世界の書き換え? 私の許可を取りましたの?
「な……なに!? 我が手中に収めたはずの始源の魔力が……勝手に解けていく……!?」
帝都地下の広大な始源の間。
首領が絶叫を上げた。彼が強引に吸い上げ己のものとしようとしていた莫大な魔力が、私の差し出した右手に向かって綺麗に吸い寄せられていく。
「バカな! この暗黒術式は世界中の魔力を統制し、理を書き換える至高の陣だぞ! なぜひとひねりで奪い返されるのだぁぁっ!?」
狂気に満ちた首領の問いに私は静かに首を傾げた。
「理を書き換える……ですか。ですが首領様、その術式の基礎となっている『星の循環法則』を組み上げたのは、他ならぬ私ですわ」
私が世界各地の魔導炉を整えた際ただ浄化するだけでなく、すべての魔力に私の『星辰魔術』の固有波長を刻み込んでおいたのだ。
彼が集めたのは首領自身の力などではない。最初から最後まで私の手の中にある魔力に過ぎなかったのである。
「くそぁぁぁっ! ならば力ずくだ! 世界ごと消し飛べぇぇぇっ!」
追い詰められた首領がやけくそになり己の生命力まで投げ打って暗黒の超巨大魔導弾を膨れ上がらせた。
地下空間全体が激しく揺れ、帝都の地上まで届かんばかりの破壊の波が押し寄せる。
「エレノア様っ!」
「慌てなくても大丈夫だ、シオン。……エレノア、頼んだぞ」
後ろで見守るルーク院長とシオンの声を受け、私は静かに前へ一歩踏み出した。
王宮で「出来損ない」と蔑まれ抑圧されていた過去の私。
けれど今の私には守るべき大切な仲間と、自分を認めてくれた温かな世界がある。こんな勝手な人間の野望で壊させたりは絶対にさせない。
「——星々よ、天の理に従い、全ての歪みを静寂へ還しなさい——『星辰創造・新星降誕』!」
ズドォォォォォン……ッ!!
私の掲げた両手から、部屋全体を包み込むほどのまばゆい純白と黄金の光が溢れ出した。
首領が放った漆黒の魔導弾は私の光に触れた瞬間に抵抗することすら許されず、まるで朝日に溶ける氷のように一瞬で消滅。
それどころか、地下空間を覆っていた不気味な暗黒陣も、首領の邪悪な魔力も、すべてが清らかな星の光によって綺麗に洗い流されていった。
「あ……あぁ……俺の……新世界が……」
光が収まったあとそこに残されていたのは、すべての魔力を失ってガクッと膝をつく首領の姿と、どこまでも澄み渡った清らかな魔力で満たされた始源の間だった。
「ふふ、これにて『深淵の天秤』も完全解体……一件落着ですわね」
私が振り返って微笑むと、シオンが大泣きしながら飛びついてきた。
「エレノア様ぁぁっ! すごすぎます! かっこよすぎます!」
「はいはい、シオン。無事で何よりだ。……よくやったな、エレノア」
ルーク院長も心底誇らしげに、私の頭を優しく撫でてくれたのだった。
こうして、世界を揺るがした悪の組織の野望は、エレノアの圧倒的な星辰魔術によってサクッと打ち砕かれた。




