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いずれ公爵の男爵 〜今度の人生は努力する〜  作者: 三者凡退
幼少期編

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制御できない力

本当に遅れました。すみません。

 あれから五年。


 図書室の一部の壁を魔法で爆発させたりして怒られたりして色々とあったが、俺は逃げずに色々とたくさん積み上げてきた。

 

 その結果、言葉も話せるようになったし、家に下段の方に置いてある魔術書の内容はすべて理解した。惜しみなく努力した。


 (だけど、まだ足りない。)


 本棚の手の届かない場所にある魔術書を見上げる。


 「はぁ。今日も頼むか...」


 「シエラ。あそこの本頼む。」


 棚の上から二段の黒く古い重厚感のある本を指差す。


 「ヴァル様。かしこまりました。」


 そう言って短く華奢な足が少し伸びて本を取る。


 「どうぞ。」


 「ありがとう。シエラ。」 


 今になっては五年前には禁止されていた図書室での読書も公認だ。


 翌日。


 「シエラ。今日も図書室についてきて。」


 「構いませんがその前にお父様がお呼びです。」


 「父様が?なんで?」


 「どうやら王都の学校から来年の今頃に行われる魔術、武術の適正検査の召喚状が届いたらしいのでそれの報告と説明です。」


 「わかった。シエラ、父様はどこに?」


 「書斎でございます。」


 そうして書斎へ向かう。


 「父様、シエラに言われて来ました。」


 「おぉ。入ってくれ。ヴァル。」


 シエラが黒い両開き戸を開け二人入る。


 「失礼します。それでシエラから聞いたんですが召喚状?ですか。」


 「そうだ。召喚状だ。来年、腐っても男爵家の嫡男としてのお前は王都で学校に通って教養を身につけることになる。ちなみにこれを断ることはできない。教育という名の人質だからな。この封建国家において貴族の子供の人質は大事だからな。」


 「そうですか。で、なぜ別にそれだけなら報告だけでいいと思うんですが。」


 「そうだな。それでだ。男爵家の出だと何かと不自由があって色んな人からいじめられたりするかもしれない。だからこれから一年間家庭教師をつけてもらうと思うんだ。ちなみに魔術メインでついでに歴史や算術をおしえてもらえるぞ。」


 「そうですか。じゃあ家庭教師、お願いします。図書室で得られることは少ないですしね。」


 「じゃあ。もう決まってるから。明日から開始だ。」


 「え、もしかして。」


 「あぁ。もとよりお前に断る権利はなかったんだがな。ははは。気にするな。」


 「ははは。そうですか。では失礼します。」


 (まじかよ。この腹黒親父め。)


 書斎から出る。


 (家庭教師、どんな人かなぁー。)


 



 明朝。


 「ヴァル様。家庭教師の方がお見えです。」


 「そうか。シエル。今行く。」


 正装を羽織って扉を開け廊下に出る。


 応接間。


 「今回一年間、ヴァレリウス様の家庭教師を勤めさせていただきますジーターでございます。70歳と老いぼれですが、魔術は一級品ですぞ。」


 「ジーターさん。はじめまして。ヴァレリウス・シルヴァリオンです。一年間、ご指導御鞭撻のほどよろしくおねがいします。」


 「すごいですね。その若さでそのような大人ぶりは。これは、指導も変えないとですね。」


 そうして、ジーターの指導が始まった。


 王都からの召喚状とは言ったものの今回は試験を行い、受かれば早めに入学でき早く卒業することもできれば研究に費やすこともできるらしい。そして今もそれのために勉強を行っているのだ。


 「ヴァル様。初回の授業は詠唱の暗記です。私が言ったことを復唱してください」


 「神聖なる生命の源よ。それをかのものに向けて撃て。ウォーターボール。」


 すると手のひらから水の玉が生成され的へと向かっていき的に当たった瞬間弾ける。


 「では、やってみます。」


 「神聖なる生命の源よ。それをかのも、うぐ。」


 舌を噛んでしまった。


 (いてぇーー。舌が切れるーー。)


 「先生。舌を噛んでしまったようでふ。」

 

 「へんへい?」


 「ヴァルくん。もしかして君は無詠唱で魔術を撃てるのか?」

 

 「え?あ、はい。撃てますよ。」


 「本当ですか!!王国で10人にも満たない器がここに!」


 「しかし、私は昔、制御ができず自らの魔術で死亡した無詠唱魔術師を見たことがあります。ヴァル様、魔力を体内で無理に巡らせると暴発を起こす可能性があります。扱いには気をつけないと王国は最悪あなたを敵とみなし処罰しますぞ。」


 ジーターは顔を無表情にして俺に行ってくる。どうやらマジらしい。



 

