プライド
2話更新です。
ぱからと音が響く。
規則正しく石畳から音がなる。
「シエル。着いたようだね。」
「そのようでございますね。道中色々とございましたが問題なくこれて良かったですね。」
「そうだね。さてじゃあ関所で俺が来たって言わないとな。」
——
「身分証明書の提示を。」
「俺を見てもその対応か。ルートレットでの知名度も失墜したな。」
「っは?」
目を落とす。
「はっ!!ヴァレリウス様でしたか。あの宮廷魔術師になった領主様の嫡男様でしたか。ちょっとお待ち下さい。」
(ん?なんでだろうか。このまま城に行きたいのにな。)
詰め所へと案内される。
(特に悪いことしたわけでもないのになんでだ?)
「こんにちは。ヴァル様。城壁防衛部隊騎士団長のグラースです。この度はご帰還おめでとうございます。」
「祝辞はいい。なんで俺を通さない。」
顔をしかめて尋ねる。
「あぁ。いえ、別にそういうわけではないんですよ。行きたければ行っていただいて構わないのです。しかし、そちらのほうがヴァル様に迷惑だったり不都合が生じると思ったため今こうして引き止めているわけです。」
「不都合?どんな不都合だ。」
「その感じはどうやら噂を耳に入れてないようですね。」
(噂.,.。)
「そうだな。五年も帰ってない上に連絡は手紙のみだ。そんな時事的なことは知らないな。それでその噂の内容はなんだ。」
グラースは暗い天井を見上げながら顎を掻く。
「まぁ会ってみたらわかると思うんですがね。」
意味深な発言を残すと団員から伝令が入る。
「伝令です!ルナ・シルバリオン様が到着なされました。お通ししてもよろしいでしょうか。」
「あぁ。頼む。」
(なるほど。わかったぞ。)
しばらくすると偉そうな気の強い少女が俺の眼の前に歩いてきた。
「やぁ。兄さん。はじめましてですね。」
「あぁ。お前が噂の妹のルナか。で、なんのつもりだ。嫡男の俺をこんなところで待たせてるなんて話を領民が聞いたらどうなるかくらいわかっての行動なんだろうな。」
「えぇ。でも、嫡男ではあるものの継承者かどうかは未だに定かではないですね。」
「何が言いたい?」
「つまるところ継承者は私かお母様が今身ごもっている子がなるべきということです。」
「あなた。実の兄に向かってその発言はなんですか。」
シエルが静かに口を動かす。
「何も勉強せず宮廷魔術師として遊びまくってるのが領主になるのをどの領民が了承するとお思いで?」
「シエル。いいよ。どうやらこいつがエリシアなんかより随分面倒なことは理解できた。」
「はい。出しゃばってしまい申し訳ありません。」
ルナに向き直る。
「おい。でだ。お前は俺をどうしたいんだ。ここで継承権を放棄することをサインでもさせるのか?」
「えぇ。まぁ実際そうしたいところは山々です。しかし、それをすると一部の領民と関係者の反感を買うので好ましくないですね。まぁ最善手は飼い殺しですかね。」
微笑みながら言ってくる。
(はぁ。なんでこうも次から次へと。馬車が来なかったのってのはこいつのせいか?)
