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いずれ公爵の男爵 〜今度の人生は努力する〜  作者: 三者凡退
幼少期編

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赤ん坊は懲りずに屋敷を探索する

2話更新です。

 転落未遂事件から三カ月後。


 俺の体は首が座り、ハイハイもできるようになった。


 そして、ハイハイで金持ちの豪邸の中を縦横無尽に駆け回る。

 

 それも、すごいスピードで。


 「ヴァル様ー。どこですかー?」


 そんな声が突き当りを曲がった角から聞こえる。


 (ざんねーん。君には俺は見つけられないよー。)


 そして、来た道を戻る。


 しかし、振り返った瞬間、そこには仁王立ちをして佇み腕を組む母がいた。


 「ちょっとー。ヴァルちゃ~ん。」

 

 甘い声をかけてくるが顔が笑っていない。


 (やば...。に、逃げろ!)


 お尻を向け逆方向にハイハイする。


 「こら!待て〜。」

 

 そう言ってワンピースを揺らしながら追いかけてくる。


 小回りの効かないことを知らない母は俺に一直線で向かってくる。


 人が後人横に並んでもスペースができるほど広い廊下。


 (そこだ!!)


 右に少し体重を入れ、すぐに振り返る。そして、母が少しよろけた方向とは逆の方向へ進む。


 (よっしゃかわせた。)


 「ヴァル!!」


 声を少し荒げながら追う母を後ろに逃げる。


 「もう。仕方ないわねぇ。」


 そう言って母は右手を上げ手のひらへを俺の方へ向ける。


 それはこの世界に転生してから何度か見た詠唱の合図だ。


 (やば。それをされたら——)


 「神聖なる大地のめぐみよ。かの逃げしものを拘束せよ。リストレイント。」


 そう言うとたちまち浮かんでいた土の塊から木の幹のようなものが出てきて俺の胴に絡みついて宙に上げた。


 「っほら。つーかまーえた。」


 「ぶぅ。」


 そんなことを言う俺に恍惚とした表情を向ける。

 

 「そんな悪い子にはこうしてやるーー。こちょこちょこちょ。」

 

 (やめろ、くすぐったい)


 「ひゃひゃひゃ。」


 「あ、奥様。ヴァル様見つかり、あ。」


 そんな会話を聞いて母と使用人は俺を俺の寝室に連行した。


 「じゃあいい子にしててねぇ〜。」


 そう言って寝室のドアを締めた。


 (ちぇ。今日も捕まった。)


 そう言ってベビーベッドの上でごろんごろんと寝返りをする。


 ドアの奥から声がする。耳を澄まして聞く。


 「奥様、あれは赤ん坊のする動きではないです。まるで、考えながら動いてるようです。」


 「そうね。わたしもフェイントをかけられたときは驚いたわ。あれは、ひょっとしたら天性のそういう才能があるかもしれないわね。」


 「そうですね。そういうのがあってもおかしくないです。」


 「そうよねぇ〜。なんてったってあの子は私とあの人の息子だものぉ〜。」


 とんでもない溺愛っぷりである。


   


 今日も脱走中だ。そして、今もまさに追われている。


 「ヴァル様!お待ち下さい!」


 (くくく。そんな単調な動きじゃ俺は捕まえられないよ。)


 毎回意味もなく脱走しているわけではない。今日は魔術書を読みに脱走しているのだ。


 一度図書室に入れば大の大人の目を掻い潜って本を読むことなんて朝飯前だ。


 (もう少しだ!)


 前方10メートル。そこには図書室の重厚感ある黒い扉がある。


 「ヴァル様!」


 (9、8、7!)


 段々と狭まる扉との距離。


 (3,2,1!あ!)


 「捕まえましたよ!ヴァル様!」

 

 (クソ〜。この使用人めー。)


 (こんなところで諦めてたまるか!俺はこの世界で逃げずに努力するって決めたんだ!)


 四肢をジタバタさせて拘束を解こうとする。


 しかし、使用人は俺の胴をガッチリとつかんでいる。


 「こら!ちょ、暴れないでください!」


 (ふふ。そっちはそっちで俺は割れ物だからな...乱暴には扱えないよな...笑)


 なんとも小賢しいガキである。


 しかし、使用人とその腕を動かさずしても離さないという意志は手の握力からもうかがえる。


 (俺は!こんなところで諦めない!絶対に逃げない。)


 「あ゙ああーー。」


 「泣いても無駄ですよ。」


 (そうだよ。お前の同情を誘ったわけじゃない。)


 すると、どこからともなく。


 「ヴァルちゃん!どうしたの?!」


 母のお出ましである。


 「は、はい!奥様!」


 使用人はその声に少し驚いたのか変な声を出し手を少し脱力させてしまった。


 (もらった!!)


 そして俺は図書室の半開きのドアをするっとくぐり抜け中に入る。


 本棚の合間を縫って使用人と母を巻いていく。


 魔術書の本棚の隅の本と本の隙間に隠れる。


 「奥様。すみません。にしてもどこに行ったのでしょうか。」


 「そうねぇ、あっちを見てみましょう。」


 そう言って母が指した方向へと探しに行く一行。


 (しめしめ。ようやく巻けた。)

 

 本と本の隙間から出てきて読みかけの魔術書を開く。この世界の公用語は日本語とは違う。単語がわからない。読むのは中々に難解だ。


 「にしても、あの子はすごいわねぇ。大の大人を躱した上に本まで読むなんて。」


 「はい。そうですね。言葉がまだ理解できてないはずなのに。」


 「ひょっとしてもうすでに?!」


 「奥様。夢見すぎです。」

 

 「そ、そうね。」


 「自分の子供が特能の持ち主だと思うのは構いませんがあまり度が過ぎないほうがよろしいかと。」


 「わ、わかってるわよ。」


 (まぁ。あながち間違えではないけどな。)


 魔術書のページを捲る。様々なことが書かれている。しかし、すらすらとは読めない。


 この世界でもたくさん本を読んでいろいろと学習してきたが、専門書になるに従って読めなくなってくる。


 (読めないなぁ。やっぱ俺にはまだ早すぎたんかな。)


 本の表紙に左手を当てて閉じようとする。

 

 (だめに決まってる。読めないって理由で逃げちゃだめだ。


 (読めないなら覚えてけばいい。)


 (わからないならわかるまでやる。前世の勉強と同じだ。)


 (そしたらいずれ読めるようになる。)


 (俺は努力する。)


 (二度目の人生だ。———逃げない。)

明日も多分2話更新です。



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