送り道
「お邪魔しました。遅くまですいません。」
「あらもう帰っちゃうの?泊まっていったら?」
「ちょ、そんなのダメに決まってるだろ!」
思った事を何も考えずに口に出すカヨにすかさずツッコミを入れる。
「先輩は私が泊まるのは嫌なんですか?」
「えっ?!」
「冗談です。」
「......お前のそういう所、ほんと心臓に悪い。」
「先輩はヘタレさんなので泊まる事に心配も期待もしてないんですが、今日はご挨拶のつもりで来たのでまた次の機会に。」
ヘタレという言葉が心にグサリと刺さる。
「あらあら。じゃあ今度、ぜひ泊まりにいらっしゃいね。ゆー君のベットはシングルだからくっ付いて寝てたらゆー君も流石に狼になるわよ。」
「…くっついて……。」
蓮姫はそうポソリと呟くと顔を紅くして俯いた。
「あぁ!もう、いいから行くぞ。送ってくよ。」
だいたい泊まりに来たらもう1つ布団を敷くに決まっているだろうに。
蓮姫はペコリとカヨに頭を下げて店を出て、俺もそれに続く。
「…悪いな。二人とも煩くて。」
「いえ、賑やかなのは良いことです。」
「そっか、ならいいけど。......あぁ、それと、沙弥は口は悪いし結構酷いこと言ってたと思うけど悪気がある訳じゃないし、本当は良い子だからさ、出来るだけ仲良くしてやってくれ。」
「沙弥さん、今までは嫌いな部類に入っていたんですけど、先輩の妹さんならそういう訳にもいきませんからね。ただ、」
「……ん?」
「学校での瀬尾さんと家での沙弥さん。先輩は二面性について知ってるんですか?」
「二面性......か。あぁ、もちろん知ってるよ。」
いわゆる猫かぶり。
沙弥は基本家族の前じゃ素を見せてくれるが他人、特に学校の連中の前ではいい子を演じる。
確かに家と外で態度が変わるのはおかしな事ではないが沙弥のそれはもはや別人と言っていいレベルだ。
「どうしてあそこまで別人のような性格を装ってるんですか?」
「うーん、そうだな。俺も沙弥本人から聞いたわけじゃないから時期と照らし合わせての推測になるが、まず間違いなくイジメが原因だ。」
「いじめ...ですか。」
「あぁ。」
蓮姫の家まではまだ結構ある。
俺は昔の少し苦い思い出をゆっくりと話す事にした。
いじめられていたあの頃の沙弥は学校でもさっきのように気が強く口が悪かった。
学年は違うがたまに見かける沙弥はいつも1人。完全にクラスで浮いた存在となっていた。
そんな時だ。
どこにでもいる、イタズラ好きの男子共。
そいつらは沙弥に目をつけた。
友達がおらず、クラスでも浮いた存在。誰も助けようとしないし沙弥自身も維持を張って誰にも相談する事はない。
.........俺にさえも。
そして数ヶ月、日に日に元気が無くなり、学校へ行く意欲すら失っていた沙弥を見て俺はようやく気がついた。
沙弥はいじめられていたのだと。