色々なことを頭をよぎる。
「ちょっと席を外したい。情報収集と情報整理も兼ねてだ。」
「あら。そんなのことをしないといけないなんて。益々残念ですね。どうぞいくらでも考え込んでくださいまし。」
グラースが俺を別室へと案内する。
「では。ごゆっくり(?)。」
「あ、待ってくれ。ちょっと色々と話しを聞きたい。」
「話ですか。もしかして噂とかルナ様のこととかですか?」
「まぁそれが主だな。ここに座れ。」
脂肪で少したるんだ腹を揺らしながら座る。しかし、肩幅が以外にも広いのかオズヴァルドのような面影は全くしない。
「んーと。まず、ルナについての領民の評価と現状ある噂を教えてくれ。」
真剣な眼差しを向ける。
「そうですね。領民からの評価は概ねいいです。ヴァル様よりすごいと言うのは二割くらいですかね。ほとんどはヴァル様には劣るが優秀であるという見立てですね。」
「それは本当だな。」
「はい。もちろんです。麒麟児と呼ぶものたまにおり、次期領主はルナ様であると主張する人間もいますね。彼らはヴァル様の王都での生活が怠惰だと捉えているからでしょう。」
「なるほど。ルナ本人はどう捉えている?あとルナの家での立ち位置とかはどんな感じなんだ?」
「ルナ様本人はその二割をあたかも大衆かのように捉えており、次期領主は自分だと意気込んでおります。家のことはちょっとわかりませんが、麒麟児と呼ぶものもいるのでやはり結構な重役としてガルド様はお考えのようで、ヴァル様の対応などを実際に任せられているようにほぼほぼガルド様の側近です。第一子のヴァル様は塩梅がわからなかったかもしれないですが今回はわかっている感じですね。」
「概ね理解した。じゃああいつは俺を頑張って貶めようとしてるんだな。他にルナ本人のスペックに関する噂とかないのか?」
「ルナ様はヴァル様同様、魔法の才能があるようで私達が使うような魔術は使わないで独自の魔術を使っていると聞いたことがあります。」
「ふーん。そんな感じか。」
腕と足を組みなおす。
「じゃあ。その出鼻か天狗の鼻をくじいてやらないとヴァレリウス・シルバリオンとしての名が廃るな。そうと決まれば作戦を練ろう。グラース、今回ばかりは協力してくれ。」
「っは。次期領主様の命なら。」
この振る舞いにシエルが少し恍惚としていたのは言うまでもないだろ。
——
「伝令です。グラース殿。ガルド夫妻が王城に到着とのことです。ヴァル様の帰還を報告いたしましょうか。」
「あぁ。頼む。あ、でもルナ様だけには知らせるな。どんなことをされるかわからないからな。」
「わかりました。」
敬礼をして去っていく。
「ヴァル様。参りましょう。」
——
王城へと向かう。城とは言っても王都のような感じではない。威厳を込めての王城でもある。
案内されたのは5年前ジーターと会うために用意された部屋だった。
どこか懐かしさを感じた。
(先生は今どこで何をやっているのだろうか。)
「ヴァル様。ガルド様とミレイナ様がお見えです。」
シエルが報告する。
扉が開く。
そこにあったのは変わらない母・ミレイナの顔と少しやつれた顔をしたガルドだった。
(何か事情がありそうだ。ルナの役割といい。)
「お久しぶりです父さん、母さん。五年ぶりですね。」
そんな言葉を投げかけるとミレイナが目に涙を溜めながら抱きついて来た。
「ヴァルちゃん!!生きてたのね!!良かった無事で!!王都到着の手紙以降返信がなかったものの!!」
(ん?そんなことはないはずだ。ちゃんと俺は来た計20通くらいの手紙はすべて返してたつもりだぞ。なんでだ。)
シエルに目を配るが横に首を振る。
「父さんもお久しぶりです。」
「あ、あぁ。ヴァルだ...。ヴァルだよ。ミレイナ、ヴァルが帰ってきてくれたんだよ。」
「えぇ。そうよ。あなた。」
(ん?オーバーじゃないか。)
「何かあったのですか。」
はっと気づいてソファに座る。
「そうそう。今日はそれについて話したくて来てもらったんだ。」
(何か重大なことがありそうだな。)
それはガルドのやつれた顔と少し痩せた体格を見れば目に見えている。
「うちの領地、ルートレットは岩塩とガーネットの鉱山があるから男爵でもやってけた。お前も歴史で勉強しただろう。しかし、その鉱山の周りの森から魔獣が大量に出てきて来たんだ。」
「魔獣が。」
「私達の生命線である鉱山から手を離すということはそれ即ちこの領地の存続の危機であるということだ。だからシルバリオン家が持つ兵隊を持って護衛と救援もしていたが絶え間ない魔獣の攻撃はとてもストレスが溜まる上に味方の消費が激しい。このまま根本の解決をできなければうちの領地は一ヶ月で実質的な終了だ。」
「——。」
「もうどうしようもないんだ。」
「じゃあ僕にやらせてください。その魔獣対峙の根本的な解決を。」
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