発見
部署のつくりは前のより閉塞的だ。
部署に入る扉は3つ。左翼、中央、右翼。それぞれ大きさが異なる。二つは人の移動、もう一つはものの搬入。
中央の扉を開ける。
デスクが並べられていた。
しかし、デスクの上に何か目立ったものが置いてある感じがしない。
「あれ。空っぽだ。」
「確かに。どこに行ったんだろ。」
よく見ると人もいない。職員室のようなつくりになっている部屋に人がたくさんいるのかと思ったら誰もいない。しかもデスクには人が使っていたような形跡は残されていない。
(まるでもとから使っていないような感じだな。)
「あ、見て。掲示板が。」
廊下側の壁に掲示板があった。
そこには連絡事項が簡素に書かれていた。
新しい転身者、実験室の配置、人の名簿。
(全ての情報が書かれているな。)
「これ要するにこれを見て今日の仕事を判断しろってことよね?なんか魔道具開発部は人とあんまり関わらないって言ってたけど。そういうことね。」
(やはりか。これを見て自分のやりたいことをやれというか。好きな魔道具を作ってみろということか。有用なものを作れば文句を言われずここに滞在できるというメカニズムか。)
(なんとも奔放に見えたがどうやらそうではないらしい。自己責任ってことだ。)
「あ、私達の名前があるわよ。」
指された先には名前と実験室の番号が振られていた。
「実験室3か。じゃあ向かおか。」
——
ガチャリと開く。
眼前に広がるは4つの大きな蛇口つきのテーブル。横の壁には棚が並べられていた。そこには様々な魔道具学術書、実験器具、藥品が置かれていた。
「わぁ〜。すごい!!すごいよ!!ヴァル!!これから私達ここで研究し放題なのよ!!すごい!!」
両足でぴょんぴょんと跳ねる。
「そうはしゃぐなよ。」
「はしゃがずにいられないわけないわよ!!こんな素敵なのをもらっといて。」
(確かにこの世界の価値観で言ったら最新鋭のものなんだろうな。前世の理科室を思い浮かべてたからあんまり違和感はなかったな。)
「あぁ〜。もう戻れないわ。あんな学校のしょぼい実験室なんかには。」
「ははは。」
棚に向かって脚立を立てる。
最上段から確認していく。
回路シート、ビーカー、フラスコ、丸底フラスコ、ろ紙、ろ過器、試験管etc。様々ある。
(前世のそれと遜色ないな。)
「そーそー。それで何開発するか決めた?エリシアは何か考えた?」
「私はありきたりのものばかり考えちゃってる。これいいなって思ったらもうすでにあるみたいなやつばっか。私は発想は大したことないみたい。そういうヴァルはなんかないの?」
「そうだな。まぁないことはないけどなぁ。」
(まぁ色々と思いつくな。魔法に頼りきったこの世界の機械は機械ですらないからな。蒸気機関とか作るのもありだな。あ、でもそこまで行くと動力を魔道具に置き換えるだけだな。)
「なにそれなにそれ!おしえてよ!」
「えーっとね。魔力が可視化するメガネなんだけど。」
「すごい!できたらだけど...。」
「そうなんだよね。君みたいに元から見えるのとは違って結構むずいんだよね。」
「そうわよね。ちょっと探求が必要ね。例えば魔力を見るのは無理でも魔力を検知できるものがあるだけでも変わると思うのよ。」
「そういうアプローチはいいね。ここの棚にあればいいんだけど...。」
「そ、そうね。まぁ手がかりさえあれば万々歳よ。」
「そうだね...。」
身長の三倍くらいの大きさの本棚をみあげる。恐ろしいのはそれが3つもあることだ。
「これは骨が折れるぞぉ。」
——
「結局なかったわね。全部目を通してはみたけど。」
「そうだね。」
通した目の下には腫まができていた。まる一週間もそんなことに費やしていた。
「あ、そういえばヴァル。関係ないけどとても興味深い事が書かれてたのがあるのよ。」
「え、どんなこと?」
「確か。本のタイトルは『魔力が発する波について」だった気がするわ。
「え。」
(それって大発見じゃないか?あの魔力が波を発するなんて聞いたことがないし。それを応用すればあれもこれも作れる。)
「波って言ってたけど。海の波がどうしたのかしらね。魔力と海の波に何の関係があるのかしら。」
「エリシア。それどこにあるの?」
「何。ヴァルもそんなのに魅入られたの?」
「や。まぁとにかく。」
「はいはい。」
脚立をガタンと起き階段をよじ登る。
一冊の本を持って降りてくる。
「はい。これよ。とっても古臭いのだったわよ。確か三千年前に書かれたものらしいわよ。神話がどうのこうのの時代に書かれた魔術書らしいわよ。」
「三千年前!それはすごい古いね。さて。どんなことが。」
表紙には確かに「魔力が発する波について」と書かれている。
一ページ目。そこの前書きにはこう書かれていた。
「魔力が動いたり機能すると一定の周波の波が発せられることをまず私は発見した。」
(こ、これは!間違いなく革命だ。)
(これがあれば。)
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