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女神は眉を顰めて俺を見ている。
「減らず口を」
「先に害虫呼ばわりしたのは女神様でしょ」
二度目の邂逅となったわけだが、やはり美しさだけは他の追随を許さない。
ヴィケの容姿は完璧だ。色街で一番人気の女でさえ、女神の前では霞むほどである。
「不遜、下劣、醜悪な考え。神の領域に来てまでそんな尊大な思考を巡らすのはもはや才能ね」
「そんな、才能なんて……照れるな」
「褒めてないから。それより、今日なんであんたが呼ばれたのかわかってるかしら?」
「いえ。全く身に覚えがありません……あ、もしかして前回祈りを捧げた時に不備がありましたか? いや、もらえる神聖力が明らかに少ないなって思ってたんですよ。なーんだ。女神でもミスするんですね」
「今からでも神聖力を取り上げた方がいいかしら」
「──申し訳ありません。冗談です」
でもそうじゃないなら本当に理由がわからない。まさか、この女神が俺に会いたがるわけがないし、俺自身も顔を合わせたくもない。
「今回あなたのことを呼んだのは、私が取り決めたルールについてあなたが全く理解してないからよ」
ルール。それって善行すれば神聖力をもらえて、悪行をなしたらペナルティってやつか。
「理解してますけど?」
「ふうん。じゃあ、あなたは今回のことで、どれだけの神聖力を貰えると思ってるの?」
前回は0.1%にも満たなかった。
その時はたくさんの怪我人や困ってる人を神聖力をふんだんに使って手助けした。
今回は骨が折れる作業ではあったが、神聖力は一切使ってないし、得られた結果は単に街道を塞いでいた大岩をどかしただけだ。
「前回の半分くらい?」
「はぁぁぁあ」
なんつーでかいため息だ。流石にそれだけデカいと神からも幸運が逃げるぞ。
「今回は直接神聖力を与えるわ。受け取りなさい」
女神ヴィケの持つ杖から、光り輝く粒子が生まれる。
「一応礼は言っときますね。あざす」
「本来、女神から直接神聖力を受け取れるなんてこれ以上の名誉はないんだからね。せいぜい感謝しなさい」
神聖力を受け取り、器へと注ぐと、俺は驚きで固まった。
「え」
前回より多いどころじゃない。以前まで祈りによって得られていた神聖力よりも、もっと膨大な量だ。
みるみるうちに器に神聖力が満ちていく。
「きたきたききたぁぁあ! これよこれ! これこそ神聖! 天上天下唯我独尊!!」
「くそ……ムカつくわね」
「こ、こんなにもらっていいんですか?」
「それはあなたの善行に対するただの結果だから、量に関しては間違ってないわ」
「でも……なんで?」
「はぁ。あんたはそこがいつまで経ってもわからないのね」
呆れたようにため息をつくヴィケ。
「わからないんで教えろください女神様」
女神は腕を組んだまま殺伐とした表情を浮かべる。
「じゃあ聞くけど、信心ってなに?」
「書いて字の通り、信じる心でしょ?」
「あんたは他人を信じない方がいいって言ったわよね? それに神なんて必要ないとも言った。あんたにとって、信仰はただのポーズであって、心から生まれるものじゃない」
「まあ、その通りですけど」
「はあ!? ムカつくわ! このクソガキ! 信仰はどこから生まれる!? 信心は!? それは他者を信頼することから始まるの! あなたは今日、何を言おうが村人たちを頼った。頼る、というのは信じる、という事でもあるでしょうが!」
急に叫び出すな。怖いだろ。
「つ、つまり、俺が村人を頼ったからこんなに神聖力がもらえたと?」
「そう言ってるでしょっ……本当に憎ったらしいわ。私の信徒でもない奴に、こんなことから説明してやらないといけないなんて」
「ちょっと待ってください。俺はそもそも、村人を利用しただけですが?」
「知らないわよ。あんたが信じたのは確かなの。あんた自分の事もよくわかってないの? やっぱり脳みそないんじゃないの? 心配だから私が見てあげましょうか?」
気味の悪いことを抜かすな。誰が自分の脳みそを他者にほいほい見せるんだ。曲芸師じゃないんだぞ。
「ふむ。でも少し納得はしましたね。つまり、今日みたいなことをまたやればいいんですよね? そうすれば神聖力を貰えると」
「まあ、信心が伴っている善行なら、私は神聖力を与えるしかないからね。今日の事がまぐれでない事を祈ってるわ」
「神でも祈るんですね。ハハ。なんか滑稽ですね」
「消えろクソ人間」
また足元に黒い穴が出現する。
くそ、いつも野蛮なやり方しやがって。神なら神らしく人間くらい弁論で説き伏せてみやがれクソ女神。
「あぁぁあ!」




