、本題だ」


 手を叩く。


 「一週間後、魔道具開発だ」


 教室に緊張が走る。


 「ペアで組め。内容は自由」


 「ただし——評価は“構造”を見る」


 「ヴァレリウス。」


 「エリシア。」


 ローデリックが二人を見る。


 「噂で聞いたぞ。お前ら二人、首席次席が組むとは面白いな。」



 ちらりとエリシアを見る。


 「何よ」


 「いや、別に」


 教室の空気が、静かに熱を帯びていく。


 最初の一週間が、始まる。




 「さて、本格的に魔道具開発を始めようと思うの。」


 「そうだね。そろそろテーマとかだんだんと決めないといけないね。」


 「なにがいいかしら。諸々の魔法回路の授業はこの一週間でしてもらったけど。何を作るか決めない限りは何も始まらないものね。」


 斜陽が差し込む図書室の椅子を船漕ぎしながら考える。


 「そうだよなぁ。」


 「じゃあヴァル。あんたが決めて。私はありきたりなものしか思いつかないし。」


 「え、俺が?」


 (魔道具ねぇ。どうせなら。前世にあったやつとかがいいなぁ。武器でいくか、それとも生活が豊かになるものか。)


 「武器にする?」


 「まぁそれしかないわね。1番インパクトがあるしねぇ。」


 (武器でいいなら“あれ”をやってみるか。)


 「じゃあ。作ってみよう。銃を。」


 「じゅう?なにそれ。私そんな武器聞いたことないわよ。」


 「そりゃそうだよ。俺が思いついたんだもの。」


 「ふーん。で。それってどんな武器?」


 エリシアが身を乗り出して聞く。


 「えーっとね。話すと長くなるんだけど。ある筒の中に弾ってのを入れるんだよね。で筒の中で爆発を起こしてその弾ってのを外に弾き出すんだよね。そしてその弾を人に当てたり、獣に当てたりするんだよね。」


 「筒かぁ。面白そう。それにしてみよ。」


 エリシアが好奇的な顔をして答える。


 そうしてエリシアとの銃開発が始まった。




 翌日、実験室。


 「いやぁー。ローデリック先生もいい人だわね。課題のために休日も実験室も与えてくれるなんて。」


 「そうだね。ありがたい。」


 「で、ヴァル。その銃っていうのの基本的な魔法回路は爆発回路が主よね?今回はそれを魔石で作る?それとも自分たちで魔石を作る?」


 「後者かな。今回は爆発の威力調整が肝だから爆発魔石はつくらず自分たちで一から作るのが理想かな。」


 「あんた。さらっとエグいこと言うわね。宮廷魔術師でさえそんなこと簡単にはできないわよ。」


 「まぁね。でもそこらへんはエリシアが詳しいだろうから問題ないでしょ?」


 少し顔を赤らめて。


 「ま、まぁそうね。」


 「じゃあ早速取り掛かりましょう。」


 魔法回路シートを取り出す。魔石を粉々に砕いたものを紙に混ぜた具合だ。


 「あんたが言ってたように今回の回路は威力調整がメインなのよね。」


 「そうだね。」


 「じゃあ一つの機能だけだったら結構行けそうね。」


 魔法回路シートに六角形を魔法回路制作ペンで書く。


 「この六角形に魔力が最終的に注がれる設計にしたいわね。爆発の威力は魔力量に比例するから。減衰回路ダンパーを挟んで魔力を調整しないとね。」


 「そうだね。授業で習ったのは拡散型か蓄積型があったけど今回は拡散型のほうが安全だと思う。」


 「同意だわ。蓄積なんてそもそも魔道具で使われてないものね。魔力暴走の危険があるものね。」


 「どうやって拡散させる?」


 「王道は熱だけど。とりあえず熱で拡散させてみましょうか。」


 そうして六角形に続く線の途中に回路を混ぜる。


 「熱ってことは風と火の混合だよね。」


 「そうだわね。だから、三角形と六角形を混ぜればいいのね。」


 「今思ったけど、三角形と六角形って簡単に三点で接続できるから熱拡散型は便利なのか。」


 「確かにそれはありそうね。属性ごとの相性とかあるのはそれが原因かもね。」


 そして回路が完成する。


 「じゃあちょっと外へ行きましょう。ダンパーには魔力を2000まで減らすように設定しといたから。」


 そうして外へ出る。


 (先客がいるな。)

 

 「おぉーこれはこれはエリシア嬢と首席くんじゃないですか。開発はそいつと順調ですか。エリシア嬢。」


 「あぁエドヴァルドね。まぁぼちぼちよ。あんたたちも試しに来たの?」


 「そうですね。うちは結構威力が強い魔道具なので危険ですのでこうやって外でやってるんですよ。」


 「あらそう。ではまたあとで。」


 踵を返し違うところでやる。

 

 「じゃあヴァル。魔力を流してみて。」


 「え。俺が?大丈夫?」

 

 「今現状魔石もないし。制御はできなくても魔力のコントロールが得意なあなたしかできないのよ。私は体内制御しかできないし。」


 そうして回路に魔力を流そうと手を当てる。


 「エリシア。水魔法の詠唱をしといて。暴発するかもだから。」


 「わかったわ。」


 「じゃあ流すよ。」


 魔力を中級魔術くらいのレベルで流し込む。


 回路が熱を帯びる。ダンパーから蒸気が出る。


 次の瞬間小規模の爆発が六角形で起こる。


 (やった!成功だ!)


 しかしダンパーから変な音がし始める。


 (ん。なんかまずい気がする。)


 ダンパーが赤くなる。


 じわりと。


 まるで内側が焼かれ鉄が溶けてるときのように。


 (...おかしい。)


 蒸気の出方が変わった。


 逃がしているはずの魔力が——


 (違う。)


 (これは魔力の過剰注力じゃない。)


 「エリシア。魔力が減ってない!」


 左手をエリシアに向けエリシアを囲うように防御魔法を展開する。


 「わかってるわ!」


 「これ——減ってない!」


 「...“歪んでる”!」


 (変わってる?...)


 (まずい。)


 反射的に左手をエリシアに向け防御魔法を展開する。


 (よっしゃ。手離せた———あ、間に合わなかった。)


 直後ドカーンと爆発が起きる。


 俺は後ろ二メートル吹き飛ばされる。


 「っちょ。ヴァル!大丈夫なの?!」


 「エリシア、、俺はいいから早く消火と証拠隠滅をお願い。。」


 (やばいなこれ。四肢の欠損の感覚はないけどやばいな。)


 (しかし、おかしい...)


 (ダンパーは確かに働いていた。魔力は減っていたはずだ。)


 (なのに——なんであんな威力になる?)


 (しかもエリシアが言ってたあれって——)


 (俺は逃げずにこの魔道具開発成功させてやる。)


 そこで意識が途切れた。


 「...今のなんだ!?エリシア嬢大丈夫ですか?!」エドヴァルドが駆け寄りながら問いかける。


 惨状を見てエドヴァルドが目を細める。


 「...これは。」


 「“暴発”じゃないな。」

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