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いずれ公爵の男爵 〜今度の人生は努力する〜  作者: 三者凡退
幼少期編

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入学試験

量が多いので一話で容赦を

 実家から馬車を走らせること2日。


 野営だったりをしたが、腐ってもお貴族様なので良い食事を振る舞わせてもらえた。


 そして太陽が南中して数時間立った頃。


「シエル!見ろ。関所だ。これから王都へはいるんだな。」


 「そうでございます。ヴァル様。」


 (これから俺は逃げずに頑張る。挫折もあるだろうけど頑張る。)


 「シエル。今日の王都に着いてからの予定は?」


 「今日は王国が手配した宿で泊まり翌日の太陽が三十度ほど傾いたころに試験が開始されます。」


 「試験の形式はたしか実技と筆記だよな。」


 「左様でございます。」


 「高得点を取ると良いことあるの?」


 「はい。最高得点の方には首席に座ることができます。」


 「わかった。」


 そうして俺達は王都へと入った。


 王都は自分たちの領地とは少し発展している。見たことない商品がちらほら見受けられる。


 しかし、出ている店に変わりは大してない。s

 

 (さて、ここで最低ここで五年間の学校か。どうなるだろうか。)


 (しかし、場所が変わっても努力せねばならないな。)


 (そして、何が王都が違うって言えばあれだろう。)


 目をやった先にはそびえ立つ王城。外壁は白く屋根は赤かったり紫だったりしている。


 (でかいな。)


 



 宿につく。


 (散策に行ってみたいな。)

 

 「シエル。」


 (だめだ。試験前日くらい勉強しないと。不明瞭な点が一つでもあるかもしれない。)


 「なんでしょうか。ヴァル様。」


 「あ、いや。そういえば晩御飯はいつかなって」


 「それならあちらに。日が落ちて月が見えるようになってからと書かれておりますが。」


 「あ、あぁそうだったな。」


 (今更散策しに行ったら明日の試験に支障が出る。俺ってのは恐ろしい。無意識に逃げようとしていた。頭では試験なんて屁だと思っているのに。や、それが逃げなのではないか?あぁーもういい)


 「すみません。シルヴァリオン男爵家、到着いたしましたので部屋の鍵をもらいたいです。」


 シエルは仕事が早い。宿のチェックインを済ませている。


 「シルヴァリオン男爵家ですね。念の為証明となる短剣の鞘の家紋を拝見してもよろしいでしょうか。」


 「ヴァル様。短剣をお借りします。」


 「あぁ。」

 

 シエルが短剣の鞘を受付嬢に見せる。


 「確認できました。では、206号室です。ヴァレリウス様、明日の試験の結果ご武運を祈ります。」


 「ありがとうございます。」


 シエルが何かを疑問に思い口を開く。


 「すみません。どの身分の家も全員こちらに泊まるんですよね?私達以外の方々が見当たらないのですがどこへ?」

 

 「あー。それはですね。多分お部屋でおやすみしてると思います。」


 受付嬢は苦笑いを浮かべて答える。何やら裏がありそうだ。


 (聞き出してみたいところだが、明日もあるし夕食のときにわかることだ。)


 「すみません。つかぬことを聞いてしまい。では、私達はこれで。」


 「ヴァル様、行きましょう。」


 206号室の鍵を開け中に入る。


 ベッドが二つ。どうやら、王都に滞在する人数まで把握しているようだ。もしくはみんなベッドは二つなのか。


 「しかし、まぁ。なんとも貴族をお粗末なところに泊めさせるものだねぇ。王国というものは。」


 シエルに問う。


 「それは多分、多くても二泊しかしないからではないでしょうか。後、これくらいの宿で文句を言わない技量を推し量っているのかもしれませんね。」


 「確かにそれはあるな。要するに今から試験が始まっている可能性があるわけか。気をつけよう。」


 「そうですね。私もヴァル様の顔に泥を塗らないように頑張ります。一応、護衛兼使用人としてきたわけですので。」

 

 「ありがとな。」


 


 夕食の時間でロビーに降りてくる。


 夕食会場はロビーの奥にある。


 そこへ向かうと用意された机の数が少なく思えた。


 (なぜ、こんなに少ないのか。封建国家の家の子供が全員今日ここに集まるんだぞ。足りるような気が全くしないな。)


 そんな疑問を抱きつつ受付に206号室のシルヴァリオン男爵家が来たと言い、テーブルに案内してもらう。


 (まるで、合宿だな。)


 奥に厨房手前に小さな円卓が無数に並べられそれぞれに椅子が二個ある。


 (すごいな。まじで二人で来ることを想定してるな。公爵家のぼんぼんは使用人が多くて大変だろうな。)

