東方のお礼は豪華すぎる宴でした
ヴァルガスを拘束し、海底の魔導炉を星の力で綺麗に安定させた私たちは、再び『ステラ・グランヴェル号』で東方華仙郷の港へと戻ってきた。
待っていたのは、街を挙げての大歓迎だった。
「救世主様のお帰りだーっ!」
「港を救っていただき、本当にありがとうございます!」
色とりどりの紙吹雪と歓声が飛び交う中、私たちは東方の最高指導者が待つ豪華絢爛な大広間へと案内された。
広い畳の敷かれた部屋には、見たこともないようなご馳走がずらりと並べられている。新鮮な海の幸の刺身に、香ばしい炙り焼き、色鮮やかな蒸し料理まで、テーブルから溢れんばかりだ。
「大魔術師エレノア殿! この東方の危機をサクッと救っていただいたこと、心より感謝申し上げる!」
立派な髭を蓄えた領主が、深々と頭を下げて盃を掲げた。
「お気になさらないでくださいませ。美味しいお料理を振る舞っていただいたお礼ですもの」
私が優雅に微笑むと、領主をはじめ周囲の重鎮たちが「なんと控えめで美しいお方だ……」と感涙している。
「エレノア様、見てください! このお魚、お口の中でとろけますよー!」
シオンはすでに頬を膨らませて大興奮だ。隣のルーク院長も、珍しい東方の地酒を味わいながら琥珀色の瞳を満足げに細めていた。
「王宮での堅苦しい晩餐会とは大違いだな、エレノア」
「ええ、本当に。自分の好きなものを、大切な仲間と一緒に笑顔でいただける……それだけで、胸がいっぱいになりますわ」
王宮にいた頃の私は、食事の席でさえ「立ち振る舞いがなっていない」「目立つな」と小言を言われ、味など感じる余裕もなかった。
だが今は違う。自分の力で誰かを救い、こうして自由に美味しいものを味わうことができるのだ。
賑やかな宴が深夜まで続き、心地よい満腹感に包まれていたその時——ルーク院長がそっと私の隣に腰かけ、小さな羊皮紙の書状を見せてきた。
「エレノア、美味いものを食べた後に悪いんだが……捕まえたヴァルガスの懐から、気になる情報が出てきた」
「『深淵の天秤』の、次の目的地……ですの?」
「ああ。残る古代魔導炉のうち、最も危険とされる『炎の魔導炉』がある場所……大陸中央の巨大火山地帯だ。どうやら彼らは、火山のエネルギーを丸ごと暴走させて、世界中に灰を降らせるつもりらしい」
ルーク院長の言葉に、私の隣で満足そうにお腹を叩いていたシオンが「ええっ!?」と顔を跳ね上げた。
「火山を暴走だなんて、そんなことしたら世界中の農作物がダメになっちゃいます!」
「ええ、絶対に見過ごせませんわね」
私は静かに立ち上がり、窓の外に広がる穏やかな夜空を見上げた。
王宮の小さな鳥籠を飛び出し、世界の広さを知った私。
大切な人たちの笑顔とこの美しい世界を守るためなら、どんな古代の炎であろうとサクッと鎮めてみせる。
「ルーク院長、シオン。宴が終わったら、次は火山へ向かいましょう」
「フッ……頼もしい限りだな、エレノア」
こうして、東方での楽しい宴を終えた私たちは、次なる冒険の舞台——灼熱の火山地帯へと向けて旅立つのだった。




