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鬼はゴブリンロードと戦う

前章までのあらすじ


ゴブリンを殲滅していたらゴブリンロードが現れた。


「お、ちょっとは手応えが有りそうだ。どれ、どの程度か一度受けてみるるかね」


洞窟の入り口から、巨大な影がぬっと姿を現した。通常のゴブリンの三倍はあろうかという体躯。筋肉の塊のような緑の体に、錆びた鉄の胸当てを纏い、巨大な戦斧を片手で引きずっている。目は知性を宿しており、配下のゴブリンたちとは明らかに一線を画していた。

ゴブリンロードがマックスを見た。足元に転がる無数の部下の死体を見た。そして、マックスの手に握られた小石を見た。

低い唸り声を上げた。怒りだ。しかし同時に警戒もしている。馬鹿ではない。


地面を割るような咆哮を上げた。配下のゴブリンたちに命令を下す。三十匹ほどが一斉にマックスを取り囲み始めた。全方位から同時に襲いかかる算段だ。

ゴブリンロード自身は後方から動かない。まずは部下で消耗させるつもりらしい。なかなかどうして、指揮官としてはまともな判断だった。Cランクパーティーが半壊したのも頷ける。力だけでなく、知恵がある。


三十匹のゴブリンが、じりじりと包囲を狭めていた。

「邪魔するな」

マックスは足元のゴブリンの死体を片手で掴み、まるで紙くずでも捨てるかのように投擲し始めた。ぐしゃ、ばき、という音を立てながら、緑色の肉塊が放物線を描いて飛んでいく。

包囲網の右翼にいたゴブリン五匹が、仲間の死体に巻き込まれて吹き飛んだ。骨が砕ける音と悲鳴が重なる。

マックスは次々と投げた。投げる、投げる、投げる。死体の山がみるみる減っていく。ゴブリンたちは恐怖で足が竦んでいた。仲間の死体が飛んでくるのだ。しかもとんでもない速度で。当たれば即死。

「ギィッ! ギィヤアア!」

包囲網は三十秒で崩壊した。逃げ出そうとする者、腰を抜かす者、武器を捨てて這いつくばる者。統率が取れていない。

ゴブリンロードが苛立たしげに戦斧を地面に叩きつけた。どん、と地響きが走る。逃げるな、と怒鳴っている。

しかし残ったゴブリンたちの目は完全に怯えきっていた。目の前の人間は、化け物だ。ゴブリンの本能がそう告げている。


「ほれ、一発殴らせてやるから来いよ」

マックスが手招きした。小指を立てて、ちょいちょいと。完全な挑発だった。

ゴブリンロードの目が血走った。知性があるとはいえ、所詮はゴブリン。プライドを傷つけられた怒りは、理性を容易く凌駕する。戦斧を振り上げ、地面を揺らしながら突進してきた。


ずしん、ずしん、ずしん。


配下のゴブリンたちが蜘蛛の子を散らすように逃げた。巻き添えを食いたくないのだ。

「グルオォォォォ!!」

戦斧が振り下ろされた。空気を裂く音。まともに食らえば人間の胴体など真っ二つに割れる一撃。Cランク冒険者でも回避が精一杯とされる、ゴブリンロード必殺の攻撃だった。


しかし、マックスは動かなかった。


斧の刃がマックスの左腕に激突した。ごっ、という鈍い音が森に響く。土煙が舞い上がった。

ゴブリンロードが、にやりと笑った。仕留めた、と。

しかし、斧は止まっていた。マックスの腕の上で。皮膚に傷ひとつない。

「……ギ?」

「ほほう。まあまあの強さだ。次は俺の番だな」



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