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水晶の残り火

1938年12月15日 ベルリン


 11月9日夜から10日にわたって行われた突撃隊による暴動は「帝国水晶の夜」という名前で呼ばれていました

 これはドイツ外交官殺害に対する報復と名うたれてはいましたが、単にゲッペルスさんがユダヤ人に報復したかっただけです。

 その結果が100名未満の死者と数名の強姦被害、多数のシナゴーグの破壊とユダヤ人商店の破壊でした。

 600万マルクを越えるガラス修理費に比べて人的損害が非常に少なく、計画的に建物の破壊に集中していたのが良くわかります。

 また暴動はあっても大規模な略奪が発生しなかったことがユダヤ人が抵抗して被害に合うことを避けられた要因になっています。

 この夜の出来事に対して叔父さんは非常に不満が強いようでした。

 もっとも大きいのは修繕費にかかる経済的損失と、それに伴う資材の無駄な流用でした。

 ガラスを溶かして作りなおすのにも石炭は必要であり、その石炭があれば鉄が生産できるのにという観点です。

 その結果がユダヤ問題についてはゲッペルスさんからゲーリングさんへ担当者が移動しました。

 ゲーリングさんは「ガラス破壊よりもユダヤ人200人も吊るせばそのほうが効果が上がっただろう」と述べていて叔父さんも同意しているようです。

 ただその一方で外交上の理由から叔父さんは法治国家の体面維持に奔走しており、この暴動についても暴行については不問(証言が存在しない)にしても強姦魔に関しては人種汚辱剤で処罰されアーリア人から外されています。

 

 ドイツ保険組合の信用維持から保険の支払いが明言されましたが、国内ユダヤ人には請求権が消滅させられ、支払われた保険金は国庫に没収されました。

 その後ユダヤ人団体への献金や就学停止、雇用の禁止を盛り込んだ法案が提出されましたが、これをドイツ市民は当然のことと受け取りました。

 街角の市民はこれまでユダヤ人に取ってきた対応が緩かったので今回外交官が殺されたと反省しているようです。

 ポーランドの対応を見ればドイツは法治国家としてユダヤ人を法で権利を与えていた分まともな対応をしていたとみんな実感していたのです。

 それに対し牙をむかれたのはポーランドではなくドイツ外交官でした。

 まさに飼い犬に手を噛まれたような衝撃が走ったのです。

 その結果、市民達にも、ユダヤ人に対して強硬な措置を求める風潮が醸成されてきました。

 暴動直後にはユダヤ人30000人を収容所に緊急避難させました。

 数週間後には開放予定なのですが市民の険悪なムードはそれほど危険な状態になっていたのです。

 困ったことにドイツでは依然として労働力が不足していました。彼らを追放しても受け入れる国はなく険悪な雰囲気の中働かせるしかなかったのです。

 さらに面倒なのが一部の外国籍のユダヤ人でした。

 彼らは自分達が法的に除外されているのを知っていて、ドイツの同胞を食い物にしながら莫大な利益を貪りました。

 その光景はドイツ市民にとっては、ユダヤ人の風説を助長するものでユダヤ人蔑視の強い風潮を生み出していました。

 総統館に住んでいる叔父さんは市民の急激な風潮の変化に気付くことはありませんでした。

 ただ、ユダヤ人をどうやって国外に追放して、代わりの労働力を手に入れるかで悩んでいました。

 ミュンヘン会議の結果、民族自治という建前のを利用してで一部を掠め取っていった。

 スラブ系のポーランドに関してチェコスロバキアは12月1日に条約に従い領土割譲を行っており、ユダヤ人退避のための費用を無駄にさせられたことも加えて、叔父さんは静かに怒っているように見えました。

 ソ連邦への盾という役割がなければ、怒りで侵略されてもおかしくないということにポーランド側は気付いてないようでした。


 どちらにしろ叔父さんの頭の中にはユダヤ人は追放処分ができない不良在庫程度の認識で、今は周辺国を併合して東方生存圏を構築することに全力が費やされていました。

 その努力は4ヵ月後にはスロバキア地方の独立に伴うチェコ全土の併合となって帰ってくることになります。

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