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嵐の夜の灯台

 1934年 8月19日 ベルリン 首相官邸


 ようやく今日、「ドイツ国、及び国民の国家元首に関する法律」の施行に必要な民族投票が終わった。

 従来の国家元首はヒンデンブルグ大統領だったが、死亡に伴い「指導者兼首相であるアドルフ・ヒトラーに全権委任された。

 これで、内政・外政・軍事全てがアドルフ・ヒトラー個人に権力が集中することができた。

 投票結果は89.93%の賛成で、国民からの承認も取れた。

 これで国家社会主義改革を進めることができるだろう。

 英雄ヒンデンブルグに対し最大の敬意と共に大統領の呼び名は彼一人に捧げることになった。

 逆に言うなら、今後国家元首たるワイマール共和国の大統領は発生しないということだ。

 故に指導者フューラーは全てを指導することになる。


 法律のジャングルジムを潜り抜けるように、全ての法に優先して指導者の意志が重んじられるように数多の枠組みを組み立てたのだ。

 もちろん、全ての問題を自分だけで解決できるとは思っていないし、他者の力を有効に使わなくては国家運営はできない。

 だが国家運営が間違った方向に進みそうなとき、それを明確に訂正できる力を有することができたのは大きい。

 そして、その権限を国民が総統に選挙で承認を与えた。

 なんて民主的な手続きだろう。

 民主主義が専制君主を選んだ場合、どのようになるか。

 そんなことは古代ローマ帝国から決まっている。

 古代ローマ帝国では皇帝の地位は複数の地位を合わせることでカエサルという名前に終結した。

 皇帝カエサルだから全権を持っているわけではない。

 細かい部分をいくつも組み合わせて求める力を組上げていくのが国家元首の道である。

 現在のドイツを見れば、強力にかつ素早く国力を回復させなくてはならない。

 必要な権限は迅速に命令を遵守させる力に他ならない。

 逆に言えば、命令をしない部分においては部下の独創性をある程度認める形で進めて行く必要もあるだろう。

 

 今考えているのは回覧板式内閣だ。

 内閣に総統命令を回覧板で回し、内閣構成員が確認、コメントをつけて回してくる。

 各担当大臣はその回覧板を元に各部局へ命令を流して行く。

 この方式だと大臣の権限が大きくなってしまうが、総統の地位は全ての大臣の権限より上になるので問題は無いだろう。

 また、各部門への命令は大臣発になるので失敗や不満は大臣どまりで総統には向いてこないという利点もある。

 

 とにかく改革を急がなくてはならない。潜在的なものはともかく、周囲の国々は数百万単位の軍勢を持っているのに対し、ドイツ国防軍は僅か10万人。

 列強とは互角に戦うことはとてもできない。

 メフォ手形を使って軍事費は捻出したが、兵士の育成は1日でできるものではない。

 突撃隊を粛清した結果、国防軍への訓練機関への変更は徐々に進んでいるが、フランスの敵視が相変わらず厳しい。

 ドイツからの賠償金を放り込んで塹壕を強化した防衛線を画策しているらしい。


 これをどう対抗していくのか参謀本部と協議が必要だ。

 あとは軍隊の拡大に伴い、ユンカーや貴族出身外の将軍を軍に入れて行く必要がある。

 そうなると、小規模の紛争が必要なんだが……どこにするべきか?

 列強を刺激せず、継続的に紛争が発生し続ける。


  そういう意味では東ヨーロッパが望ましいのだが、一月にはポーランドと不可侵条約を結んだばかりだ。他の地域になるか?

 幸い、ヒンデンブルク大統領の命令のおかげで共産主義者は一掃できた。(国会議員を含めてだ)まことに感謝である。

 これで国内に残っているのは下部構成員だけである。

 この下部構成員はユダヤ系が多いので、資産家のユダヤ人に狩らせれば問題ないだろう。

 放っておいてもなんとかなるだろうが……ゲシュタポ長官代理にヒムラーを就任させたはずだから彼に任せるか。メモを回しておけばうまくやるだろう。


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