 

 淡々と食べ、最後の紅茶に差し掛かるところで挨拶と名前交換が始まるかと思ったが、どうやらそういうこともないようだ。周りをきょろきょろ見回す。


 焦燥、不安。そんな顔が見える。


 (1番余裕そうな顔をしてるやつはどこだ。多分だが、ここの社交は評価の一部だろう。あ、いた。一人立って俺と同じようなことを考えてるやつが。)


 (すごい顔だな。あれは、努力を発揮する前に見せびらかすタイプのうざいやつだ。避けよう。)


 また、あたりを見渡す。


 目が留まる。

 

 そこには気丈に紅茶を飲む青みがかった銀髪の少女がいた。


 気丈に振る舞っているのかはわからないが、周りをきょろきょろと見ている。


 (なんだ。あいつ。おもしろそうだな。)


 (話しかけてみるか。)


 「シエル。ちょっとあの子に話しかけてくる。」


 小声で耳打ちする。


 「構いませんよ。一緒に行きましょうか。」

 

 「いや、大丈夫だ。」


 そう言い残し、椅子をぎーっと動かし立つ。


 自慢したげな少年の少年の視線を感じるが、構わない。


 少年はどんどんと近づいて来る。


 その前に俺は気丈な少女に話しかける。


 「失礼。お嬢さんお名前は?」


 「あなた。試験前夜に女の子に話しかけるなんていい度胸してるじゃない。私に話を聞くより後ろに話を聞いてほしそうな男の子がいるから、そちらに聞けばよろしいのでは?」


 「失礼。先に名乗るべきでしたね。私はヴァレリウス・シルヴァリオン。男爵家の嫡男です。」


 「あら、そう。まぁ、名乗られちゃったからこちらも名乗るけど。エリシア・ヴァレンフォルドよ。子爵家三女。ほら、用が済んだらさっさと戻るかその子の自慢話に付き合いなさい。」


 「お名前をおしえてくれてありがとうございます。ではまた明日、試験会場で。」


 (大分気の強い女だ。子爵家三女と言ったな。身分的には俺より下だが、あれは相当な自信だな。何か異能でもあるのだろうか。)





 部屋に戻りシエルと問う。


 「あの食事会場、人というか円卓が少なかったね。」


 「そうですね。シエル。あそこにいた人たちの身分は全員子爵か男爵の子供でした。」


 「やっぱりか。伯爵以上の身分は今頃、別会場と別宿でパーティーか。悪くない。下剋上してのし上がるのは楽しいだろうな。」


 シエルはそれを聞いて聞かないふりをする。

 




 明朝、早めに支度を済ませシエルと一緒に試験会場へと向かう。


 (多分いつ来たかも評価の対象だろうな。)


 「ヴァル様。では私はここで。」


 「あぁ。試験中暇かもだから手が空いたら王都の情報集でも適当にしといてくれ。特に貴族の話とか。」


 そして試験会場である王都魔法学園の城壁をくぐり抜ける。


 三十分ほど魔術書を読んで待っていると一人の少女が待合室に入ってきた。


 昨日話したエリシア。青みのある銀髪を靡かせている。


 「あら、また会ったわね。」


 「そうみたいだな。」


 沈黙が待合室を支配する。お互い少しの緊張を鎮めるのに必死なのだ。

 

 


 一時間もすると試験受付が始まった。待合室で並んでいた順から受付が開始されるわけもなく王家の人間から身分順に受付が始まる。

 

 受付を行い、指示された部屋へと向かい指示された机につく。まずは、実技だ。


 何席か空いていたが大方、領内で問題かここで問題が起こってここにたどり着けなかった者たちの席だろう。


 「試験はじめ。」


 (うわ、まじかよ。心配して損したわ。簡単すぎる。)


 試験問題は魔法についての基本知識を問われるだけの簡単な問題が載っていた。


 着々と解き、最後の大問に差し掛かる。


 そこには魔法回路が書かれていた。


 (やば、まだ完全には理解できないんだよな。)


 しかし、幸いにも魔法回路は大して複雑なものではなく、それぞれの機関が何かを答え魔力の流れを答えるだけの問題でとても簡単だった。


 復習と名前を紙に穴が空くほど確認し三周目にさしかかった頃に合図が合った。


 「試験やめ。筆記用具をおいて、前に回せ。」


 「次は実技試験に参る。」


 場所を変え練習場。


 「これから試験番号順に自分が撃てる最大の魔法を放っていけ。」


 各々は初級の魔術だったりを詠唱して放っていく。


 「次、エリシア・ヴァレンフォルド。」


 「はい。」

 

