犠牲
今回はちょっとグロいです
リボルバーを構える。
「ヴァル様。なんですかそれは。」
「まぁ見てろって。」
次の瞬間ドンと森が響く。
魔獣は大声を上げて傷みを体現する。
(ちゃんといけてるな。)
撃ち抜いたのは足の筋肉、人間では太ももにあたるようなとても移動に大事な筋肉。
「さぁて。次はぁ〜?」
(まぁこれで撃退できるだろう。馬とかも銃声で驚いて逃げるからな。)
そんな淡い期待があった。
「ガウ!!!」
狼の姿の魔獣は血相を変えて突進してきた。
「ま、まじかよ。」
ドン、ドン。
「くそ!まずいな。」
右手を向け魔術を放とうとする。
(やば。)
魔力を込めようとすると眼の前にいるはずのない魔獣がいた。
(やばい。これは死ぬ。)
焦りを感じながらも咄嗟に魔力を込める。
魔獣が遅く動く。
(あぁ。走馬灯か...。)
(だめだ!こんなところで負けてしまっては俺はもっと後悔する。どうにかしてこの状況を回避しないと!!)
無常にも魔獣はスローで近づいてくる。
(も、もう。——。)
(痛い。痛い?)
(痛くない。なんでだ。)
恐怖で瞑った目を開けるとそこには魔獣に噛まれて蹲っているシエルがいた。
「ヴァル様早く、、、後ろの方へ、お逃げください。」
思考がとまった。どう動けばとか何が最善だとか何をすれば人に被害が咥えられるとか考えられなくなった。
(っは。なんでだ。)
「なんでだよ。なんでお前がシエルを...。
死ね。」
言葉を発するよりリボルバーを持った手が動いた。
ドン、ドン、ドン。
(脳、心臓、そして大動脈。)
「どうだ!苦しいだろ!!」
「グワー!!」
周りには魔獣と一匹ずつ接敵して戦闘している兵隊とガルド。
しかし、そんなのとは裏腹に森からは大量の魔獣が湧き出てくる。
「ギュワーーー!!」
悶える魔獣を横目に襲いかかってくる他の魔獣。
「遅い!!」
上げた右手から氷槍を五本出して最大出力で魔獣の体と頭を貫く。
「お前ら。俺のシエルを傷つけたからには覚悟はできてるんだろうな。」
そんな誰にしているかもわからない問の答えを待たず、直上に向けて右手を掲げる。
(何を放とうか。インフェルノでもいいな。あ、でも...。)
「さぁ構えろ。」
「降氷槍柱!」
半径100mにいる魔獣から発せられる魔力の直上に氷柱が出現する。
氷柱は重力に逆らえず、落ちていく。
「悶えろ。」
魔獣を脳天から貫いた氷柱はそれだけでは終わらない。
「枝氷!」
貫かれた患部から氷の枝がメキメキと伸びる。それは魔獣の肉や組織を裂いていく。尿結石が全身にあるような傷みが全身を襲う。
「お前らがやった罪はこれだけでも代えがたい。」
「お前らの後ろにいる黒幕も始末しなければいけないな。」
森の奥からガサっと音が立つ。常人なら聞こえるはずもないような音は今の怒りに覚醒したヴァルの耳に入る。
「そこだな!!インフェルノ!!!」
直後。森の一点から炎の柱が立つ。半径は10m回避のしようがない。
「やったか。」
振り返ると魔獣が噛みかかってくる。
「クソ!邪魔だ!」
エアスラッシュで首を切るが未だに次から次へと襲いかかってくる。
「きりがないな。」
おもむろに部隊の中心があった方向をみる。
そこには倒れている兵士10名を取り囲むように守る兵士が5名。そこにはガルドもグラースも含まれている。
もっと悲惨なことはその円の外側には兵士の死体が噛みちぎられ食われているということである。
「や、やめろ!」
咄嗟に食っている魔獣の上に氷柱を出現させ貫く。
(なんでだ。やっぱり躱されたか。もっと正確に、確実に当てて殺さなくては。)
「まずい。気を取られてしまった。」
シエルを中心に魔獣を掃討していく。
「そうだ。魔力探知メガネ。」
懐から取り出したのはエリシアと酸年かけて開発した魔力探知メガネ。そのこうかは魔力の種類と魔力量の測定だ。
(さて、どんな感じかな。)
そこに書かれていた魔力の種類は今までに見たことないものでしかも魔力量が半端ない。
(まずいな。相手が悪い。俺は死ななくてもシエルと他がどんどん死んでいく。)
「とりあえず。本体を叩きながら掃討だな。」
(幸いこちらには探知できる魔術師、俺がいる。)
「インフェルノ。」
小規模の火がシエルとヴァルの周りに出現する。
(時間稼ぎはできた。制限時間は三秒。これで見つからなかったら次のチャンスはいつだろうか。)
「魔力探知。」
(エリシアに教えてもらった技がここで活きるとは。生きて帰ったら感謝しよう。)
