悪魔の宴
1923年11月8日 ミュンヘン ビュルガーブルトケラー
カールに州摂政、ザイサーに警察大臣、ロッソウには国防大臣、そして国防軍司令はルーデンドルフを提示して3人の説得に入ったがなかなか受け付けてくれない。
ナチス党がどこに入るのか不明なせいらしい。
ナチス党員は政府の構成員として実働部隊に割り振るつもりだったが、それだと政府上層部がお飾りで実権を目の前の男に持っていかれる可能性に気付いたらしい。
さすがに政府首脳を務めてきた男達だ。
勢いだけでは説得できなかったか。
鈍くはないし保身に長けてもいる。
仕方が無いので気は重かったがルーデンドルフを迎えに行かせた。
迎えに生かせる間に客が飽きてきたらしい。帰ろうとする客が出始めた。
それを止めようとする突撃隊との間で小競り合いが起きていた。
ざわつく会場に向かってゲーリングは「諸君、心配するな、ビールがあるじゃないか」
そういいながら追加のビールを店に用意させて、各テーブルに送り届けたところ若干騒ぎが収まった。
その隙を使って、演説を始めた。
今夜の話し合いはミュンヘンのみならず偉大なドイツ帝国復活のための第一歩になる歴史的事件であり、それを目の当たりにできた諸君は後々人々に誇りを持って今夜のことを語り告げる立場に立つことを訴えた。
観客を引き込むことしばし、ルーデンドルフを迎えにいったリヒターが息を切らして戻ってきた。
「御大が激怒してこっちに向かってきます」
不味い……やっぱり聞いてなかったか
そこで一計を案じると
観客に向かって声高く告げた。
「さあ、そろそろ機関銃を設置するぞ。」
機関銃という物騒な単語に観客はギョッとしたようだが、次の瞬間に入ってきたルーデンドルフに向かって、
「さあ、我々の機関銃の到着だ!拍手!拍手!」
そう叫ぶと観客はいっせいに見知った英雄に拍手を送った。
真っ赤な顔をしたルーデンドルフは飛び込んだ瞬間の拍手の渦に毒気を抜かれたらしい。
「さあ皆さんに機関銃の威力を見せて差し上げましょう。ルーデンドルフ閣下」
拍手の中3人のところに進んで行くルーデンドルフ閣下は小声で文句を言ってきた。
(ヒトラー伍長、勝手に始めてどうするつもりだ。後で覚えていろ)
(すみません。昨晩遅くに全て決まったもので機密保持から伝えられなくて、文句は後でいくらでも聞くので今は3人の説得を手伝ってください)
拍手に背を押される感じでルーデンドルフ閣下が3人に向かって説得を始めた。
最終的にはルーデンドルフがヒトラーの手綱をとるという条件で3人も新政権に合意した。
ようやくこれでベルリン進撃が可能になる。
ムッソリーニ閣下のようにサインを求められる立場になるのであろうか?
そんな先より今はこの冬の対策だ。
インフレを止めないと餓死者が出かねない。
誇り高いドイツ帝国としてそのような真似はさせるわけには行かない。