 「冷徹なる氷の恵みよ、我が槍となり相手を射抜け。アイシクルランス!!」


 会場がどよめく。なにせ初の中級魔術だからだ。


 会場が落ち着く頃に俺の名前は呼ばれた。


 「次、ヴァレリウス・シルヴァリオン。」


 「はい。」

 

 右手を出して魔力を込める。


 (あ、やばいこれまた、すごいことになる。)


 「試験官。少しスペースを作ってもらえませんか?」


 「それはつまり、すごいのを放つからスペースがいると。いいが、これで初級だったっら嘲笑の的だぞ。それを覚悟しているのだな。」


 「はい。」


 「ならばよろしい。」


 試験官がスペースを作る。


 「では。」

 

 右手に力を込める。


 (ここで使うのは俺への戒めと成果の発揮だ。)


 「インフェルノ・ヘル。」


 たちまち円の範囲が火で囲まれ、火柱が複数本立つ。


 (よし。威力も抑えられたし、ちゃんと火柱の本数も場所も制御できた。)


 会場がどよめく。


 「ちょっと。君!!そんな事するだなんて聞いてないぞ。しかも上級火魔術を無詠唱で!!」


 「はぁ。被害がでなくて本当に良かった。それでそれが君の最大かい?」


 「まぁはい。」


 頭を下げながら言う。


 会場の生徒はヒソヒソと話を始める。


 そんな中から一人の少女が声を上げる


 「その子はまだ最大を出していない。わたしのスキルがそう言ってる。」


 試験官がそれに耳を傾け俺に問う。


 「あれは本当なのかね?」


 苦笑いをして。


 「はい。まぁもうちょっと上級の魔術を出せますかねぇ。」


 驚いた顔をする試験官。


 「では、や、やってみなさい。被害は考えなくていいので。」


 「良いんですか?あ、でも魔力切れ起こすかもしれないので。」


 「その場合はわたしが責任持って処置する。」


 「ありがとうございます。では、的をすべて破壊しますね。」


 「へ?」


 間の抜けた声を出す試験官に構わず魔術を放つ。


 「インフェルノヘル・ブレード。」


 するとすべての的の下に炎が立ち上り的を切り刻む。その断面は着火されている。


 「一応、これが今出せる最大級の工夫した技です。火力を求めるならもっとできますが。ちょっと魔力がヤバそうなんで。もうやめときます。」


 「そ、そうか。では戻ってくれ。まったく、的がなくなって困るよ。」


 「では、次。」


 会場はどよめいている。というか、まるで畏怖しているようだった。一人を除いて。


 


 試験が終わり待合室で結果発表は明日だと説明を受け帰ろうとする。


 「待って。ヴァレリウス。」


 「エリアス嬢。どうかしましたか?」


 「あんたに話がある。」


 そして俺は待ち合い室の隅に連れて行かれた。周囲が羨ましかったり畏怖の視線を向ける。


 「ヴァレリウス。」


 「...途中で止めてる。」


 「魔力出し切ってない。」


 「な、なんのことかな?」


 「やっぱり、見間違いじゃないみたいね。」


 「何だよいきなりまるで人の魔力の動きがみえるかのように言いやがって。」


 「ええ。わたし見えるのよ。魔力。」


 「え?」


 「わたし魔力の流れが見えるのよ。」


 「あ、そうなんだ。でも、僕は自分で止めたりなんかはしてないよ?」


 「バレバレな嘘よ。あなた優秀っぽいけど魔力制御は素人よりできるくらいね。ただの火力脳筋だわ。」

 

 「あん?」


 (よく言う。)


 「ん?図星みたいね。」


 「あぁそうだよ。俺はわざと魔力を使って魔力を抑え込んでるんだ。なにか悪いか。」


 「えぇ。悪いわよ。だって魔力を効率よく使ってないもの。」


 (くそ。なんで全部当ててくるんだこいつは)


 「そうか。そうだな。じゃあ。また、明日結果を見ようぜ。」


 踵を返して出口へ向かう。


 「ちょ。何よ。他人がせっかくあんたに気づかせようとしてるのに。」

 

 「もうとっくに気づいてたよ。俺が魔力制御が下手くそでお前のスキルじゃなくて魔眼だということも。」


 そう言い残してシエルと帰る。




 その晩、宿で。


 (...途中でやめてる...か)


 (しかし、確かに俺は魔力制御が下手くそだ。もう三年も頑張ってやってることなのに一向にうまくならない。仕方ない。)


 (や、だめだ。あの女に言われた通りだ。ちゃんとこういうところも努力して修正してかないといけない。俺は逃げない。)

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