半径、1km、2km、3km。範囲をどんどん増やしていく。
「いた。」
明らかに魔獣の魔力の種類と違う魔力、しかもさっき森の奥にいたのと同じ。
(やりきれてなかったか。)
(今回は容赦しない。)
(こっから6km離れているのか。じゃああれが使えるな。)
「アルティメットメテオ。」
上空に巨大な岩の塊が出現する。全長1kmだ。
(並の術師ならこれで殺せるはずだ。)
「そのまま叩き潰してしまえ。」
隕石は発動者に向かって一直線に墜落していく。
——
ドーン。
地響きが起こり衝撃波と粉塵が舞う。
(どうだろうか。)
魔力探知を発動しようとしたが、周りの魔獣が姿を消し始めた。
「どうやら探知するまでもなさそうだな。」
——
激動からの収束。
「シエル!!大丈夫か。」
「はい。大分失血しておりますがまだ命に別状はございません。」
そう言って噛みちぎられてプランプランの腕を見せてくる。
「とりあえず、気休めで失血の治癒魔術と包帯を巻く。その後、他の隊員の処置に向かう。」
「ヒーリング。」
シエルの腕は骨が剥き出しになりながらも失血は完了した。
包帯を巻いて他の隊員のところへと向かう。
(しかし、シエル。大丈夫だろうか。後で帰ったら高位のち湯魔術師に頼むか。)
「父さん。被害は。」
「ヴァル。生きててよかった。被害は15人生存者俺、シエル、お前を含めて6人だ。壊滅だ。」
「負傷者は。」
「あそこだ。」
指された先にはグラースの姿はなかった。
(グラースまでも...。)
「応急処置が終わり次第帰還を急ぐぞ。1回襲撃にあったらそれ以降はないことはデータでわかっている。処置は俺がやる。お前は土魔術で地面を掘り起こして遺体をそこに入れ火魔術で焼いて土を被せて弔え。」
「はい。」
(心が傷むなぁ。)
——
一連の後。帰路。
「ガルド・シルバリオン。帰還致した。遺品と鉱山搬出物を持ってきた。」
正門が開いて使用人などの様々が戦利品の整理と遺品のチェックを行う。
皆暗い顔をしている。しかも誰も声を発さない。いや発せないのだ。
——
コンコン。
「父さん。よろしいでしょうか。」
返答はない。
(そりゃそうだ。父だって参ってるはずだ。)
先程何度かこの部屋の前を通ったが嗚咽とペンが走る音が聞こえた。
報告書の制作は彼にとっては屈辱と悲しみを綴っているようなものなのだろう。
完成し見せられた負傷者のリストにはシエルの名前がもちろんあった。
そこには右腕橈骨筋粉砕損傷と書かれたいた。
過去に症例がないのかとても不自然な診断内容だった。
(頼むよシエル。この報告書が嘘であってくれ。そうであっても魔術師が治癒してくれるはずだ。)
——
「ヴァル様。シエルさんの処置が終わりました。」
「そ、そうか。」
早歩きで使用人の後をついて行く。
扉を開ける。
そこには横になっているシエルがいた。肝心の腕は布団に隠れていてよく見えない。
「し、シエル。だ、大丈夫なのか。」
「あ、ヴァル様、先日のご活躍素晴らしかったですよ。」
何事もなかったかのように微笑む。
「そんなのはどうでもいい。そ、その腕はだ、大丈夫なのか。」
「どうでも良くないですよ。腕は、、そうですね。ちょっと肘より下が動かなくなったくらいで平気です。」
「——。」
(そ、そんな。)
「で、でも。こ、高位な治癒師がま、魔法でなんとか、、、してくれるんじゃないのか?」
使用人が一歩前に出て言う。
「それは不可能でございます。貴族でない人間がそのような施し、しかも我が領内にはそのような者はいません。ので、極秘裏になどできないのです。」
「う、嘘だろ...。」
「嘘ではございません。」
「あ゙ぁぁぁぁぁあーーーーーー。」
泣き崩れる。
「なんでだ!!!なんでこうも!!!!俺ばかり、苦労して!!!」
「落ち着いてください。」
「落ち着いていられるか!!1番の使用人、生まれてからおしめの交換、何もかもをしてもらったの使用人の右腕がもう残りの一生、使えないんだぞ!!お前こそ何淡々と話していやがる!!」
「そ、それは確かに気の毒ですが...。」
「ははは。もういいよ。」
そう言い残し部屋を後にする。
(もういい。異世界なんて、シエルなんて魔法なんて。なにもかもどうでもいい。なんで積み上げてきたものが、努力していたはずなのに...。なんでだ...。なんでこんな仕打ちに。)
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