間話・はぐれ龍
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それはルートレット領に向かっていたときのことだった。
順調に進んでいて王都を出てから二日目の野営。
基本的に見張りは馬車の乗組員で交代制だ。1時間毎に一人もしくはペアで。
俺は未熟な子供だと思われたのか同伴者であるシエルとの持ち回りになった。
「おい。お前ら。順番だ。」
男がテントを開けて言ってくる。
「はい。わかりました。」
寝袋から起き上がり着替える。
「あぁ。ちなみにお前らは二人でしかも死神がいるんだから夜が開けるまで見張りをしといてくれ。」
(ッチ。こいつら。味を締めてやがるな。ルートレット領についたら覚えてろ。)
「ははは。はい。じゃあわかりました。そういうことで。シエル、行こ。」
「いいのですか。」
シエルの両腕に力が入るのがうかがえる。
その腕を掴み外へと連れて行く。
森の奥に入った頃。
「本当によろしかったのですか。あんなのはすぐに私であれば殺すことも可能ですが。」
「確かにシエルだったらできるかもしれない。でもそうした場合、後に俺がシルバリオンの子息とバレたら面倒なことになる上にもし失敗したらこれ以上のないほどの嫌がらせを受ける。従順な方が相手は楽しいと感じないんだよ。」
そんな言葉に頷く。
——
野営は退屈なものだ。
月明かりだけが頼りにできる光源だ。
まともに戦えるものではない。魔獣だったりが出てきた頃には。
(まぁ出たらみんなを起こして戦うのが普通だから関係ないけども。)
——
上空。
バサバサと音がする。しかし、どこか規則正しくない。
——
あくびをして退屈な時間を噛み締めていたころ。
上空より、何かが墜落してきた。
(な、なんだ。何事だ。)
ドーンと地響きがする。
土埃が遠くで舞い、木々の奥から赤い獣が姿を現す。
「ヴァル様。お逃げをここは私が。」
シエルが前に出て抜刀する。
「いいよ。シエル。それに今の俺はシエルより強いんだから。」
シエルを押しのけ前に立つ。
「さぁ来いよ。はぐれ龍。」
龍は俺を見ると相当疲労と空腹で参っていたのかどしんどしんと地鳴りを起こしてこちらに向かってくる。
周りの木々をバッタバッタとなぎたおしながら近づいてくる。
至近距離になった途端ブレスを吐く。
「うわすご。どうやってやってんだろ。」
咄嗟に水の防壁を作る。ジュワーと水が蒸発する音が聞こえる。
「じゃあ今度はこっちだ。」
右手を向ける。
こちらもブレスで応戦だ。
手のひらから火のブレスが出る。しかし、規模は違う。龍全てを包むほど大きいブレス。
「これは耐えられるかな。」
半焦げになった龍が煙から出てくる。
「おぉ。しぶといな。さてこれはどうかな。やけどには水が効くんだぜ。」
龍の上空から瀧のように水を打ち付ける。
傷口がしみるのかとても痛そうだ。
「痛いか!この毒草入りの水をたくさん浴びろ!」
悶え苦しむ龍。
「反撃の余裕なんてなさそうだな。じゃあこれでトドメだ!」
「インフェルノ!!」
幾度となく失敗した魔術、インフェルノ。失敗を重ねた魔術はヴァルを練習へと駆り立てた。何十回の練習の末、完成したインフェルノは今ではヴァルの得意魔術になっていた。
真っ黒に燃える龍。
「無様だな。上空で悠々と飛んでいた獣が今はこうして黒く焦げているのだから。」
真っ黒な龍の前で両手を上げ笑う。一見するとサイコパスだ。
そんなのを恍惚とした目で見れるのはシエルだけだろう。
「おい、あのガキやべーぞ。」
そんな声が音を聞いて寄ってきた他の冒険者から聞こえる。
(今日は気分がいい。さてこのまま残りの旅も楽しいものにしますか。)
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