 その日の授業が終わり、ベッドに入る。


 「まさか。舌を噛んでしかも無詠唱が珍しいだなんて。思ってもいなかったわ。」


 手のひらを頭の上に持ってくる。


 「しかし気をつけないとなぁ。制御には。簡単に死んでしまっては困るし。」


 まるで手のひらに言い聞かせるようだった。


 眠りにつく。


 


 明朝。


 「この老いぼれジーター。ヴァル様を見誤っていました。これからの指導はもっと高度なものにします。これからは厳しいですぞ。」


 「へ?」


 


 ある日、いつも通り魔術の練習に興じようとした。


 (さて、今日は初めての上位魔術の授業だ。頑張るぞ。)


 「今日は火の上級魔術。インフェルノを教えます。」


 「はい。」


 「危ないので場所を変えましょう。」


 屋敷の土地を出て山の麓にある岩場で授業は始まる。


 「昨晩、座学で教えたイメージでやってみてください。私には無詠唱で撃てないのでこれくらいしか言えませんが。」


 「わかりました。では、」


 「インフェルノ。」


 そう呟くと手のひらを向けたところに円形の火が出現する。


 (よーし。まずは最初の段階は行けたな。じゃあ次は炎の柱を出すとこだ。)

 

 炎の柱をイメージする。しかし、イメージしてしまったのは範囲の円、ほぼ全てを満たすような柱だ。


 (ヤバ。)

 

 次の瞬間、火の柱が円の範囲すべてから火が吹き上がる。まるで地獄のようだった。

 

 出力を誤った火の柱はまるで天まで届くようだった。


 インフェルノが打ち終わった後、円の範囲内は地獄のようだった。


 (やってしまった...火の柱を小規模で五本立てるつもりだったのに。)


 (あ、やばい視界が。息ができない。なんでだ。)


 (あ、魔力切れか。くそ、こんなところ...で...)


 「ヴァルくん。君は規格外です。」


 その後はジーター先生が背負って帰ってきてくれたらしい。


 夜のベッドに入る。


 (悪いことしたなぁ。あんな老人に運ばせるなんて。さっき謝ったら「もう老いぼれですが老いぼれではないですぞ」とか言うし。でも、ありがたい。)


 (でも、魔力切れは二度と起こさない。今回はなんとかなったが戦闘中にあれが起こったらもうおしまいだ。怪我だけでは済まない。確実に殺される。これがジーター先生が言ってただめなことか。)


 それからというもの毎日、ジーターに魔力制御のイメージを暴発防止のためにたくさん説かれ、魔術を覚えてきた。水、火、風、土そして神聖魔術は母から。算術の方は前世の昔の記憶が呼び覚まされ、ジーター先生は指導を諦めた。


 (二人にしごかれる毎日。しかし、この生活は悪くない。前世の戒めから解放される気分だ。)


 


 幸せな日常には必ず終りがある。


 今日は俺の王都への出立の日だ。様々な魔術や作法を学んだ俺はもう年齢以外を除けばそこら辺の大人と遜色なくなっていた。


 「このジーター。ヴァルくんの指導を魔術人生の最後にできてとても嬉しかったですぞ。」


 「はは。いつもジーター先生はオーバーですね。僕くらいでそう思えてくれたなら嬉しい。」


 「ヴァルちゃん!王都へ行っても泣かないでよ。自分で頑張ってね。後、いじめられたらちゃんと先生や私達にも言うのよ!あぁぁー寂しくなるわ。」


 そう言って母は俺に抱きつく。


 「ちょ。母様。母様も母様でオーバーですよ。たった五年で返ってくるのですから、大丈夫ですよ。」


 「そんなことないわよ。母親としては1番そばで見てあげたい五年間を奪われるのだから悲しくて仕方がないのよ!」


 「そうだよ。ヴァル。母さんはお前との別れも悲しんでいるがそれ以上に成長を1番見れる時期を逃してるんだ。それにその言葉はちょっと良くないぞ。」


 「そうですか、父様。すみません。母様軽率な発言をしてしまい。」


 「いいのよ。いいのよ。子が親から離れたがるのは当然のことだもの。」


 「母さん。ほらそこら辺でやめなよ。そもそも、僕の目にはヴァルはある程度成長してるように映ってるよ。」


 「そ、それもそうね。ぐすん。」


 母は鼻をすすりながら涙を拭う。


 「では、みなさん。行ってきます。ジーター先生、母様、父様。」


 そう言い残し俺は馬車に乗る。シエルは俺が乗った後、両親に頭を下げ乗り込む。


 全員が乗った後、馬車の鞭が打たれる。馬が鳴くと馬車が進み出す。


 (この世界に来て六年が経った。俺は多分ちゃんと後悔のない逃げない人生を送れているはずだ。)


 (逃げたら終わる。本当に終わる。)


 (俺はこれからも頑張る。逃げないように頑張る。逃げない。)

明日は一話、できれば2話更新で行きます。感想とリアクションお願いします。


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