発表
一日飛ばしてすみません。
月曜日。
「ねぇエリシア。昨日なんか組み込んでたよね。爆発回路に。何をしたの?」
「これ多分問題になると思うんだけど——。」
「それはねぇ内緒——と言いたいところだけど。説明が絶対に必要になるからおしえてあげるわ。」
そうして耳をエリシアは近づけ打つ。
(あぁ。少し危ないけどまぁいいか。)
エリシアは少し頬を赤らめていた。
週末開け最初の授業は魔道具の授業だ。そう、発表会である。
発表会とたいそうな名前がついてるが所詮はSクラス12人だけでやるだけの大変小規模なものである。
発表の順はもう決まっており、やはりというか俺達が最後だ。
最初の班は単純だがちゃんと動くしまともなもので危険性は皆無であった。
(みんなもうすでに発明されてるものばかりを作っているな。ま、王国からしたらそれはそれで都合がいいのかもしれないが。)
「次、エドヴァルドの班。」
エドヴァルドの班の発表が開始される。
内容は冷蔵庫だった。
(まぁこの世界で言ったら結構作るの簡単なんだろうな。なんてたってエネルギーを与えると熱が下がるんだから前世から考えたらおかしな話だ。しかもこんな世界でもエネルギー保存則があるから恐ろしい話だ。)
「素晴らしい発表だった。従来のものよりも効率的で魔力消費量が少なくなったな。」
そう評価をローデリックは与える。
(あいつも現金なやつだよな。俺ら下級貴族には偉そうなのになぁ。)
「じゃあ次。首席と次席。」
「「はい。」」
「では場所を変えましょうここでは危ないです。」
「そうなのか。」
場所を外に変え的を置く。
「では今回私達では魔力注入ができないので誰か僕らの変わりにやってほしいんですけど。やってくれる人いますか?」
「じゃあ俺がやろう。」
(やっぱり食いつくか。)
「ではもう一人。」
「じゃあ僕がエリシア嬢のために。」
(こっちも食いつくな。)
「では、反動がありますので木の部分を肩に挟むように持ってください。」
「こうか?」
「そうです。ローデリック先生。」
(シエルには及ばないがすごい勘だ。)
「こうですか?エリシア嬢?」
「んー。もうちょっとこうかな。」
「なるほど!」
(こいつはあれだな。残念だ。)
「では、構えれたら引き金を魔力注入しながらやってみてください。」
「「では、参る。」」
次の瞬間、
――轟音が響いた。
「ッ!?」
空気が弾けたような衝撃とともに、二人の体が大きく後方へ跳ねた。乾いた破裂音と遅れて押し寄せる風圧が、周囲の生徒たちの髪とローブを激しく揺らす。
「うおっ!?」
「きゃあっ!」
慌てて距離を取る生徒たち。その視線の先では、的の真ん中がくり抜かれていた。
正確には、そこの部分だけ“消し飛んでいた”。
木製の的は中央から抉り取られ、背後の壁にまで一直線に深い溝が刻まれている。焦げた匂いと、わずかに残る熱がその威力を物語っていた。
「……は?」
魔力を注入したエドヴァルドは、尻もちをついたまま呆然と呟く。手に持っていた銃は、反動のせいで半ば落ちかけていた。
「ぐっ……腕が……!」
エドヴァルドは肩を押さえて顔を歪めている。構えは教えた通りでも、完全に威力を受け止めきれなかったらしい。
(まぁ、そうなるよな。)
俺は内心でだけ頷く。
「な、なんだ今のは……!」
ローデリックが目を見開き、的のあった場所とその先を何度も見比べている。
「今のが、私たちの魔道具です。」
エリシアは一歩前に出て、落ち着いた声で言った。
「魔力を圧縮し、指向性を持たせて放出する――遠距離高威力射出装置です。」
ざわっ、と場がどよめく。
「ば、馬鹿な……あの威力を、人が持てるサイズで……?」
「しかも詠唱なしだぞ……?」
「いや、それより今の一撃、下手したら……」
(人、殺せるな。)
誰も口には出さないが、全員が同じことを思っている。
ローデリックはゆっくりとこちらを振り向いた。
その目には、明らかな警戒と――
興味が宿っていた。
「……説明してもらおうか。」
「はい。」
エリシアが一歩下がり、今度は俺を見る。
(ほら来た。)
「基本構造は単純です。」
俺はそう言って、手にした銃を軽く持ち上げる。
「魔力を一度内部で蓄積・圧縮し、それを一方向に解放する。ただそれだけです。」
「“ただそれだけ”であの威力になるものか。」
「なりますよ。効率よくやれば。」
静まり返る周囲。
俺は続ける。
「従来の魔道具は魔力をそのまま使う。だからロスが多い。だけどこれは違う。圧縮してから解放することで、同じ魔力量でも出力が段違いになる。」
ローデリックの表情がわずかに変わる。
理解した顔だ。
(さすがに教師やってるだけはあるか。)
「……危険すぎるな。しかも王国の管理が必要な代物だ。」
ぽつりと彼は言った。
「はい。なので、制御機構も組み込んであります。」
「制御?」
「一定以上の魔力が流れ込んだ場合、自動で放出を停止する仕組みです。あと、暴発防止も。」
「……」
ローデリックはしばらく黙り込んだ。
周囲の生徒たちも息を呑んでいる。
やがて、
「……評価は、後日とする。」
そう言って背を向けた。
だが、その足取りはいつもよりわずかに重い。
(そりゃそうだろ。)
俺は小さく息を吐く。
(これは“便利な道具”じゃない。“概念が変わるやつ”だからな。)
横を見ると、エリシアがこちらをちらりと見ていた。
その表情は――
少しだけ、楽しそうだった。
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